グソクムズが教えてくれた日常と地続きにある音楽の豊かさ 『陽気な休日』携えた渋谷WWWワンマン
たなかのバリトンボイスが堪能できるレアグルーヴィな「ステンドの夜」で、フロアはよりビビッドな反応を見せる。〈間違ったまま踊ろう〉という歌詞の意味がこの夜を盛り上げていくようだ。イントロのベースラインが際立つ「グッドナイト」も洒脱なナンバーであるだけでなく、加藤のブライトな単音がジャンル感を超えるみずみずしい色を指す。〈冷たい夜〉というワードとともに、熱くならないファンクというニュアンスが心地いい。続く「ハイライト」はオーセンティックなシャッフルのロックンロールのようでいて、サビへの転調や一瞬違和感のありそうなコードが切な苦しいメロディを呼び、そのメロディとともに若干、熱が上がる感覚に陥る。この辺りの微妙なさじ加減が新しい・古いという二元論をこのバンドが超えている鍵なんだと思う。
終盤はフォーキーであり、たゆたう大きなグルーヴが脳内にサイケデリックなゆらぎを作り出すたなか節の「ゆうらん船」、本編ラストは歌い出しのトップノートがトリガーになって、曲の世界に引き込まれる「泡沫の音」。とことん演奏を研ぎ澄まし、音を吟味し、無駄なフレーズを鳴らさず、メンバー自身がその完成度に納得するほど演奏がまたよくなっていく、そんな循環を感じる90分だった。言葉にするとストイックだが、曲に対する自信があり、それを一番いい形で演奏するのみだというスタンスは結果として受け手にも心地がいい。
アンコールでは一度耳にしたら忘れないメロディと言葉のハマりを持つ「すべからく通り雨」、彼らが“ネオ風街”と称されるのも納得な「風の中で」を披露。さすがにエンディングに向けてはストレートな熱さを見せてくれた。この日がニューアルバムにちなんだ『みんなと陽気な休日』と銘打ったライブであり、春まだ遠いこの季節だが、風の中に何かを感じれば次の季節はもうすぐそこにあると信じられるラストでもあった。
記念すべきワンマンに際して、ラウンジには彼らの日常を撮る写真家・小財美香子の作品やファンが撮影した休日テーマの写真を展示。加えて、開場BGMは休日や土曜日縛りで、奥田民生やカネコアヤノ、ジョニー・サンダースからBay City Rollers、Chicagoなどが選曲されており、そこここに休日の空気を忍ばせていた。日常と地続きにある音楽が豊かであることの喜びをグソクムズは教えてくれたのだ。
■セットリスト
1. 風を待って
2. バスが揺れて
3. 笑い声の方へ
4. 冷たい惑星
5. 冬のささやき
6. 夢にならないように
7. けやき通り
8. もうすぐだなぁ
9. 夏が薫る
10. 肩透かし
11. シェリー
12. 獏に願いを
13. ステンドの夜
14. グッドナイト
15. ハイライト
16. ゆうらん船
17. 泡沫の音
En1. すべからく通り雨
En2. 風の中で