SHERBETS 浅井健一&福士久美子、自然体のまま独創的であり続けた25年間 出会いから“解散撤回”の真相まで振り返る

浅井健一&福士久美子、SHERBETS 25年史

唐突に決まった解散宣言から撤回まで

ーーその後は『MIRACLE』(2007年)やミニアルバム『GOD』(2008年)を出したりと活動が続いたので、だんだんこのバンドなりのペースがあるんだとわかったんです。数年空いたりはするけど、それこそ自然の流れで続いていくというか。

浅井:うん。せいぜい1年先ぐらいまでの計画しか立ててないんで(笑)、振り返るとこういうことになっとるよね。たまに活動して、またみんな離れる。で、またやりたくなったら集まるというやり方をしてきたから、25年も続いたと思うよ。

ーーところが2011年には一度、解散を発表しながら、それを取りやめるという一件が起こりました。

浅井:解散騒動ってやつね(笑)。

ーーファンクラブの会報で解散を告知したのに、その直後に撤回しましたね。

浅井:うん、「やっぱりやるわ」って。

福士:あったね(笑)。

ーー何が起こってたんでしょうか?

浅井:ん? 別に。みんな、ケンカしたんじゃないの、いつものように(笑)。

福士:この時はケンカしてないよ、全然(笑)。

SHERBETS「リディアとデイビッド」

ーーアルバム『FREE』(2011年)の制作が終わった直後でしたよね。

福士:ベンジーに、何かの帰りに送ってもらった時に解散の話をしたんだよね。

浅井:MV撮影の帰りだね。「もう解散するから頑張ってMV撮ろう」とか言って撮って、その帰りに福士さんを送った気がする。

福士:その時に私が「別に解散しなくていいんじゃない?」って言ったの(笑)。

浅井:そう言われてみると……そうだよね、みたいな。

福士:(笑)。たぶんベンジーはその時なりにいろいろ考えていたから、解散発表までしたんだと思うんだけど。

ーー解散発表は、東日本大震災の直後だったこともあり、当たり前に存在すると思っていたものがなくなることもあるんだと感じた出来事でもありました。しかし浅井さんもよく決意を変えましたね。一度発表してるのに。

浅井:俺、頑固者じゃないもん。ただいい方向へ行こうとするだけ。偏屈人間が一番アホらしいと思うので。

福士:それはいいことだよね。でも撤回するのは珍しいと思うけど(笑)。

ーー珍しいです(笑)。2015年には浅井さんが指を骨折したために、サポートのギタリストを入れた時がありましたよね。その時、初めてハンドマイクで歌う浅井さんを見まして。

浅井:ああ、あったね。まあライブの数曲だけハンドマイクで歌ったくらいだけど、その時「カミソリソング」のギターを説明するのが難しくてさ。「これ、どうやって弾いてるんですか?」って言われるもんだから、(リフやフレーズを)口で言うしかないじゃん? 指が動かないから(笑)。その時に「あれ? 俺、どうやって弾いてるのかな?」って、わからんかったな。普通の人では考えにくいギター弾いてるんだなと思った。サポートの人が弾くと全然違うものになっとったので。

福士:うん。“ベンジーの音”って、強烈にあるもんね。「カミソリソング」のあの感情のタッチは、普通に弾いてもなかなか出せるもんじゃないだろうから。

SHERBETS 『愛が起きてる』MUSIC VIDEO(Short Ver.)

次作への意欲&仲田憲市への叱咤激励

ーーそして20周年のベストアルバム『The Very Best of SHERBETS「8色目の虹」』を挟みつつ、今年の4月には6年ぶりのオリジナルアルバム『Same』がリリースされました。バンドの状況はいかがですか?

浅井:実は仲田先輩のことなんだけど……今起きられなくなっちゃってさ。それでサポートのベーシスト(宇野)とリハをやってるんだよ。

ーーそうなんですか!? 仲田さんが起きられなくなったというのはいつから?

浅井:先週(ツアー開始の約3週間前)。その時点でもうダメだということがわかっとりゃいいんだけど、「絶対大丈夫だから」「2〜3日ですぐ復活するから」とか言うもんだから、「じゃあその言葉を信じるわ」と言って、先輩が復活する予定でリハも組んでたんだけど、腰が痛くて全然復活できないって話になって。それで急きょベーシストを見つけて、1日で20曲も覚えてくれたよ。ものすごいよ。

