マキシマム ザ ホルモン、広告業界も評価する“こってり”なプロモーション戦略 奇抜な企画から紐解くバンドの本質

 マキシマム ザ ホルモンは個性的なバンドだ。作品、アートワーク、歌詞、楽曲展開において他のバンドとは異なるこだわりを見せている。しかし、個性的なのは作品そのものだけではない。作品のリリースの仕方や世に届けるためのプロモーションなどにおいても、ホルモンは一筋縄ではいかない施策を展開することが多く、先日は「腹ペコえこひいき店プロジェクト」にて日本最大の広告&マーケティング賞のACC賞でゴールド2冠含む3冠を受賞した。

 マキシマム ザ ホルモンはひとつの作品をリリースするうえでも、ボリューム感を大切にすることが目立つ。今でこそ、CDをリリースする際に特典をつけたり、他の付録をセット売りするバンドは増えてきたが、そういった施策がバンドの中で普及する前から、マキシマム ザ ホルモンは作品本体 +αの「α」の部分が膨大になるケースが多かった。

 2005年はマキシマム ザ ホルモン初のバンドスコアが発売されている。通常、バンドのスコアはメンバー監修でもそこまで大きな特典をつけることは少ないが、ホルモンは少し様相が異なる。袋とじによるマキシマムザ亮君による描きおろしマンガ『へこみんの事』をはじめ、ダイスケはんによるパラパラ漫画、メンバー直筆の特製履歴書、機材紹介が載っているなど、バンドスコアというよりもホルモンを特集した雑誌のようなボリュームを誇っている。言ってしまえば、バンドスコアという“情報”だけではなく、その商品を購入した人だけが楽しめる“体験”のようなものも作品の中に内包しているのだ。

 これは、以後リリースされる他の作品にも通底する考えだと思われる。

 例えば、シングル『ざわ…ざわ…ざ‥ざわ……ざわ』では初回特典として弁当のオカズの仕切りなどに使われるばらんが封入されており、このばらんがフリーライブのチケット代わりになった。シングル『爪爪爪 / F』ではジャケット画と同じ絵のステッカーと次作CDのプレゼント応募の際に優遇される「連動応募券」が封入されていた。『グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011〜2011』では、雑誌『BUBKA』で連載されていた「マキシマムザ亮君のマキシマムザ合法トリップ」を編集した冊子と、イベントの応募やプレゼント申し込みに使用できる"謎の応募券”が同封されていた。特徴的なのはこの券で応募できる内容がCDリリース時ではなく、リリース後にアナウンスされているところ。また、『グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011〜2011』の特典はこれだけに留まらず、ホームページ上で公開された楽曲「小さな君の手」の着うたが無料で入手できるQRコードも同封されていた。

 総じて言えるのは、作品を作品の中だけで完結させず、作品を軸にして縦と横に広げていき、次回作品やリアルイベント、あるいは作品以外のメディアなどに展開させていくという点である。なお、諸々の理由で『グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011〜2011』は、リリースと同年の2011年9月22日で廃盤になっている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる