DYGL、バンドの“進化”と“確信”を示した『Thirst』ワンマン 初の2部構成ライブで届けた強い信念

 10月に配信リリースした「I Wish I Could Feel」でバンドとしての変化をはっきりと示したDYGL。12月9日にリリースされるニューアルバム『Thirst』は、その「新しいDYGL」の姿を見せつけるものになりそうだが、同アルバムの世界を一足早く味わうことができるワンマンライブが、11月24日、渋谷WWW Xで開催された。メンバーの新型コロナウイルス陽性判定によって一度延期となったものの、すぐさまリスケジュールされたという経緯を見ても、この約1年ぶりのワンマンライブに懸けるバンドの思いは並々ならぬものが感じられる。アルバムと同じく『Thirst』と名付けられたこの夜、DYGLが見せたのは、進化した自分たちのサウンドに対する確信と長い時間をかけて作り上げたアルバムに対する手応え、そしてこの不安定な時代に対して届けるべきメッセージと強い信念だった。

 この日のライブはDYGLにとっては初めてとなる2部構成。第1部は未発表の新曲(つまりニューアルバムの収録曲)のみ、第2部ではこれまで積み上げてきた楽曲でセットリストが組まれるというコンセプチュアルな形になっている。開演時刻、ふらっとステージに現れた秋山信樹(Vo/Gt)、下中洋介(Gt)、加地洋太朗(Ba)、嘉本康平(Gt)、そしてサポートメンバーの鈴木健人(Dr/never young beach)の5人。1曲目「Dazzling」から、秋山のギターをきっかけにタイトなグルーヴが生まれ、畳み掛けるようにライブは始まっていく。そのまま2曲目、「I Wish I Could Feel」へ。リリースされたときも驚いたが、重層的かつ空間的なサウンドのデザインが一気に広がっていくような感覚は確かに新しいDYGLだ。ただし実際にこうしてライブパフォーマンスで目にすると、そこには新しさだけではなく確かな説得力が宿っていることも感じられる。彼らが明確な意図をもってこの曲の、そしてこれから披露されるであろう新曲の音像を作り上げてきたのだということがはっきりと伝わってくるのだ。

 「DYGLです、よろしくお願いします」。秋山のそんなシンプルな挨拶から、今度はゆったりとしたリズムが奏られていく。ループ感のある下中のギターリフがWeezer、あるいは中期Blurのようなひねくれたオルタナ感を感じさせる楽曲だ。3曲終えたところで秋山の口からここまで演奏してきた楽曲のタイトルが明かされる。今披露した3曲目は「Under My Skin」。そしてさらに新曲披露は続く。4曲目は「Sandalwood」。どっしりとしたギターサウンドの中、嘉本がマラカスを鳴らし、メランコリックなメロディを引き立てる。このオルタナ感、内省的な感じと外向きの熱量が入り混じる感じがもしかしたら『Thirst』の基本的なムードなのかもしれない。続く5曲目「Road」もメランコリック。90年代のUSインディやエモのニュアンスも感じさせるサウンドにどこか湿り気をおびたメロディが組み合わさった、噛めば噛むほど味が出そうな楽曲だ。

 一転、次の「Euphoria」ではアッパーなサウンドが広がる。怒涛のキメがオーディエンスのテンションを高め、力強いギターリフが強烈に耳に残る。複雑なリズムで描き出される緩急のコントラストが、どこかこの時代を生きる人々の心を映し出すようにも思える。不思議なのは、ここまで演奏されたどの曲もとてもパーソナルなニュアンスを感じさせるものなのに、同時に大きく開けたような感覚ももっているところ。内省的でありながら、大きな会場でオーディエンスとともに歌われることを望んでいるような……そんな曲ばかりなのだ。そして第1部最後の曲となった「Phosphorescent / Never Wait」。ガレージパンク的なローファイな音像の中で、リフも歌も美しいメロディを走らせる。「Phosphorescent」という聞き慣れない言葉は「燐光性(物質が光を放つこと)」を意味するが、まさにバンド全体から青白い光がボワっと放たれるような、秘めた熱情を感じさせる楽曲だった。

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