こはならむの歌声はなぜリスナーの涙を誘う? 発声やブレスの細部にまで溢れる感情表現

 この数年、Ado、yama、なとりなど、顔出しをせず、楽曲をヒットさせるシンガーソングライターや歌い手に注目が集まっている。この2~3年で急速に浸透した配信メインのリリース形態で、楽曲が先行してSNSを中心にバズを起こし、結果大ヒットに繋がるパターンも珍しくなくなっている昨今。SNSはヒットを産み出す媒体になっている感さえある。そんな中、デビュー以降、顔出しせず “歌声の魅力”で注目を集め、今、話題になっている歌い手がいる。

泣きながら「心做し」歌ってみた Piano ver【こはならむ】

 こはならむは2019年からYouTubeチャンネルを中心に活動を展開している彼女は、これまで同チャンネルに多くの「歌ってみた動画」を投稿しているが、複数の動画が100万回視聴を突破しているほか、最大視聴回数の「泣きながら「心做し」歌ってみた Piano ver」は、視聴回数900万回を超え、今もまだ伸び続けている。こはならむのYouTubeチャンネル登録者数が40万人強ということを考えても、この視聴回数は驚くべき結果であり、彼女の今後を期待するに十分な実績である。

 こはならむは、活動開始当初から「泣きながら」や「感情を沢山込めて」というカバー曲動画をシリーズ化して投稿しているが、「心做し」(蝶々P)や「天ノ弱」(164)などのボカロP楽曲から、「ドライフラワー」(優里)「スパークル」(RADWIMPS)「ツキミソウ」(Novelbright)などの男性ボーカル曲、「フラレガイガール」(さユり)などの女性ボーカル曲と、カバー楽曲のセレクトも幅広い。

unravel / TK from 凛として時雨【こはならむ】

 また、前述したシリーズではないものの「unravel」(TK from 凛として時雨)などもセレクトしていて、彼女自身が熱心な音楽リスナーであることが窺えるほか、少し前からTikTokでバズを起こしている「可愛くてごめん」(HoneyWorks)も「可愛くてごめん feat.こはならむ」としてデジタルリリースしており、フォローしているジャンルもじつに幅広い。さらには、ピアノの弾き語り、バンドアレンジ、アコースティックなど、アレンジも多彩で、しっかり自分の中で楽曲と歌詞を咀嚼した上で、歌い手・こはならむとしての表現に昇華している。

可愛くてごめん feat. こはならむ / HoneyWorks

 ここで特筆すべきは、投稿された動画に対するコメントの多さだ。「こんなに感情移入できる歌声は初めて」「気持ちがすごく歌に出てる」「聴いてて自然と涙が出て来た」など、こはならむの表現力を讃頌する言葉で溢れている。国内はもちろん、米国、中国、韓国、台湾、ロシアなど、海外からの長文コメントも目立つ。言語という壁を超え、こはならむの歌声そのものが、聴いた者にひとことでは言い表せない感情を生み出している証拠だろう。中国版ニコニコ動画と呼ばれる「bilibili動画」のチャンネル登録者数25万人を突破しているのも頷ける。

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