八木海莉が見せた変幻自在な表現力 初ワンマンと20歳の誕生日を同時に祝うような特別な一夜に

 八木海莉が9月4日・5日、自身初となるワンマンライブ『八木海莉 First One-Man Live 19-20』を渋谷・duo MUSIC EXCHANGEにて開催した。2日間のうち、5日は八木の20歳の誕生日。初めてのワンマンという晴れの舞台と、彼女の20歳を同時に祝うような特別な一夜であった。

 開演すると、美しいピアノと心地よい水の音が流れ出した。会場には水草のようなセットが施されており、全体をほの暗いブルーのライトが照らしている。まるで水中にいるようなステージに、八木がゆっくりと現れた。

 まずは「海が乾く頃」でスタート。〈会って話そうよ〉という印象的なフレーズが何度も繰り返される一曲だ。ピアノの伴奏に支えられた八木の真っ直ぐな歌声が会場全体に響き渡る。今回のライブはキーボード・ギター・ベース・ドラムの4人によるバンド編成で、バンドメンバーたちの息の合った臨場感あるサウンドも魅力の一つ。客席は着座スタイルで、会場には八木の歌唱と演奏を静かに聴き入るような雰囲気があった。

 歌い終えると「こんばんは、八木海莉です。今日は楽しんでください」と一言だけ話して次の「SELF HELP」へ。ベースがうねるグルーヴ感抜群の演奏の上で、八木の歌声も一段と熱を帯びていく。間髪入れずに「刺激による彼ら」のイントロへ突入。曲が進むに連れて歌と演奏とが濃密に溶け合っていた。

 次の曲はストレイテナーのホリエアツシが作曲した「僕らの永夜」。ホリエが紡ぐ力強く熱いメロディを難なく歌いこなす。続いて披露したのは、神聖かまってちゃん「フロントメモリー」のカバー。八木がYouTubeに投稿している弾き語りのカバー動画の中でも、この曲はひと際人気が高い。こうした邦ロック的なサウンドにも八木の歌声はぴたりとハマる。この2曲で会場の空気がぐんと上昇したのを感じた。

 その後、八木はギターを担ぎ、アコースティックバージョンで「お茶でも飲んで」を歌った。原曲とは違ったゆったりとした素朴な世界観が新鮮だ。しかしYouTubeで彼女を知った者からすれば、これが本来の姿だと思うかもしれない。

 まさにそんな彼女の素の一面が表れたのが、次に会場に映された映像だ。八木が普段YouTubeに投稿している「ぐうたらじお」と同様のスタイルで、この日のために撮った「ぐうたらいぶ」が流された。八木が映像の中から「楽しんでますか?」と質問すると、すぐに観客が拍手で応える。そして「4月にリリースしたEP『水気を謳う』の世界観をそのまま持って来れないか」と、今回のライブについての説明も映像から行った。舞台セットについては、自身が熱帯魚が好きで「水槽をイメージ」したのだとか。「空間ごと音楽を感じていただけたら」と八木は話す。

 また、15歳で故郷の広島から上京して、この日で20歳になったことについて触れた。振り返れば10代の半分以上を東京で過ごしたと話し、これからも変わり変わらず物作りしていきますので、みなさんついて来てください」とファンに向かって呼びかける。八木はそのまま映像の中からAdo「世界のつづき」のカバーをワンコーラスだけ弾き語りで披露した。

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