福士:すごいよね。

ーーそれは大変ですね。

浅井:でもね、仲田先輩は日頃の行いが悪い……憎たらしいところもある人なんだけど(笑)、やっぱり“色”があるというか、バンドにおける存在感としては大事なんだよね。日頃の行いは悪いんだけど、バンドマンって、きっちりして素晴らしい生活を送ってる人が必ずしもいいわけじゃないから。昔から優れたミュージシャンは大酒飲みだったりジャンキーだったりするし。音楽でも映画でも本でも、全く毒がなかったら、つまらんものになるかもしれないし。勝手にそう思ってる。歌詞もそうなんだよ。お酒をやめて、きっちりした生活を毎日送ったことが1〜2カ月あったんだけど、その時、歌詞が出てこなかったもん。出てきても、あんまり面白くないんだよね。経験上、二日酔いでぶっ倒れてる時に出てくる歌詞のほうが鋭かったりする(ベンジーはツアー初日のステージでも、仲田のことを「日頃の行いが悪い」と断罪しつつ、早く治ることを祈るようオーディエンスに話しかけていた)。

ーーなんとなくわかる気がします。

浅井:だから腹立つんだけども、怒れないし。

SHERBETS『MIA』MV

ーー浅井さんはたくさんバンドをやってきたけど、SHERBETSが断トツで最長寿じゃないですか。今日話を聞いて改めて、自然体であること、無心であることを大切にしてきたバンドなんだなと思いました。それは貫いてるなと。

浅井:うん。よくわかってないけど、自然にそうなっとるんだわ。

ーーその作為がないところが、このバンドのいいところだと思います。それこそマーケティングのようなことはしないというか。

浅井:……いや、でも大ヒットしたらいいなとは思っているよ。なかなかそうならないだけで(笑)。聖人みたいな人じゃないから、俺たち。けど、応援してくれる人たちがいるから続けてこられたんだよね。俺たちの曲をちゃんと理解して、好きでいてくれてる人たちがたくさんいてくれたから25年続けられた。そこが一番大事だわ。その人たちがいなければ、とっくにやめてるもん。応援してくれて、俺たちはちゃんとバンドがビジネスになってこられてるから。これだけCDが売れない時代でも買ってくれるし、その人たちに感謝してる。心から。

ーー福士さんはどうですか、ここまで続いてきたことについて。

福士:SHERBETSはすごいバンドだと思ってるし、「もっといいものを作りたい」と常に思ってたら、ここまで来たという感じかな。続けるのは苦しい時もあるけど、大きな喜びもあるから。自分にとって大事なバンドだと思ってやってきてるだけですね。でも時々SHERBETSの音楽を好きでいてくれる人たちの思いに触れて救われてきたから、ここまで続けてこれたのかもしれないですね。

ーーぜひ、このまま続けていってもらいたいです。そして次のアルバムを来年にでも出したいという話をしていましたよね?

浅井:うん、そうだね。だからアルバムは、仲田先輩が復活したら一緒に作る。でもこんな状態だと、なかなかツアー(の日程)が切れないよね。だから先輩に言ってあるんだわ。酒も断って、タバコもやめて、健康な生活をすると断言するんであればツアーを切れるけど、結局治っても、また今までみたいな生活するんであれば……って、なんで俺、インタビューでこんな話してんの?(笑)。

ーー(笑)。しかし今日の仲田さんの話は載せられるのかなあ……。

浅井:まあ任せるわ! 面白くまとめて、笑えるようにしてくれるならいいよ。みんな笑いたいだろうからさ、今。

SHERBETS『UK』

■リリース情報
SHERBETS
ニューシングル『UK』
2022年10月26日(水)リリース
・初回生産限定盤(2CD) ¥4,180税込
・通常盤(CD)¥1,320税込

<CD1収録曲>
1.UK
2.Smoothie Glider
3.Marble
<CD2収録内容>
『Live at LIQUIDROOM』
1 Grantham
2 アンドロイドルーシー
3 Vanessa
4 ひょっとして
5 MIA
6 Crashed Sedan Drive
7 Stealth
8 Happy Everyday
9 Lonely Night
10 Toy Address
11 LADY NEDY
12 Michelle
13 カミソリソング
14 グレープジュース
15 小さな花

■ツアー情報
SHERBETS
『24th→25th ANNIVERSARY TOUR “そして未来へ”』
10月29日(土)四日市CLUB ROOTS
10月30日(日)甲府KAZOO HALL
11月5日(土)鹿児島CAPARVO HALL
11月6日(日)福岡DRUM Be-1
11月12日(土)石巻BLUE RESSISTANCE
11月13日(日)いわきclub SONIC
11月19日(土)神戸VARIT.
11月20日(日)広島SECOND CRUTCH
11月25日(金)名古屋CLUB QUATTRO
11月27日(日)金沢GOLD CREEK
12月3日(土)大阪Banana Hall

浅井健一 SEXY STONES RECORDS
SHERBETS 公式HP

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる