週替わりテーマソングが作品にもたらす効果 『チェンソーマン』機に『ドロヘドロ』『高木さん』ら過去事例を振り返る

 シリーズ作品で様々な楽曲を起用する演出はドラマ作品でも様々な役割を果たす。7月期放送のドラマ『六本木クラス』(テレビ朝日系)ではリメイク元である『梨泰院クラス』のテーマ曲「START」の日本語カバー「Start Over」(THE BEAT GARDEN)に加え、松室政哉「ゆけ。」、三浦透子「点灯」、秦 基博「残影」という合計4曲の挿入歌が制作された。主に登場人物の思いが溢れるシーンで流れ、時にはエンドロールも彩り、物語を強く盛り上げた。

 『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年)は5人のラッパーが週替わりで作詞と歌唱を担当、出演俳優も一部歌唱に参加したSTUTSの「Presence」が主題歌だった。登場人物の心情に寄り添うリリックはその回を深く印象づけ、毎週話題を呼んだ。映像も毎回変わり、先鋭的な楽曲と優れたドラマが高次元で結びついた好例となった。

STUTS & 松たか子 with 3exes - Presence Remix feat. T-Pablow, Daichi Yamamoto, NENE, BIM, KID FRESINO

 その他にも9月14日よりDisney+で配信中のドラマ『すべて忘れてしまうから』では主人公の行きつけのバーで開催されるライブという設定で各話ごとに異なるEDが歌唱され、その回の余韻にたっぷり浸らせてくれる。ドラマ『ナイト・ドクター』(2021年)は5組の新進気鋭シンガーによるオリジナルナンバーを週替わりで起用し、そのフレッシュさでドラマを勢いづけていた。このように、複数のテーマソングを用意する意図も作品ごとに大きく異なる。

 前例を踏まえた上でアニメ『チェンソーマン』で特筆すべきは、『呪術廻戦』のEve、『東京喰種トーキョーグール』のTK from 凛として時雨など、これまでもアニメ主題歌で支持された顔ぶれが多く、各々が打ち合わせることなく各話のために1曲だけを書き下ろしていることだ。また各話で流れるEDの映像も違うとのこと。先述したアニメ作品では映像の中で静止画だけが変わるケースがほとんどだった。予告映像の時点ですでに高いクオリティが約束された『チェンソーマン』ゆえ、ED映像がどのように変わるのかにも期待がかかる。

 『チェンソーマン』の音楽は『君の名は。』のような複数の主題歌/挿入歌を起用するアニメ映画の文脈を汲みつつ、2022年のシーンを代表するアーティストラインナップには昨今のドラマ作品からの影響も窺える。物語を彩りつつ、同時に現代の良質なJ-POPを世界中に届ける好機とも言えそうだ。猛烈なスピードで進む物語の勢いを加速させながら、毎週違うED曲であることが強い意味を帯びるような、斬新かつ尖ったものになることを楽しみに待ちたい。

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