マキシマム ザ ホルモン、広告業界も評価する“こってり”なプロモーション戦略 奇抜な企画から紐解くバンドの本質

 また、ホルモンは自身のバンド内で完結させず、ファンや周りのバンドを巻き込むような施策を行うところも特徴である。

 例えば、2011年にはホルモンと“ヘドバン自慢の腹ペコ(ファン)”がTVCMに共演するというニュースがあった。これは、事前にファンに対して応募者を募り、ライブの一部始終を撮影し、それをTVCMとして放送したというものである。また、2019年には“ロックバンドのフランチャイズ化”という前代未聞の企画「マキシマム ザ ホルモン2号店プロジェクト」でメンバーを一般公募。同年、マキシマムザ亮君がACC賞でシルバー賞を受賞している。この施策から誕生したコロナナモレモモは、複数の大型フェスに出演するなど、単体のバンドとしても音楽ファンから支持を集め、2021年3月にリリースされたマキシマム ザ ホルモン『ESSENTIALS』に彼らのラストシングルが同梱されていた。また、コロナナモレモモのメンバー選抜の様子もYouTube動画「ガチンコ ザ ホルモン」としてコンテンツになっており、一つの企画から複数のコンテンツに派生する流れも、ホルモンならではと言える。

 冒頭でも触れた、ACC賞で2022年ゴールド2冠含む3冠受賞した「腹ペコえこひいき店プロジェクト」は、2018年から行なっているプロジェクトだ。同企画は、「腹ペコえこひいき店」に加盟した店舗で使えるクーポンを作品に付属し、ファン同士のコミュニケーションの促進、飲食店のバックアップを実践した企画であり、『これからの麺カタコッテリの話をしよう』の特典としても話題になったものである。同作は、コミック『コロコロアニキ』連載の漫画「マキシマムザ亮君の必殺!!アウトサイダー広告代理人」+CDという内容で、CDではなく書籍として売り出されたことも特徴的だった。ちなみに、この漫画は書籍内だけで完結させず、関連作品がWEBにも展開されており、漫画単体でみても壮大なボリュームとスケールで展開されている模様。

 また、コロナ禍においてもYouTubeでファンのホルモンに対する思いをメインにした「腹ペコアワード2020」を実施したほか、全席・顔面指定席ライブ『面面面~フメツノフェイス~』という顔面のカテゴリーで観客を抽選するライブを行なったりと、活動が制限される中でもさまざまな施策を打ち出している。当時新曲発表の際も、YouTube上で「ホルモンの新曲俺ならこう歌う選手権!!」を開催し、桜井和寿、奥田民生、こやまたくや、R-指定などのアーティストに、メロディは伏せてサウンドと歌詞だけ伝え、それぞれのアーティストがどう歌うのかをコンテンツとして配信したことも記憶に新しい。

 2022年にはアニメ『チェンソーマン』の挿入歌&EDの新曲「刃渡り2億センチ」のタイアップを機に一部楽曲の初のストリーミングの配信を行ったが、この配信までも『チェンソーマン』後に本人たちのTVCM出演や、ストリーミング内のジャケットやアーティスト名など、“体験”にこだわり続けるのホルモンの施策が見える展開となった。

 この他、映像作品としてリリースされた『Deka Vs Deka 〜デカ対デカ〜』や『Dhurha Vs Dhurha 〜ヅラ対ヅラ〜』の濃厚さも本来ホルモンの施策としては記載せねばならぬ事項なのであるが、これ以上の記述は本文がこってりしすぎてしまうため、この記事内では割愛する。それほどにホルモンは、こだわりが強く、こってり濃度の高い施策を無数に取り組んできた、他に類をみないバンドであると言えるだろう。

マキシマム ザ ホルモン、“一部サブスク解禁”でバイラル好調 抒情性&シャウトの殴打でメリハリを存分に発揮

参照:  Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けし…

Galileo Galilei、フレデリック、ORANGE RANGE、マキシマム ザ ホルモン……意外と多い“兄弟/姉妹バンド”の特性

バンドごとにメンバーの関係性は大きく違う。幼馴染だったり学生時代の友達同士でバンドを結成するケースもあれば、プロ志向でバンド活動…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる