FIVE NEW OLDが示す、バンドの新たな出発点 『My New Me TOUR』最終公演レポ

 静謐なピアノソロを挟むと雰囲気が一変し、シアトリカルな赤い照明の中で披露されたのはクリックハウス〜UKガラージな雰囲気のドープなダンスナンバー「One By One」。中盤の裏切りおにぎり a.k.a. Hanakoのソロパートを挟み、ビートがシャープな4つ打ちに変化してサウンドも激しさを増していく後半の展開は圧巻だった。HAYATO(Dr)による中盤の激しいロックドラムも印象的なポストパンクナンバー「Fast Car」に続いては、壮大なバラード「Moment」でオーディエンスを魅了。楽曲ごとに自由にジャンルを横断しつつも、このあたりの曲からはバンドのUKに対する傾倒が色濃く感じられる。

 ここでHIROSHIは『Departure : My New Me』というタイトルについて、「『新しい自分』っていうのは180度違う人間になることじゃなくて。日常の中の些細なことをちょっとずつ繰り返して、振り返ったときに初めて自分が成長したことが感じられる」と話し、タイトルトラックの「My New Me」をオーディエンスによるスマホのライトがフロアを埋める美しい光景の中で披露。ゴスペルチックなこの曲もライブで聴くと強いフィジカルが感じられたが(HAYATOによるサビ前のハードコアなフィルからは、やはり出自がよくわかる)、HIROSHIのMCはツアーそのものにも当てはまるもので、FIVE NEW OLDも今回のツアー8本の中で“Bug fixed”を繰り返し、だからこそ充実のファイナルを迎えられたであろうことは間違いない。

 ライブ後半ではこれまでも磨かれ続けてきた人気曲を連発し、再び場内が手拍子に包まれた「What’s Gonna Be?」では間奏でオーディエンスと一緒にジャンプをして、「Sunshine」ではSHUN(Ba)も激しいパフォーマンスを見せ、パーティーモードに突入。リズムパッドやシンベを用いたヴァースから、コーラスで生のバンドサウンドに変わるダイナミズムがたまらない「Breathin'」はすっかりアンセムになっている。最後はBloc Partyのラッセル・リサックがプロデュースを手掛けた「Trickster」でWATARU(Gt/Key)がギターをかき鳴らし、HIROSHIが堂々とマイクスタンドを掲げて、ステージを後にした。

 アンコールではまずHIROSHIが一人で登場し、新作のCD盤のみに収録され、大学時代からの友人であり、アルバムのアートワークを手掛けているPERIMETRON所属のMargtのために以前書いた曲だという「OLD HONDA」を弾き語りで披露。再びバンド全員が揃うと、「旅の始まりを告げる曲」という「Rhythm of Your Heart」から「By Your Side」を続け、間奏でHIROSHIがステージから下りてフロアを一周し、最後は高らかにファルセットを響かせてライブが終了した。今回のツアーが終わっても、彼らの旅はまだまだ続くが、メジャーデビュー曲の「By Your SIde」を新たな出発点であるこの日の最後に演奏したことは、バンドにとって大きな意味があったように思う。

■ライブ情報

ONE MAN LIVE "Painting The Town"
2023年7月2日(日) 東京 LINE CUBE SHIBUYA 
ワンマン公演
チケット発売日他詳細は後日発表
イベント特設サイト「13 Card Tricks for LINE CUBE SHIBUYA」
https://fivenewold.com/pages/13th

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