連載「lit!」第14回:UVERworld、[Alexandros]、BREIMEN……ニューフェーズを予感させる今夏の必聴ロックナンバー

 週替わりで様々なジャンルの作品をレコメンドしていく連載「lit!」。第14回となる今回は、ロックを中心に、この夏にリリースされた5つの新作を紹介していく。

 先月の第9回では、「2022年の夏フェスシーンにおける要注目アーティスト」という切り口で、The 1975やKing Gnuの新作を紹介した。この夏、筆者は『FUJI ROCK FESTIVAL '22』を配信で観つつ、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』4日間と、『SUMMER SONIC 2022』(東京会場)の1日目に参加してきた。各アクトのレポートについてはすでに公開されている記事など別の場に譲るとして、今回はこの夏、筆者が観たアーティストの新作を中心にレビューしていきたい。

 『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』4日目、LOTUS STAGEのトリを務めたUVERworldは、ラストの楽曲として新曲「ピグマリオン」を披露した。また、1日目に同フェスのもう一つのメインステージであるGRASS STAGEのトリを務めた[Alexandros]は、新作『But wait. Cats?』の楽曲を軸とした超攻撃型のセットリストを展開してみせた。

 そして『SUMMER SONIC』(東京会場)1日目、BEACH STAGEのオープニングアクトを務めたChilli Beans.と、新型コロナ感染により出演キャンセルとなったバンドのピンチヒッターとして、急遽『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』4日目のHILLSIDE STAGEに出演したBREIMENのステージにおいても、やはり重要な役割を果たしていたのは、この夏に発表された新作の楽曲であった。

 フェスとは、様々な趣味嗜好を持つ音楽リスナーが集まる場であり、その最大公約数としての代表曲、ヒット曲が強く求められる場でもある。そうした楽曲を交えながら数多くのリスナーの期待に応えつつ、同時に自分たちの最新の表現を堂々と見せつける各アーティストの姿は、とても頼もしいものであった。

 筆者が参加した『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』と『SUMMER SONIC』の他にも、この夏、数多くの夏フェスが3年ぶりの復活を遂げた。そしてこの流れは確実に次の季節へと続いていくはずだ。本記事で5つ目の作品として紹介するのは、9月以降、複数の秋フェスへの出演が決定しているにしなの新作『1999』である。同作を選出した理由は、その卓越した完成度ゆえではあるが、同時に秋フェスにおける彼女のステージへの期待も込めている。

 にしなだけではなく、Chilli Beans.とBREIMENについても同じことが言えるが、このコロナ禍において、多くの新世代アーティストたちは、フェスの場を通して新しい音楽リスナーに自分たちをプレゼンテーションする機会を失っていた。逆に言えば、これから数々のフェスやイベントのステージで、アーティストとリスナーの新たな出会いが数多く生まれていくのだと思う。この記事が、そうした新しい出会いが生まれる上でのきっかけの一つになったら嬉しい。

UVERworld「ピグマリオン」

 あくまでも一つの考え方にすぎないが、ポップミュージックの重要なテーマの一つとして、具体から普遍へと向かっていくことが挙げられると思う。アーティストが自分自身の言葉で綴った"私の歌"が、音楽の力を通して普遍的なメッセージへと昇華される。つまり、もともとそのアーティストの属人性に依拠していたはずの歌が、音楽を通して一人ひとりのリスナーが抱く想いや感情と重なることで"私たちの歌"になっていく。多くのアーティストが音楽表現を通して普遍へと向かう、つまりポップを目指す中で、近年のUVERworldは徹底して6人自身の歌を届け続けている。例えば、「EN」は、6人の生き様の全てを注ぎ込んだ渾身の楽曲であったし、「One stroke for freedom」や「OUR ALWAYS」は、他の誰のものでもない6人だけの物語を綴った歌であった。唯一無二のメッセージを鳴らし続ける近年のUVERworldのディスコグラフィは、そのまま6人のリアルなドキュメントであり、今回の新曲「ピグマリオン」も、今のTAKUYA∞(Vo)の心境の変化と、その過程で芽生えた感情をダイレクトに投影した楽曲となっている。

 〈許せば進めるし 恨みは立ち止まらす/あれは僕のせいにしな それも僕のせいにしてよ/僕以外を許して進んで行きなよ/君自身のことも許してあげてよ〉と歌う「一滴の影響」や、〈ずっと君より ほんの少し強くいるよ〉と歌う「ほんの少し」が象徴していたように、これまでTAKUYA∞は自分のメンタルが人よりも強いからこそ歌える楽曲をいくつも歌ってきた。しかし彼はそれゆえ、人の痛みを理解できない場面に直面することが度々あったという。そして、そうした自分と向き合うことで生まれたのが、目の前で涙を流す人の痛みや悲しみに優しく寄り添うためのロックバラード「ピグマリオン」である(※1)。〈泣いてる間だけでも良いから/離さないであげて/誰もがそれで愛し方を知るから〉という言葉が放つ切実な響きが、深い余韻をもたらす。そして、その言葉の直後に激流のように轟き始める鮮烈なバンドサウンドが、その切実さを何段階も増幅させていく。改めてこの歌は、今のTAKUYA∞が歌うべき楽曲であり、同時に今のTAKUYA∞が歌うことで真の説得力が宿る楽曲なのだと思う。彼の精神面の変化をダイレクトに反映させた同曲は、まさにUVERworldがリスナーと共に歩み、成長し続けていることを何よりも雄弁に物語っている。「EN」と同じように、今後のUVERworldにとって非常に大切な1曲になっていくと思う。

UVERworld『ピグマリオン』(Teaser)

[Alexandros]『But wait. Cats?』

 本来、レビュー記事でこんなことを書いてしまうのは反則かもしれないが、とにかく騙されたと思って冒頭の3曲を再生してみてほしい。[Alexandros]の音楽を聴いたことがあるか、ないか。ロックに興味があるか、ないか。そもそも日々の生活の中で音楽を聴くか、聴かないか。そうした前提は、この際もはや関係がないかもしれない。今作を聴けば、あらゆる人が深く轟くロックのインパクトをダイレクトに感じ取ることができるはずだ。鮮烈なロックバイブスを放つインスト曲「Aleatoric」から、一切迷うことなく爆走していくビートに乗せて果敢にエッジを攻め込んでいく「Baby's Alright」へ。そしてそのまま、覚醒のロックアンセム「閃光」へと導かれていく怒涛の展開。この3曲を聴いて少しでも心を震わせられたのであれば、そのまま迷うことなく残りの8曲に身を委ねてみてほしい。その中には、あらゆる制約から解き放たれたかのような痛快さを誇る「どーでもいいから」があれば、凛とした歌心が爽やかな響きを放つ「空と青」や、衒いのないまっすぐな歌を通してロックのロマンを描き出していく「Rock The World」もある。

[Alexandros] - Baby's Alright (MV)
[Alexandros] - 閃光 (MV)

 今作に収録された11曲のテンションやムードはそれぞれ異なるが、その全てに一貫しているのは、自由に、無邪気に、そして懸命に、ロックの果てしない可能性を追求し続ける4人の揺るがぬ意志だ。まるで第2のデビューアルバムのような瑞々しさすら感じさせる今作を掲げて、彼らは今まで以上にギアを上げて爆走し始めている。それは彼らが、ロックが、ロックバンドだけが辿り着くことのできる未踏の景色があると強く信じているからだろう。その求道的ともいえる4人の姿が眩しい。

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