BUMP OF CHICKEN、ライブハウスで出会えた/再会できた歓びを共有 3年ぶり全国ツアーZepp Hanedaセミファイナルを観て

 12月12日〜13日の2日間にわたり、『BUMP OF CHICKEN TOUR 2022 Silver Jubilee』の東京公演がZepp Hanedaにて行われた。BUMP OF CHICKENは、7月に幕張メッセ国際展示場で約2年8カ月ぶりとなる有観客ライブを行った後、3年ぶりに開催された『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』への出演を経て、10月から全国6カ所のライブハウスを巡る今回のツアーをスタートさせた。長引くコロナ禍において、有観客ライブを行う機会を失ってしまっていたBUMPにとって、今回のツアーは、ライブの場を通してリスナーと直接コミュニケーションする大切な機会を一つひとつ取り戻していく旅路となった。そして、ライブという空間・時間が、私たちの日常において、いかにかけがえのないものであるかも再確認させてくれるような非常に意義深いものになったと思う。本稿では、セミファイナル公演・12日の模様を振り返っていく。

 この日のライブは、コロナ禍でリリースされた楽曲の一つ「アカシア」から幕を開けた。一つひとつの言葉を余すことなく伝えるために、マイクを深く握り締めながら丁寧に歌う藤原基央(Vo/Gt)の姿が印象的で、その歌声には並々ならぬ熱量が滲んでいる。間奏で藤原は、「会いたかったぜ!」とシャウトするように溢れ出る想いを伝え、その熱い言葉に観客は大きな拍手で応えていく。続けて、初期のロックナンバー「グロリアスレボリューション」へ。後半へ進むにつれて次第にボルテージを高めていく4人のバンドサウンドに呼応するように、観客が手首に装着したLEDリストバンド「PIXMOB」が一斉に赤く光り、その輝かしい景色に刺激されるように、メンバーの歌と演奏はさらにエモーショナルさを増していく。ステージ上とフロアの間に、ライブ冒頭とは思えないほどの熾烈なコミュニケーションが確かに成立していて、これこそがライブハウス公演の醍醐味であると強く感じた。

 3曲目は、永遠のロックアンセム「天体観測」だ。この曲においても、4人は、胸の内の激情をそのままトレースしたかのような歌と演奏を轟かせた。まるで、バンドを始めたばかりの頃の初期衝動を再燃させているかのような姿は圧巻である。この曲のライブパフォーマンスにおいては、観客のコール&レスポンスが重要な役割を果たすが、藤原は7月の幕張メッセ公演におけるMCで、声出しNGの時期は、観客が歌うパートを“空席”のまま空けておきたいと語っていて、この日のライブにおいても、そのパートは“空席”とされていた。それは、たとえ空白があったとしても、この時期だけの特別な「天体観測」が成立するという深い確信があってこそなのだろう。そして、その確信は、観客への信頼そのものでもある。“空席”を残した「天体観測」は、この日も、今だからこその眩い輝きを確かに放っていたように思う。

藤原基央

 この日最初のMCパートで、藤原は、満員のフロアを見渡しながら、一人ひとりの観客の体調を気遣う言葉を何度も繰り返して投げかけた。そして、この日初めてZepp Hanedaのステージに立ったことを伝えた上で、「ぜんぜん初めての気がしない。君たちのおかげだ。本当にどうもありがとう」と丁寧に感謝の想いを告げた。フロアからの大きな拍手を受けながら、続けて、昨年に『第72回NHK紅白歌合戦』でも披露した「なないろ」へ。一人ひとりの観客の「PIXMOB」がそれぞれ異なる色に光り、フロア全体が虹色に染まっていく光景は、言葉を失うほどに美しいものだった。

 この「なないろ」がそうであったように、今回のライブにおいて特に強い輝きを放っていたのは、やはりコロナ禍においてリリースされた楽曲群で、昨年の楽曲「Small world」も重要なハイライトを担っていた。かねてより藤原は、自分たちが生み出した音楽は、レコーディングが完了した時ではなく、一人ひとりのリスナーのもとに届くことで初めて完成を迎えると語っている。4人が音楽活動の中でライブという時間・空間を何よりも重んじているのは、そうした信条を持つ故である。「Small world」は、昨年のリリース以降、長い間ライブの場で鳴らされることを待ち望まれていた楽曲の一つで、7月の幕張メッセ公演でも披露されていたが、この日初めてライブで同曲を聴いた人も多かったはず。初めて直接この楽曲を受け取る中で、この曲の〈流れ星ひとつも  気付けなくても/君を見つけて  見つけてもらった僕は/僕でよかった〉という歌詞が音源以上に深く胸に響いたのではないかと思う。

