TVアニメ第1期のオープニングテーマで、ゲーム内でも幾度となく聴くことができる「Make Debut!」は『ウマ娘』らしい楽曲。明るい曲が多い『ウマ娘』の中でも、“メイクデビュー”という希望に満ちたスタートを表現していることもあり、特にキラキラとしたサウンドが印象的だ。

　ポップな楽曲が多い『ウマ娘』だが、「本能スピード」は少し違ったサウンドが魅力。“自分の限界を超える”、“戦術を超えたところにある本能で戦う”、“理想に邁進する”といった強い決意がトランスサウンドにのって表現され、まさしく本能に従って走り抜けるような一曲である。楽曲によって、彼女たちの本能を追体験できると言っても過言ではないだろう。

　「Special Record!」は、幾度となく聴き込むことでさらなる感動が味わえる楽曲だ。ストリングスを織り混ぜた繊細なサウンドに、力強いオールスターボーカルが華やかな曲だが、歌詞の中には常に「他者の存在」が置かれており、トレーナーやファンと、ライバルや憧れの存在という他者、自分以外の存在によって走り続けることができるということが示唆されている。戦いの中で、友情を超えた特別な絆を育む彼女たちの真髄が描かれていると言えるだろう。アウトロのファンファーレにいたるまで、美しい一曲だ。

　『ウマ娘』の楽曲を語る上で、アプリゲームのメインテーマである「GIRLS' LEGEND U」も欠かせない。ファンファーレに合わせて歌われた〈やっとみんな会えたね〉という歌詞には、待望のゲームリリースを果たした万感の想いが込められている。かっこよさ、キュートさ、賑やかさに、エモーショナルな泣けるフレーズ……「うまぴょい伝説」とはまた一味違うが、高い中毒性の中にも熱さをはらんだ『ウマ娘』らしい一曲である。

　今回リリースされた『ウマ娘 プリティーダービー WINNING LIVE 08』は、『ウマ娘』の音楽に新たな可能性をもたらしたと言える。リード曲の「Gaze on Me!」は、大人っぽいテクノポップサウンドに、少しセクシーさを感じさせるボーカルがのった、これまでにないスタイリッシュな楽曲だ。サウンドにマッチした“夏歌”らしい歌詞の中に、『ウマ娘』の熱いスピリットが存分に込められている。

　アストンマーチャン（CV：井上ほの花）の「忘却にて」は、かわいらしさの中に切なさや切実さを携えており、卓越した表現力を味わえる。ヤマニンゼファー（CV：今泉りおな）「LIKE THE WIND」は、まっすぐな爽やかさで魅せ、風を愛する彼女のキャラクター性が表現されている。ダイタクヘリオス（CV：山根 綺）「笑っちゃお！」は、ダイナミックなホーンサウンドにのった底抜けの明るさが楽しい。スマートファルコン（CV：大和田仁美）による「立ち位置ゼロ番！順位は一番！」は、テンポ感がキュートな王道のアイドルソングで、ヒャダインこと前山田健一 による提供楽曲だ。ゲームのメインストーリー第一部エンディングテーマでもある「Precious Star Dreamer」は、彼女たちの歩みを刻み未来に夢を託す感動のバラード。このように多彩な楽曲が詰め込まれた、表情豊かな一枚である。

　『ウマ娘』には、まだまだ名曲がたくさん存在する。ここに挙げきれなかったソロのキャラクターソングや、ストーリーや史実を知ることでより感動できる楽曲も多い。ファンファーレをモチーフに、ホーンアレンジが多用されるのも特徴的。作品の性質上、ポジティブで疾走感のある楽曲が多いため、シンプルに勇気づけられる・元気が出る音楽だという点も魅力的だ。そんな中にも前述の「winning the soul」や「本能スピード」など違った表情を見せる曲もある。キャラクターソングならではの、ストーリーやキャラの深掘りを可能とする歌詞の世界観も、年々充実度が増すばかりだ。

今後もこれらの楽曲群が、『ウマ娘』の世界を深めてゆくことは間違いないだろう。