Rin音、リアルとファンタジーが入り交じった世界観を表現 『haunted house』ツアーファイナルをレポート
ラッパーのRin音が9月17日、全国7公演で開催されたツアー『Rin音 Tour 2022「haunted house」』のファイナルを東京・Zepp Hanedaで迎えた。ゲストにさとうもか、シークレットゲストにasmi、クボタカイ、A夏目が登場。優しく温かな空気感の中、アンコールを含めて全19曲を披露した。
まるでホラー系アトラクションのような、可愛くて楽しい映像と共に始まったライブ。Rin音は「楽しむ準備はできていますか?」と言って登場し、まずはアッパーなサウンドのアルバム『cloud achoo』表題曲で、会場を熱くさせた。エレクトリックに加工されたボーカルが耳に心地良く響く同曲。観客はリズムに合わせて、上げた手をプッシュしたり左右に揺らしたりで、早くも会場が一つになった。続く「悪運星人」では、軽快なサウンドと共に、「生きていればいいことも悪いこともある。どう楽しむかが大事」というメッセージを伝えた。
ライブは最新アルバム『cloud achoo』を中心に披露された。ダウナーな雰囲気のラップと相対するキラキラとした雰囲気が印象的で、途中からドラムベースのビートに変化するアレンジも楽しい「glitch switch」。雨の音や虫の音をSEに使ったトラックと、情景が浮かぶ歌詞が秀逸な「Myth」。浮遊感のあるおしゃれなサウンドとボコーダーを使ったボーカルアレンジや、独特なリズムで畳みかけるようにラップした「heaven town」。アナログレコードのノイズを使った「beryllium」では、「たまにちゃんとした大人になれるのかとか、むしろ子どものままでいられるのか、不安になる」と話し、ゆったりとしたラップを聴かせた。
MCでは、アルバム『cloud achoo』のタイトルの意味についても語った。おばけのモヤモヤとした姿が雲のようであることと、くしゃみを3回連続ですると誰かに噂されているという言い伝えがあることから、『おばけの噂話』という意味になるとのことで、「噂話という本当のようで本当でないような曖昧な存在が、おばけに似ていると思った」ことから命名されたという。「例えば付き合っているカップルの間には明確な契りがあるわけではないし、口約束を実行するかしないかはその人次第だし。そういう目に見えないものを信じて行動するのは面白いことだと思って、アルバムを作りました。もしもみんなが噂話に悩まされることがあったり、人間関係が大変だと思ったり、そういうタイミングにこのアルバムを聴いて、気が楽になってくれたらうれしい」とコメントした。
彼の言う『おばけの噂話』とは、どこかSNSにおける様々な問題とも重なる。それを否定するのではなく、現象として捉えたのがRin音らしくて面白い。それをどう受け取るかはその人の問題であり、だからこそ「気が楽になってくれたら」というニュアンスになるのだろう。個人の問題に深く立ち入らず、でもどこかで気に掛けてくれているといった感覚が、今の世代の距離感の取り方だなと筆者は感じた。
ライブはファイナルということで、ゲストも迎えた華やかなステージも繰り広げた。まずはasmiが登場し、「bless feat.asmi」と「earth meal feat. asmi」を披露した。挨拶もそこそこに「じゃあ早速あの曲いきますか!」とRin音。asmiの儚さのある歌声が印象的なミディアムナンバー「bless feat.asmi」では、あえて目を合わさず少し離れて歌う2人の距離感が、なんだか歌詞の世界観を表現した感じがして、胸がキュッとなる。「earth meal feat. asmi」は、もしも地球が壊れてもずっと一緒に歌っていようと歌う、ファンタジックなナンバー。先ほどまでの切ない雰囲気とは一転、楽しそうにステージを動き回りながら歌ったasmiとRin音。会場にはクラップが響き渡り、温かいムードが広がった。