デジタルへの移行で変化する音楽プロモーションのあり方 DSP各社のレコメンドに注目

デジタルへの移行で変化する音楽プロモーション

 Amazon Musicが他のDSPと比べて特徴的なのは、Amazon Prime会員であれば追加料金なしでサービスを享受できるという点だ。Amazon Musicには音楽に対してマニアックなこだわりのないユーザーが一定数含まれていると考えられる。そのため、自分から好みの音楽を探して聴きに行くというよりは、今流行っている音楽をプレイリストでチェックする傾向が強い。そんなユーザーの好みに寄り添うプレイリストが「Hot In Japan」。このプレイリストに入れば、多くのAmazon Musicユーザーに楽曲がチェックされ、大きく再生回数を伸ばすことが期待できる。

 バイラルチャート等で独自の指針を打ち出し、新しい音楽との出会いの発見の場を積極的に提供しているSpotifyは、「先物買い」の音楽好きユーザーへのアプローチに秀でている。そんなSpotifyで注目したいプレイリストは、「Buzz Tracker」である。Buzz(バズ・流行り)"+"Track(楽曲・追跡する)"を掛け合わせた「Buzz Tracker」では、TikTok JapanとSpotify Japanが両プラットフォームの特性を生かし、毎月1組の「Monthly Artist」を共同で応援していく。デジタルメディアならではの、プラットフォーム横断型のレコメンドシステムだ。

 ユーザーの半数は10代~20代でSNSとの親和性の高いLINE MUSICは、アーティストのコアファンベースの施策、展開を推進するところが特徴の一つだ。その最たる例は再生回数キャンペーン。アーティストのファンが特典を求めてキャンペーン対象曲を再生することで、再生回数を表すリアルタイムチャートが変動していく。これは、コアファンの巻き込み方を含め、今の状況をビビッドに反映するため、若年層をターゲットとした音楽業界の今を象徴する事象である。さらに、この動きが発火点となり、他のDSPに波及していく点も見逃せない。

 ユーザー数が多く、年齢層も幅広いApple Musicで、TOPバナー展開に選ばれることは、かなりのプロモーション効果が期待できる。様々なバリエーションの個性あるプレイリストや「Tokyo Highway」「J-POP NOW Radio」といった独自コンテンツのラジオなど、多角的に楽曲への導線を引いている。「DSPの総合商社」的なポジションであらゆる視点からサブスクヒットへの可能性を広げている。

 以上の状況をまとめてみると、デジタル時代においては、情報の拡散が数値化され、自己発信型となり、発信する情報、コンテンツの内容がより問われる形に推移してきた。デジタルプロモーションも、各メディアの特性を理解し、フレキシブルに対応できる柔軟なコミュニケーションが一層必要となってきている。一つでも多くの発信の道筋を作っていくことが、サブスクヒットへの近道となってくるのだ。

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