 また、同じように、今年の春にリリースされた「クロノスタシス」も、力強い輝きを放っていた。この曲は、モダンなエレクトロサウンドと4人のバンドサウンドが美しく折り重なり合う新機軸の楽曲で、ライブの生演奏によって、そのサウンドの奥行きと深みがさらに増している印象を受けた。アウトロにおけるギターのカッティングや、ベースのスラップも鮮やかに冴え渡っていて、その豊かなバンドアンサンブルに何度も心を強く動かされる。今後この曲は、2020年代のBUMPのライブにおいて重要な役割を担い続けていく新たな代表曲になる予感がする。

 中盤のMCパートでは、この日の本番前に、藤原と増川弘明(Gt)の2人で、このパートで増川が何を話すかを相談し合っていたことが明かされた。そして、藤原の「めくるめく増川ワールドをお楽しみください」という言葉を受け、MCのバトンが増川へと渡される。増川は、一足早く「今年もありがとうございました」と観客に年の瀬の挨拶をした上で、2022年の活動を振り返りながら、「来年も活発にやっていくんで、よろしくお願いします」と2023年の抱負を語った。その言葉にフロアから温かい拍手が巻き起こる。また直井由文(Ba)は、今回のツアーを振り返る中で、藤原について「はじめからファイナルみたいな感じだったんですよ。“藤くん? 1日目から出し切ってるんじゃない?”って」「ただ、全部(の公演を)同じテンションでできているので、めっちゃいいなと」と語った。ライブ冒頭から、藤原の凄まじい熱量の歌と演奏に圧倒されっぱなしだったが、直井の言葉を通してその理由の答え合わせができた気がした。藤原が今回の3年ぶりの全国ツアーにかける意気込みは、それほどまでに大きなものであったということだ。

升秀夫

 升秀夫(Dr)のオフマイクの「ありがとう!」「楽しんでね」という言葉を受け、後半戦の口火を切ったのは、20年前のアルバム『jupiter』にも収録されている「ハルジオン」だった。フロアから無数の拳が上がる光景を観て、この曲を長年にわたり人生のアンセムとして大切に聴き続けている人がいかに多いかが伝わってきて、思わず胸が熱くなった。そして、その熱量を引き継ぐようにして披露されたのは、この秋にリリースされた最新曲「SOUVENIR」だ。升が構築する端正でシャープなリズム、直井が生み出すファンキーなグルーヴがとても新鮮な響きを放っていて、また、何度も繰り返される4人のキメのアタック感がとても痛快だ。この曲は今回のツアーで初披露された楽曲ではあるが、すでにライブアンセムとしての堂々たる存在感を放ち始めていることに驚いた。いつか観客が自由に声を出せるようになったら、同曲はフロアからの大合唱が加わることでさらに何段階も化けるはず。そうした未来の光景をもはっきりとイメージさせてくれるような素晴らしいパフォーマンスだった。

 続けて披露された「話がしたいよ」では、藤原は、2番の〈抗いようもなく忘れながら生きているよ/ねぇ一体どんな言葉に僕ら出会っていたんだろう/鼻で愛想笑い  綺麗事  夏の終わる匂い/まだ覚えているよ/話がしたいよ〉というサビの最後の一節を〈忘れたくないよ〉と歌詞を替えて歌った。それは、もう二度とは訪れないこの日を、この一瞬一瞬をいつまでも忘れたくないという透徹な願いの表れなのだろう。ラスト、ピックを投げ捨てて、指で爪弾かれたアコースティックギターのアルペジオの深い余韻が、いつまでも胸の中に残り続けている。

 ここから、いよいよライブもクライマックスへ。勇壮なロックアンセム「カルマ」のイントロが鳴り響き、その激情に満ちたサウンドがフロアを鮮烈なロックバイブスで満たしていく。そのまま、壮大なロックバラード「Aurora」へ。ラスト、藤原と増川がグータッチする一幕も含めて、グッとくる名演だった。そして、凄まじい熱気の中で本編ラストの楽曲「ray」が披露される。2019年までは観客に委ねられていた〈生きるのは最高だ〉というパートは、「天体観測」と同じように、今は"空席"として空けられている。それでも、4人と私たちは、同じ熱を、そして、こうしてライブハウスの場で出会えた/再会できた歓びを、感動を、豊かな実感を通して確かに共有し合うことができたと思う。

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