SUPER BEAVER、一人ひとりの“あなた”に届けた全国アリーナツアーファイナル 終始一貫した観客と向き合う姿勢

 「あなたがそこにいる意味を、この場所に来てくれた意味を、俺たちにもちゃんと教えてください」という渋谷の言葉を受けて披露されたのは、この秋にリリースされた新曲「ひたむき」だ。間奏のシンガロングパートでは、観客は声を出せないぶん全力で両手を上げ、2番のAメロでは熱い手拍子を重ねることで4人の歌と演奏を彩っていく。まさに4人とリスナーが一緒に作り上げた音楽。最高だ。続けて、昨年のリリース以降、SUPER BEAVERの新しい代表曲となった「名前を呼ぶよ」へ。渋谷は広い会場を見渡しながら、一人ひとりに向けて真摯に語りかけるようにして〈名前を呼ぶよ/あなたの意味を  僕らの意味を〉と歌う。ステージとフロアの熾烈なコミュニケーションを通してお互いの存在を確かめ合うような、まさにライブの場だからこそ味わえる感動的な時間だった。

 あなたたち、ではなく、〈あなた〉に。SUPER BEAVERの観客に向き合う姿勢は終始一貫していて、渋谷は時に高らかに、そして時に一つひとつの言葉を余すことなく伝え切るために集中力を研ぎ澄ませるようにして丁寧に歌う。曲と曲の合間に、渋谷が昂る感情を堪えるようにしながら、「めちゃくちゃ一緒に音楽ができている感じがします。ありがとうございます」と感謝の想いを伝え、フロアから温かな拍手が巻き起こる一幕もあった。

 ライブもいよいよクライマックスへ。「美しい日」「アイラヴユー」「秘密」。出し惜しみなく次々と放たれるライブアンセム。この日一番のピークを何度も更新し続けていく怒涛の展開、熱すぎる。観客が自由にジャンプしたり手を上げたりする光景を見ながら、喜びと充実感を噛み締めるような表情を浮かべるメンバーたち。それでもまだまだ足りないと言わんばかりに、「束になってかかってくんなよ、お前が一人でかかってこい」「1対1で音楽やりましょう」とアジテートする渋谷。その声に必死に応えていくフロア。それに負けじと、まるで全てのエネルギーを絞り尽くすように渾身の歌と演奏を通して、「東京」「青い春」を披露する4人。ラストナンバーは、一人ひとりが自分の足で明日を歩むためのロックンロールアンセム「最前線」だ。〈情熱に幸あれ〉という熱いメッセージがもたらす深い余韻が、いつまでも消えない。そしてアンコールの「ロマン」を通して、一人ひとりと〈それぞれに頑張って  また会おう〉〈それぞれに頑張って  また笑おう〉という熱い約束を交わして、この日のライブは大団円を迎えた。

 なお、アンコール前には、2023年7月にバンド史上最大キャパのワンマンライブとして、2日間にわたり富士急ハイランド・コニファーフォレスト公演を開催することが発表された。SUPER BEAVERにとってかつてない大きな挑戦となるが、たとえどれだけライブの会場が大きくなったとしても、これからも変わらずに、ただひたむきに目の前の〈あなた〉に向き合い続けていくはずだ。この日のライブを観て、その確信はより深いものになった。

SUPER BEAVER、音楽を通して肯定するそれぞれの人生 再びステージに立つ中で感じた、かけがえのない人間冥利

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