SUPER BEAVER、“あなた”と向き合い続ける決意表明 強化されたメッセージ鳴らしたホールツアーファイナル

SUPER BEAVER『東京』ツアーファイナルレポ

 ニューアルバム『東京』を携えて全国を回ってきたSUPER BEAVERの『「東京」Release Tour 2022 〜東京ラクダストーリー〜』が7月5日、東京国際フォーラムホールAでツアーファイナルを迎えた。そこでSUPER BEAVERが見せたものは、作品を生み出すたびに強靭になっていく演奏と揺るぎないメッセージ性、そしてバンドを取り巻く規模が大きくなっても変わらない、「あなた」と向き合い続ける姿勢だった。

 開演時刻、場内に流れるのは車やバイクの行き交う東京の雑踏の音。ステージにはビル群を模したセットが組まれ、『東京』というアルバムに刻み込まれた、僕たちとSUPER BEAVERが生きるこの街への想いが透けて見える。そこに登場した渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(Gt)、上杉研太(Ba)、藤原“34才”広明(Dr)。拍手で出迎えられるなか、藤原のドラムと柳沢のギターを合図に鳴らされた1曲目は、アルバムのオープニング同様「スペシャル」だった。〈「普通」が 普通であるために 努力している人がいる〉、コロナ禍をくぐり抜けてきたからこそ得た実感が、このライブがそれだけで特別であることをいきなりダイレクトに伝えてくる。「いくぞ東京!」。渋谷の声に柳沢のコーラスが重なっていく。この会場の音響のよさもあるのかもしれないが、一つひとつの音が、そして渋谷の声が、今まで見た彼らのどのライブよりもくっきりとした輪郭をもって届いてくる。続けて「青い春」で温度をさらにぐっと高める。オーディエンスの手拍子とともに前のめりに歌う渋谷は〈くじけそうならば 今度は僕らが 笑わせたいんだよ〉という歌詞を〈今度はSUPER BEAVERが 笑わせたいんだよ〉と変えて歌っていた。

SUPER BEAVER

 『東京』のリリースツアーではあるものの、もちろんセットリストには過去の曲たちもたくさん織り込まれる。不思議なのは、それらの曲もまるで生まれ変わったように『東京』を作り上げた今のSUPER BEAVERのリアルな言葉として伝わってくることだ。それらが書かれたときとはあらゆることが変わったにもかかわらず、柳沢の書いた歌詞も、バンドの演奏に込められた熱も、まるで生まれたてのように生々しい。ロックバンドとはそういうものだろうとも言えるが、いかに彼らが本当のこと、ど真ん中のことだけを歌い続けてきたかを、僕は彼らのライブを観るたびに思い知るのだ。この日もそうだった。「突破口」にしろ「美しい日」にしろ「アイラヴユー」にしろ、そこに『東京』に収録された「ふらり」や「名前を呼ぶよ」が重なることでメッセージが強化され、アップデートされていく。

SUPER BEAVER
渋谷龍太(Vo)

 ハードなリフが冴え渡る中オーディエンスのジャンプでホール全体が揺れに揺れた「VS.」を経て、渋谷が再び口を開く。目の前のあなたと音と言葉を使ってコミュニケーションをしたい、と必死に訴えかけ、「18年で最高の夜を今日はあなたと一緒に作りにきた。期待してもらって構わないから、期待してもいいですか?」。どこまでも「あなた」と一緒に作るんだ、それが音楽なんだというブレない意思。その意思は、続く「美しい日」でアカペラで歌い始めた渋谷の声を覆い隠すように鳴り響いた手拍子で早くも形になった。コロナによって「一緒に」という表現はとても難しくなった。でもSUPER BEAVERは声やメロディではなく心でつながり合うことで、今その壁を乗り越えてみせているのだ。「318」に「未来の話をしよう」。どんどん一体感を積み上げていく客席を見渡しながら、柳沢も上杉も笑顔を浮かべている。言葉にしがたい高揚感が場内を覆う中、「俺たちにとってはまぎれもなくあなたの歌」という渋谷の言葉とともに披露されたのは「愛しい人」。ステージのバックには真紅のビロードのカーテンが現れ、会場のムードを一変させる。熱のこもった演奏が、巷の恋愛ソングとはまったく違う本気のラブソングに込められたエモーションを燃え上がらせていく。

SUPER BEAVER
藤原“34才”広明(Dr)

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