叶、デビューから5年の物語を凝縮したステージ 複数の世界線を横断した1st Concert『午前0時の向こう側』レポート

 3月16日、大阪・グランキューブ大阪 メインホールにて、にじさんじ所属のバーチャルライバー・叶の1st Concert『午前0時の向こう側』が開催された。不思議な懐中時計に触れたことで始まった、眠れぬ夜に起きたいくつかの可能性の物語。大きく映し出された時計の時を刻む音が響く会場。時計の針が0時を指すと同時に鐘が鳴り響き、ステージの幕が上がった。

 デビュー曲「ブロードキャストパレード」の軽快なイントロと共に、2人のダンサーと白い衣装を着た叶がステージに登場。「皆さんお待たせしました。“午前0時の向こう側”の開演です。一緒に最後まで楽しんでください!」と叶。楽しいショーが始まったと思っていると突然音がおかしくなり、時計の針が巻き戻って動きが止まってしまう。

 観客も「一体何が起きてしまったのか?」と困惑する中、そこに黒い服を着たもう一人の叶が出て来てステージをジャック。アッパーのビートが鳴り響き「Midnight Showcase」を歌い始めた。まくしたてるようにラップを繰り出す叶。続けて膝をついて祈るように歌った「ANEMONE」。後ろに幻想的な模様と共に歌詞が映し出された「アクシデントコーディネイター」。インターネットのダークな側面を熱い楽曲と共にメッセージにした楽曲が次々と披露され、苦悩しながらもしっかりと前を向く叶の姿が、繊細さと力強さを兼ね備えた歌声から感じられた。

 このライブは、「可能性の物語」という説明があった通り、世界線の異なる複数の叶が登場して、ライブを展開するという趣向。再び2人の叶が対話するシーンが展開され、そこに3人目の、カジュアルな私服のような衣装を着た叶が現れた。

 「無理していないか、たまには楽しくないこともある」「100点か0点の2択だけじゃない。楽しくないことの後に楽しいことがあればいい」「止まない雨はない」。そんな会話を経て、叶はノリのいいサウンド「セイテイノア」を月夜の街の映像をバックに歌ったほか、にじさんじ所属のライバーを俳優に起用したメディアミックス作品『Lie:verse Liars』主題歌「ハルを追いかけて」を披露。疾走感あふれるエレクトロサウンドのナンバーに、桜の花びらが舞い散るような演出がマッチした。続けて「水性のマーブル」は椅子に座って、曲に合わせてゆっくり体を揺らしながら歌った叶。ちょこんと座る姿がどこか小動物っぽく、水槽の中でマーブル模様を描くような映像演出でも魅せた。

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