松下洸平、宮本浩次……ソロシンガーが半数を占めたアルバムチャート 2作品に共通する“エゴ”との向き合い方

 続いて宮本浩次。この人こそ「俺が!俺が!」の代表格と言いますか、良い意味でエゴや主張を全方位に放出しているイメージがあります。たとえ彼の音楽をよく知らなくても、「頭を掻きむしりながら目玉をひん剥き、汗だくで何かを叫んでいるミヤジの姿」は、もうひとつの記号となり万人に刷り込まれているのではないでしょうか。

 しかし、今回の『秋の日に』は昭和歌謡カバーアルバム。ここに彼のエゴは1ミリも感じられません。カバーであれば「俺流に料理する」という考え方もアリだし、そうすることで意外なミラクルが起きたりしますが、数年前からソロ活動を始めた宮本はその流れには与しない。驚くほど「我」が封印された歌声からは、ただ曲に対する「愛」が、もしくは、静かに作曲者たちに頭を垂れるような「敬意」が伝わってくるのです。

 2年前のカバー集『ROMANCE』もそうでしたが、今作でも彼が歌うのは女性歌手による女性目線のラブソングばかり。「まちぶせ」(荒井由実作詞/三木聖子・石川ひとみ歌唱)や「恋におちて -Fall in love-」(湯川れい子作詞/小林明子歌唱)など、原曲のメロディやストーリーに「汗だくで叫ぶミヤジ像」が入り込む隙はありません。つまり得意の「俺流」が通用しない世界にあえて身を置き、ひとりの歌手として、どこまで音楽に対して無心になれるのか。これが宮本カバーシリーズの狙いだと思います。結果出てきたのは、万人がまったく知らなかった献身的歌手の姿なのですから。

 興味深いのは「DESIRE -情熱-」(阿木燿子作詞/中森明菜歌唱)。今回の選曲の中では最もロック調の一曲で、ここはロック歌手・宮本浩次の本領発揮、いっちょ派手に暴れてやりましょう、という展開なら想像もしやすい。しかし宮本は音符をまっすぐに追い、余計な演出は一切なし。「どんな歌い手か」という情報を完全消去し、これはどんな曲で、どんなことを歌っているのか、それのみを一心に届けようとしているのです。ド派手にカブいている印象なら、原曲の中森明菜バージョンのほうが強いくらいで、この静けさ、謙虚さが宮本浩次の仕事なのかと、目から鱗が落ちるばかりでした。

 人気カバーシリーズを持つ歌手といえば德永英明やJUJUの名前が浮かびますが、彼らが共通して語るのは「エゴや感情を込めすぎないこと」の大切さ。知られた名曲であればあるほど、曲それ自体に奉仕するだけで良いものになるのだとか。宮本浩次が掴んだのはこの境地かもしれないですね。ここから得られるもの、きっと、ものすごく大きいと思います。

宮本浩次ー 飾りじゃないのよ 涙は

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