The Beatles、テイラー・スウィフト……洋楽作品がアルバムチャート好調 異なる視点で現代的な2作のあり方
続いてテイラー・スウィフトの『ミッドナイツ』。通算10作目となるアルバムで、ZIPPOの炎を見つめるジャケットにはどこかプライベートの匂い。彼女がアメリカを代表するポップシンガーであるのは事実でも、今回のアルバムはテンションが控え目で、淡くアンニュイなトーンが続きます。叙情的なインディーフォーク色が強かった2020年の『フォークロア』を聴いた時もそうでしたが、最初は「え、こんなに勝負曲がなくて大丈夫?」と心配になったほど。
今のテイラーは、ポップアイコンとして万人に愛される幕の内弁当のような作品を作る必要がない境地にいます。『ミッドナイツ』というタイトルが示すように、この新作に収められたのは「私の人生に散りばめられた13の眠れない夜の物語」。ごくプライベートな匂いがするのも、アンニュイなトーンで統一されているのも当然で、夜中に思い出すかつての恋人たち(クソな遺産、という歌詞に吹きます!)や、実はネガティブになってしまいがちな自分の話を赤裸々に綴ったものが多数。「Bejeweled」などはMVもキラキラしているけれど、ハジけた明るさよりも大人の落ち着きが、そして今日的なメッセージの勝るところが、30代になったテイラーの魅力でしょう。
その方向性ではヒットしないのでは? 心配はご無用。ニューアルバムを発売したばかりの彼女、CDだけでなく、サブスク/ストリーミングでも無双の勢いを見せています。11月5日付の米ビルボード・ソング・チャート「Hot 100」では、首位から10位までのトップ10曲がすべてテイラーの楽曲で独占される歴史的快挙が起こりました。流行に気を配り、起承転結を考えてアルバムをパッケージングせずとも、ちゃんとファンがついてくる。これはアーティストとしても理想のポジションだと思います。テイラー・スウィフト、まさに現代のトップスターですね。
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