石田ゆり子=lily、初ステージの緊張の中で届けたあたたかな歌声 『TRIO ERA 2』大橋トリオとのパフォーマンスを観て

 女優 石田ゆり子が、lilyとして11月3日に東京国際フォーラム(ホールA)で開催された大橋トリオのデビュー15周年記念公演『TRIO ERA 2』にゲスト出演した。

 lilyは、石田ゆり子による音楽プロジェクト。彼女であることを伏せた上で2021年12月3日にカバー楽曲「MAGIC feat 大橋トリオ」を配信し、2022年10月26日には初となるミニアルバム『リトルソング』をリリースしたばかりだ。今作に収録されたオリジナル楽曲は、大橋トリオが作曲とプロデュースを手掛けており、石田はそれぞれの楽曲の作詞を担当。同プロジェクトにおける歌唱と作詞は、今年で芸能活動35周年を迎えた彼女にとってまったく新しい挑戦となる。

 ミニアルバム発売に際して、石田は、「歌をやってみませんかと言われたあの日からおよそ2年ほどの日々が過ぎ、今こうしてこのミニアルバムがここに存在することに、深い感動を覚えています。音楽への扉が私の人生に存在していることが幸せでなりません。大橋トリオさんに心から感謝します。秋の夜長に、楽しんでいただけますように」とコメントしている(※1)。この言葉からは、石田の音楽に対する強い想いと、大橋への大きな感謝の念が伝わってくる。この記事では、この日、初めてステージに立ったlilyのライブパフォーマンスについて振り返っていく。

 ライブ前半で大橋はlilyがカバーした「MAGIC」を披露したほか、弾き語りコーナーでは事前の対談で石田からリクエストを受けていたという「くるみ」を歌う一幕もあった。この日、lilyがゲスト出演することは予めアナウンスされていたため、この展開にグッときた観客はきっと多かったはず。

 lilyは本公演で2度ステージに登場した。まずはライブ中盤、大橋の「お待ちかねのあの方を紹介したいと思います」という言葉を受けて、"15"という数字を模した金色のバルーンを持ったlilyがステージへ登場。観客からの大きな拍手を受けながら登場したlilyは、「こんばんは、15周年おめでとうございます」と大橋のアニバーサリーイヤーを祝い、「夢のようです」と万感の思いを伝えた。また、「この素晴らしい皆さんの中で、私は何をやろうとしているんだろうという気持ちで、大丈夫かな」と初ライブに対する不安と緊張を等身大の言葉で語った。そんな緊張を解きほぐすかのように、サポートドラマーの神谷洵平が、ステージ上でいきなりlilyにサインをお願いする一幕も。

 そして、lilyによる「悲しいニュースや辛いことが山ほどある中で、みんな一人じゃないんだよ、という応援歌のような歌です」という紹介を経て、NHK『みんなのうた』(10月〜11月)にも選ばれたオリジナル曲「ちいさなうた」が披露された。壮大でありながら優しい温かさが伝わるバラードで、lilyの澄み切ったイノセントな歌声がホールいっぱいに広がっていく。静かに囁くような歌の中に、時おり凛とした高音が交じり、その深い響きに強く胸を打たれる。何より、大所帯バンドによる豊かなサウンドに包まれるように歌うlilyの姿はとても心地良さそうだった。

関連記事