STUTSプロデュースのMirage Collective、バイラル好調 『エルピス』にも通ずる“強さと儚さ”の二面性
謎解きはここまでにして、楽曲自体に目を向けてみよう。トラックは、STUTSらしいオーセンティックな仕上がりで、ピアノやホーンセクションの音色がジャジーな雰囲気を演出している。そして、ボーカルは、その声の主の匿名性の由来でもあるオートチューンが印象的だ。ボーカルの音程補正を意図的に強くかけることで、デジタルなニュアンスを作り出すオートチューン。生音っぽいトラックにデジタルな手触りのボーカルが乗ったときに生じる心地よい違和感が、本作を特別な楽曲にしている源泉であるように感じる。
ドラマ『エルピスー希望、あるいは災いー』は、スキャンダルによって落ち目となったアナウンサーと、バラエティ番組の若手ディレクターらが、10代の女性が連続して殺害された事件の冤罪疑惑を追う中で、一度は失った“自分の価値”を取り戻していく姿を描く物語。「Mirage Op.1」の歌詞にも〈can’t stop the fire/信じたいんだ〉という一節が何度か登場し「魂を燃やし続ける覚悟」が表現されている。他にも〈二人だけの世界で火を灯そう〉〈あまりに強い火に身を滅ぼす異教徒〉〈触れたくて もう止められない/消せない炎のよう〉のように火をモチーフにしたフレーズが随所に登場することも見逃せない。楽曲タイトルの「Mirage」は蜃気楼という意味を持つ言葉であることも考えると、熱く燃えたぎる力強いパワーと、一瞬にして消えてしまうその儚さを、火や炎になぞらえているのではないだろうか。
ミステリアスな歌詞も含めて、どこかベールに覆われたような「Mirage Op.1」。そして、Mirage Collectiveの纏う不思議な雰囲気。さらなる楽曲のリリースなど今後の動向から目が離せない。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2022-11-16