和ぬか、既存イメージを覆すバンドサウンドへの転換 新曲「LOVE is」から読み解くソングライターとしての新境地

 今回リリースした「LOVE is」はその延長線上にある作品で、一聴してポップス然とした豪華なサウンドが印象的。以前までのベッドルームミュージック的側面の強かった打ち込み中心の音作りとは打って変わって、広い世界へと勢いよく飛び出していくような、軽快かつ重層的な音世界が心地よい。

LOVE is/和ぬか【Music Video】

 歌詞については、ほどよく韻を踏むリズム感のあるAメロや、〈諸説あるけど〉〈グダりと真面目の間の香り〉といった随所に特徴的なワードチョイスが見られるものの、どちらかと言えば普遍性のある言葉選びに徹したことで、和ぬか作品の中では比較的聴きやすさを重視した歌詞となっている。ここには和ぬかの柔軟なソングライティングが見て取れるだろう。描かれているのは君を想う強い気持ち。まさに「LOVE is」=“愛とは”と題したタイトルに相応しい純粋な愛情表現が丁寧に綴られている。

 また、歌声も曲のストーリーを感じ取る上で重要なポイントである。基本的にローなテンション感を保ち続ける和ぬかのボーカルだが、シルキーなウィスパーコーラスには温かみがあり、時おり強く遠くへと歌い上げるエモーショナルな歌声には熱さを感じる。一曲の中で主人公が徐々に熱を帯びていく様子が、さりげなく、それでいて確かに感じられる歌唱だ。そしてこの曲で唯一ファルセットが用いられる終盤のワンフレーズ〈愛しい人〉において、ついに主人公の気持ちが頂点を迎える。君を想う気持ちが最高潮に達するその一瞬のカタルシスは、和ぬか史上最も美しい瞬間と言えるだろう。

 しかし今作は、やはりアレンジ面が群を抜いて光っている。“愛の讃歌”だというこの歌を、主人公の弾んだ心がそのまま表れたかのようなグルーヴ感抜群の跳ねるリズムや、祝祭感のあるホーンセクション、優しさで聴き手を包み込むような流麗なストリングスが見事に表現。バックに従えるバンド演奏陣が歌の世界をカラフルに彩っている。数カ月前より取り組んできたバンドサウンドとの融合がここに美しく結実していて、むしろこれまでの一連の流れが布石だったとさえ思うほどの圧倒的な完成度だ。

 こうした和ぬかのバンドサウンドへの移行は、3月に控えた1stワンマンツアー『春夢のキラメキ』に向けた取り組みの一環とも思える。ネット上で話題を席巻し、活動を重ねるにつれて進化してきた和ぬかのサウンドが、全国のファンの前で披露される日が早くも待ちきれない。

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