キタニタツヤ、鮮やかな感情を届けた濃密な夜 『UNKNOT / REKNOT』ツアーで向き合った“生きる”ということ

 「未来が怖くてしょうがない、そういうことが今までたくさんあって。でも恐怖とか傷とかと向き合っていく、そういう歌を書きました」と話して演奏したのは、新曲「スカー」。自問自答の末にある固い決意と、傷を抱えながらも一歩踏み出していくという思いがロックサウンドに乗って力強く響く。そして2015年リリースの「軽忽な救済を待つ醜さには一片の夾竹桃を」へ。この曲を終えた後、「すごく内省的な歌詞だし、この頃は呪いの言葉がほしくて歌ってたんだなって」と話し始めたキタニは、胸の内を明かす。「それはそれで尊い過去の記憶だって思うんだけど、最近の自分の考えとしては、希死念慮とかを自分の中で溜め込んでいるよりも、人生においてもっと集中すべきものがあるんじゃないかって思うんだよね。これを作ってたときより俺は7年分“死”に近づいているからそうも思うわけだけど、無数に転がっている喜びのかけらを平らげていく残り4、50年にしたいなと前向きに捉えています」と語った。そんな言葉のあとに披露された「タナトフォビア」では、妖しげな歌詞の言葉選びの内にあるひたむきな生命力に胸を打たれたオーディエンスも多かったはずだ。

 「みんなの人生を変えようとかではなくて、みんなの人生のトリガーになれればいいなって」と話して披露した「それでも僕らの呼吸は止まない」は、彼にとって初めて“生”を肯定した曲だという。そして、「聖者の行進」では目の前のオーディエンスに力の限り思いを届けるように、言葉を投げかけていた姿が印象的だった。

 歌い終えたキタニは、心から楽しんでいると言わんばかりに声を上げて笑い、「ありがとう、気をつけて帰ってね、ばいばい」とあっさりとステージを去った。あっという間の1時間半であったが、鮮度の高い感情表現と現在の彼の思い、そして新旧の楽曲たちが詰め込まれた、非常に濃い時間であった。

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