ぜったくん、ワンマンライブで示す屈指のメロディメイカー&ライブパフォーマーとしての底力

 今年8月に初のフルアルバム『Bed in Wonderland』を配信リリースしたラッパーのぜったくんが、それを携えてのワンマンライブ『WAKE WE UP!!!』を東京と大阪にて開催した。彼のワンマンライブは、昨年11月3日に東京・渋谷WWW Xで行われた『Good Feeling』に続いて1年ぶり2度目、大阪では初の開催となった。9月16日の東京公演(恵比寿・LIQUIDROOM)では、アルバム『Bed in Wonderland』からの楽曲を中心に全18曲(アンコール2曲を含む)が披露された。

 定刻となり、まずは馴染みのサポートメンバーである久保佑太(Dr)、タケウチカズタケ(Key)、KO-ney(MPC)、SUKISHA(Ba)、キミカ(Cho)が登場。サウンドチェックを兼ねたフリーセッションが行われ、キミカによるカウントダウンに合わせてぜったくんが登場すると、フロアは大きな拍手で包まれた。

 「本日はご来場ありがとうございます。みんなで楽しみましょう!」とぜったくん。「でも、今のカウントダウンの“ダンダーン”ってキメのやつカッコいいな、俺もやりたい(笑)。なので、最初の曲をやる前にみんなでカウントダウンならぬ、カウントアップをやってもいいですか?」とフロアに問いかける。そして、ぜったくんのかけ声に合わせてバンドがキメの数を1から徐々に増やしていき、最終的にカウント25発をメンバー全員で正確に合わせると、ぜったくんは思わず「すごすぎる……!」と呟き、焦らしに焦らしてようやく披露した「レンタカー」から、この日のライブがスタートした。

 「そしたらみんな、起きてくれー!」と大きく叫び、続いて演奏したのは「Wake me UP!!!」。お笑い芸人の金田哲(はんにゃ)を「遅刻の神様」としてフィーチャーし話題となっためざましソングだ。その後もシンガーソングライター・kojikojiを迎えて制作された、メロウでアンニュイな「Midnight Call」、映画『スター・ウォーズ』好きでも知られるぜったくんが、同シリーズの名台詞「I have a bad feeling about this(なんだか悪い予感がする)」を引用しつつ、真夜中に誰しも訪れる「鬱モード」について歌った「Bad Feeling」と、彼の代表曲を次々と繰り出していく。

 「なんて日だ」は、タケウチのピアノをフィーチャーしたロッカバラード調の楽曲。以前のインタビューでぜったくんは、「Wake me UP!!!」を制作していた時期は「60年代のロックとかそのあたりを掘ったりしていました」(※1)と語っていたが、この曲もそうしたインプット作業の中から生まれた曲なのかもしれないと思わせるゆったりとした雰囲気を帯びていた。続く「orange juice」はヒップホップビートに乗せたソウルフルなメロディが心地よく、サビでは自然発生的にハンドクラップが鳴り響く。会場全体が温かな一体感に包まれたところで披露したのは「Man Say Bien」。曲名どおり慢性鼻炎をテーマに切ない恋心をラップしたぜったくんは、なんと音が出るように改造したプレステ4のコントローラーを用いて、MPCを操るKO-neyとソロバトルを繰り広げてみせた。

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