DISH//、初のアリーナワンマン『オトハラク』は次なる遊び場への招待状に ステージで見せた等身大の頼もしい姿

DISH//、初アリーナワンマン『オトハラク』レポ

 さらに、2月1日にリリースされるアルバム『TRIANGLE』より新曲「ブラックコーヒー」を先駆けて披露。4人で作詞・作曲・編曲したUKロック風ナンバーだ。直後、泉が華やかなフィルインをキメ、ドラムセットごと上昇していく。そんななか、北村&橘の2MCスタイルの「B-BOY」の盛り上がりとともにライブはクライマックスへ。「東京VIBRATION」では泉がバスドラを勢いよく踏み、北村、矢部、橘も全身全霊で楽器を掻き鳴らす。

矢部昌暉(Cho/Gt)
矢部昌暉(Cho/Gt)

 「中2でDISH//が始まって、高校生で初めての武道館。夢を叶えることをDISH//で覚えて、夢を失うことを経験しました。出会いもあれば別れもあって、幸せな思いも、苦しい思いもいっぱいしました」と北村。ライブの冒頭で円形のLEDスクリーンに映された『オトハラク』のロゴマークは、陰陽太極図を模したマークに“音”と“楽”の字を配置したものだった。森羅万象あらゆるものは陰(内に蓄えた静的なエネルギー)と陽(外に開放される外的なエネルギー)の要素によって成り立っていて、陰と陽ははっきり分けられず、陽の中には陰があり、陰の中にも陽がある。陰陽太極図の基にあるのはそういった考え方だが、DISH//の10年は、まさにそういうものだったのだろう。楽器初心者だったスタート地点から一つずつスキルを身につけ、自分たちの手で曲を演奏できるようになり、作詞作曲もできるようになった。その裏側できっとたくさん努力したはずだ。そんな日々があったからこそ、今、開放感とともに音楽を謳歌できている。

 北村の言葉は続く。「それでも、そんな日々が今日を作っていると思うと、なんて最高な10年だったんだろうと思います。みんな一人ひとりにもストーリーがあるように、DISH//にも、僕ら一人ひとりにも、誰にも譲れないストーリーがあります。そんな今日を、ライブを、とても大事にしてくださりありがとうございます。10年先にどんな未来が待っているのか全く想像できないけど、10年前に今を想像できていなかっただけに、これからの10年も楽しみです」。そんなMCを経て、本編ラストに選ばれたのは「沈丁花」。一輪の花を手渡すように、ファン一人ひとりに感謝の想いを届けた。

DISH//ライブ写真
北村匠海(Vo/Gt)

 アンコールでは、“最愛の人に向けた遺書”をイメージして書いたというバラード「五明後日」、「初めてやったZeppで1曲目でした。初めてやった武道館でも1曲目でした。自分たちのスタイルなんて手に入れてないかもしれないし、迷ってばかりかもしれないけど、それでも、いつまでも、いつまでもDISH//として走り続けることを約束させてください。僕たちの始まりの曲です」(北村)と紹介した「It's alright」、そして「笑って終わろうぜ!」と「乾杯」を披露。全22曲を演奏し終えたメンバーは、「1回目の武道館と似た感じだった」「マジで楽しかった」と振り返ったが、10代ならではの若いエネルギーで駆け抜けている最中だった2015年当時と、“立ち止まる”をテーマに、バンドの現在と未来を見つめ直した1年を経ての今回のライブで同じ種類の楽しさを感じられているというのは、大きな収穫ではないだろうか。終演後にリラックスして観客と向き合うのは4人が毎回ワンマンで欠かさずやっていることだが、その時の空気がライブ中の空気といい意味で大差なかったのも印象的だった。それはつまり等身大でステージに立てている証であり、DISH//として長く健やかに活動を続けるための土壌が整いつつあるように感じる。

 そして冒頭に書いた通り、この日はDISH//12年目の始まりの日だった。〈笑ってたいんじゃなくてね、笑い合ってたいのだ〉(「僕らが強く。」)と始まり、〈いつもいつも ありがとうね〉(「沈丁花」)と伝えるとともに〈これからも宜しくと言わせてください。〉(「乾杯」)という挨拶で締め括った『オトハラク』とは、私たちに向けられた招待状だったのかもしれない。いったいどこへの招待状なのか? それはもちろん、ニューアルバム『TRIANGLE』、そして同作を携えたツアー『DISH// HALL TOUR 2023 “TRIANGLE”』へと続く次なる遊び場だろう。

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