KroiがLINE CUBE SHIBUYAを埋め尽くすことの価値の大きさ 新しさと遊び心満載の初ホールワンマンを観て
フェスやイベント等の短い尺のライブでなく、ワンマンだとより強く感じること。それは、Kroiのようなバンドが、結成5年・メジャーデビュー1年半の現在の段階で、リリースやツアーのたびに支持を広げ、LINE CUBE SHIBUYAをいっぱいにするほどのオーディエンスを集めていること、それ自体の価値の大きさだ。
音源を聴けばあきらかだし、インタビュー等で本人たちもよく言葉にしているが、Kroiは「自分が好きな音楽をやりたい」バンドではない。「自分が好きな多数の音楽を昇華して、新しいものを作りたい」バンドである。その「新しいもの」の方向性が、今のヒットチャートの主流に沿おうという気が、ない。としか、思えない。
具体的に言うと、たとえば「インスト?」と思うほどイントロが長い。で、時には本当にインストだったりする。あと、ソウルやファンクやR&Bといった、今のリスナーの耳に慣れているルーツ以外の要素も、平気でどんどん曲に入れてくる。たとえば「Drippin' Desert」や「Balmy Life」のイントロなんて「えっ、ジェフ・ベック?」と言いたくなるし、「Juden」の曲展開は、1980年代のフュージョンバンドのそれのようだ。
また、R&Bやファンクの取り入れ方も、もっとコンパクトでキャッチーな方法はあるのに、そっちには進まない。生演奏にラップを乗せるという手法も同じくで、わかりやすいやりかたは選ばない。なぜなら、それらはもう、誰かがやったことだから。
なので、「R&B」とか「ファンク」とか「生演奏にラップ」みたいな、すでにある定型には、収まらない。だから、次に何をやるのか、聴いていてどこに連れて行かれるのか、わからないし、その途中で聴き手を振り落としてしまう可能性もある。でもやる。というのは、いかに聴き手を振り落とさないかの競争をしているかのような、今のヒットチャートの中においては、相当異端だと思う。
で、そんな異端な音楽が、若い世代のファンにあたりまえに支持されているというのは、相当すばらしいことだと思う。そんな音楽をクリエイトしているKroiの可能性の大きさだけでなく、それを受け入れるリスナーの可能性の大きさも証明している、と思わせてくれるので。
ここまで延々と記述してきた、この日のライブの演出やMC等に表れている、親しみやすくとっつきやすい(あとオシャレでかっこよくもある)メンバーのキャラクターも、大きなプラス要素になっているのだろうが、それだけではここまで支持されないだろう。このままKroiがどこまで突き進めるのかが、改めて楽しみになる、初のホールでのワンマンだった。
■セットリスト
1.Drippin' Desert
2.Pixie
3.Monster Play
4.a force
5.Juden
6.Funky GUNSLINGER
7.Balmy Life
8.Mr.Foundation
9.Flight
10.侵攻
11.夜明け
12.Not Forever
13.Never Ending Story
14.WATAGUMO
15.Network
16.HORN
17.Shincha
En1.Hard Pool
En2.Fire Brain
Kroi、より多くの人に向けて音楽を発信 『telegraph』で発揮された5人のポップセンスとプレイヤビリティ
Kroiがメジャー2ndアルバム『telegraph』をリリースした。前作『LENS』収録の「Balmy Life」が各チャート…
Kroi、勢いに乗るいま見つめる“小さな世界” 野心と狂気が渦巻く「Small World」について聞く
2021年11月にリリースされたEP『nerd』収録の「Juden」が、ダイハツ「ROCKY-e:smart」のCMソングとして…