ずっと真夜中でいいのに。ライブ映像で体感するきめ細やかなクリエイティビティ 妥協なきステージから垣間見えた本質

 『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2022』1日目のSUN STAGEのトリ、『FUJI ROCK FESTIVAL '22』最終日のWHITE STAGEのトリ前、『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in EZO』1日目のEARTH STAGEのトリ前。各地の大型フェスで絶好の時間帯にステージに上がって、多くのオーディエンスの目と耳にその鮮烈なパフォーマンスを刻みつけた「ずっと真夜中でいいのに。」(以下、ずとまよ)。特に『FUJI ROCK FESTIVAL 2022』のステージは、現場に詰めかけたオーディエンス、そしてYouTubeでのリアルタイム配信を通して多くの視聴者にインパクト与え、ソーシャルメディア上では「こんなにライブが凄いとは思ってなかった!」といった声が溢れ返ることとなった。フェス出演の大きな意義の一つは、ライブの真価をファンダムの外側にも届かせることにあるが、2022年夏のずとまよはその意義を最大限達成することができたと言えるだろう。

 そんな現在のずとまよのライブパフォーマンスの凄みを余すことなく堪能できるのが、8月24日にリリースされたライブ映像作品『ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」』だ。今年の4月16日と17日、さいたまスーパーアリーナで開催された単独公演『ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」』の全編が収められた本作(初回限定盤は両日、通常盤は17日の公演を収録)。『FUJI ROCK FESTIVAL』のYouTube配信では見せるところは見せる、見せないところは見せない、その巧みなカメラワークと編集に驚く人も続出していたが、本作は過去最高規模の単独公演、そしてもちろん製品盤ということで、配信映像の何倍ものクオリティでずとまよのステージを細部のディテールまで思う存分に「見せて」くれる。

ずっと真夜中でいいのに。LIVE Blu-ray 『ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」』 Trailer

 両日現場に足を運んだそのライブについてはそのタイミングでレビューも書いたが(※1)、実際のところ、ずとまよのステージは会場で客席から目撃しただけでは全貌を把握しきれない、ステージ上の仕掛けやメッセージやメタファーが詰め込められている。なので、通常のライブ映像作品需要の主たる目的である「あの感動をもう一度」的なニーズだけではない、「答え合わせ」的な価値がそこに思いっきりのっかっているのだ。もちろん、ライブで「一回だけじゃわからないもの」をそのまま全身で受け止めるのも尊いことだが、やはりファンならばそこにクリエイターが込めた想いや趣向をできるだけ正確に知りたいもの。『ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」』はその欲求を完璧に満たしてくれる。

ずっと真夜中でいいのに。『JK BOMBER』(from ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」) ZUTOMAYO – JK BOMBER

 特に初回限定盤の「4月17日公演」に収録された特別副音声「ACAね ライブ反省会 ソロ」では、「あの時にどうして声を詰まらせたのか?」という2日目の現場に居合わせたオーディエンスならば誰もが気になっていたことの理由から、ステージセットの様相がガラリと変わって1日目と2日目の間に「100年間の時を経ていた」こと、そしてACAねの衣装に込められていたコンセプトなどが語られていて、作品を通して初めて気づかされたことも多かった。また、その音源やミュージックビデオやステージを通してこれまでもファンには伝わっていたことだとは思うが、ずとまよの音楽の根底に「孤独感」や「怒り」があることがACAねの肉声で語られていることも貴重だろう。

ずっと真夜中でいいのに。『あいつら全員同窓会』(from ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」) ZUTOMAYO – Inside Joke

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