DYGL、バンドの“進化”と“確信”を示した『Thirst』ワンマン 初の2部構成ライブで届けた強い信念

DYGL『Thirst』ワンマンレポ

 新曲パートを終え「ほっとした」と秋山。「どうでしょう?」とフロアに尋ねつつ、「ということでそのまま始まります」と第2部に突入だ。「自由に観ていただけたら嬉しいです」という言葉とともに皮切りとなったのは「Bad Kicks」だ。さらに「Spit It Out」と2ndアルバム『Songs of Innocence & Experience』からのロックンロールチューンを重ねギアを上げていく。フロアでも拳が突き上がり、一気にボルテージは急上昇だ。下中のギターソロも伸びやかに広がった「Feel the Way」、そして「The Rhythm of the World」と次々と畳み掛けられていくDYGLの代表曲たち。パワーコードでガシガシと進む「Stereo Song」が、オーディエンスの熱をさらに高めていく。そしてここで投下されたのが今年3月にリリースされた「Waves」。第1部を目撃した上で改めてこの曲に触れると、この曲のもつフワフワとしたフィーリングは、『Thirst』に至るまでの過渡期のようなものを表していたのかもしれないと思う。嘉本が弾くキーボードも印象的な、広がりがありながらもアンニュイなこの曲のサウンド感は、こうしてライブの場で聴くとなおさら心地よい。

 ここでブレイクを挟み、「今年は制作イヤーでした」とこの1年を振り返る秋山。3月からスタジオに入り始め、アルバムが完成したのはこの秋。「やりました、僕たち!」と胸を張る秋山の言葉に場内からは拍手が巻き起こる。じつに半年間にわたり作り上げてきたニューアルバム『Thirst』を提げて1月からツアーを行うことをアナウンスすると、フロアからは大きな拍手が巻き起こった。そして壮大な風景を描き出す「7624」からライブを再開すると、秋山がアコースティックギターに持ち替えて歌った「Sink」、さらに下中がボーカルを執る「Bushes」と3rdアルバム『A Daze In A Haze』の楽曲を立て続けに披露していく。秋山のシャウトも響き渡った「I’m Waiting For You」ではオーディエンスの手が次々と上がり、いよいよライブは最高潮に突き進む。

 続いての楽曲を演奏する前には、当時イギリスにいて「違う国にいるからこその自由と不自由を感じながら作った」という『Songs of Innocence & Experience』を振り返る秋山。現在カタールで行われているサッカーワールドカップやそれを取り巻く社会問題に触れながら、「日本はいい時代とはいえないし、でも悪い時代だからいろいろな話をして仲良くなっている友達もいる」と「何を選択するか」の大事さを語り、「自分が踊りたいときに踊るという気持ちで書いた曲です。みんなサポートし合いながら、不完全なまま踊りましょう」と言うとギターをかき鳴らして歌い始めた。問答無用に心と体を弾ませる「Don't You Wanna Dance in This Heaven?」のサイケデリックなグルーヴが文字通り景色を塗り替えるように響き渡っていく。

 夕日のようなオレンジの光の中演奏された「Nashville」を終えると、本編ラストは「All Want」。イントロが鳴り響いた瞬間、一気にフロアが沸騰する。タイトなサウンドがひたすらに走り、秋山が叫び声を上げる。全速力でゴールテープを切るようなフィニッシュで、最高の幕切れを描き出した。もちろんそれで終わるはずもなく、アンコールの手拍子に応えてメンバーは再びステージに登場。だが秋山の姿がない。先ほどの本編で体力を使い果たし、ちょっと休憩しているという。加地が場をつなぎ先日出演したタイのフェスの思い出を話したりしているうちに無事秋山も戻ってきたのだが、なぜか全身ずぶ濡れ。どうやらバックステージで水をかぶってきたらしい。気合が入っている。そして「A Paper Dream」を軽やかに披露すると、アルバム、そしてツアーへの期待感を残してライブは終了した。終演後には「Under My Skin」のミュージックビデオも上映。このライブでサポートを務めた鈴木も「CYCLE MAN」として出演している最高のビデオなので、こちらもぜひチェックしてほしい。

DYGL - Under My Skin (Official Video)

DYGL オフィシャルサイト
https://dayglotheband.com/

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