クリープハイプ、下北沢DaisyBarで示したより高みを目指す意志 “唯一の居場所”だったライブハウスに贈る感謝の言葉

 尾崎世界観(Vo/Gt)曰く、デビュー前のクリープハイプにとって“唯一の居場所”だったという、ライブハウス 下北沢DaisyBar。ワンマンツアー初日にその舞台に立った尾崎は、MCで「僕たちはライブハウスに居場所がないバンドだと思っていたんですけど、久しぶりにここに戻ってきたら、やっぱりいいな……」と口にした。その言葉に反応したオーディエンスから「おかえり!!」と歓声が飛ぶ中、一旦言葉を切った彼がその後すぐに続けたのは、いささか天邪鬼な感謝の言葉だった。

 クリープハイプのライブハウスツアー2023『感情なんかぶっ飛ばして』が、2月1日下北沢DaisyBarからスタートした。この日の舞台となったライブハウスはファンの間では馴染みが深く、そしてバンドにとっても大きな意味を持つ場所だ。

尾崎世界観

 今年1月にはファンクラブ限定ライブ『ひめはじめ6』が開催されたものの、ワンマンツアーの初日の場所に選ばれることは、現在のクリープハイプの規模感において異例のことだ。1月27日より「声出し」を伴うイベントの収容人数制限の撤廃が政府よりアナウンスされたため、同公演においてもフルキャパシティのなか、マスク着用の上での声出しも可能に。今ではまずありえないと言っていい距離感でクリープハイプのパフォーマンスを観られるとあって、当然フロアはすし詰め状態。立っているだけでも息が詰まりそうになるような光景を久々に目撃した。開演時刻になり、観客と同じ入場口からオーディエンスの間を縫うようにしてメンバーがステージへ向かうと、フロアは大きな拍手で溢れる。ステージの上に立つとメンバーは満員のオーディエンスの中に埋もれ、場所によっては顔を見るのがやっと、という状況に。しかし、1音目が鳴らされた瞬間、それでも充分だと思い知らされた。

小川 幸慈

 叩きつけるようにかき鳴らされる小川幸慈(Gt)のギター、抉るような長谷川カオナシ(Ba)のベース、荒々しく鳴らされる小泉拓(Dr)のドラム。そして刃物のように鋭く突き刺さる尾崎のボーカルには息が止まりそうになる。序盤から、ライブハウスの距離感で聴かせるために考え尽くされたであろうセットリストに殴られるような感覚を覚えた。満員のフロアで身動きが上手く取れなかろうが、思うようにステージが見えなかろうが、バンドがそこにいて音を鳴らし、歌を聴かせてくれることに何よりの喜びを感じる。ライブが進むに連れてフロアの熱量と一体感は高まっていき、時折、尾崎の表情がやわらかくほぐれて笑顔を見せたのも印象的だった。

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