石原夏織、アーティスト活動を通して強くなった自分 2作同時発売シングルでは対照的な表現に挑戦

 石原夏織が、9thシングル『夢想的クロニクル』と10thシングル『Abracada-Boo』を8月3日に同時リリースした。TVアニメ『異世界薬局』OP主題歌の「夢想的クロニクル」と自身も出演するTVアニメ『金装のヴェルメイユ』OP主題歌の「Abracada-Boo」は、サウンドや曲調、アートワークに至るまで対照的なナンバー。2作を通じてアーティスト・石原夏織の表現力の幅を感じることができる仕上がりとなっている。

 4年間のアーティスト活動の中で、様々な試練を乗り越えながらも自分らしさを見つけつつあるという石原。声優とアーティスト、それぞれのフィールドで学んだものをフィードバックしながら前に進む彼女の今をお届けする。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

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アーティスト活動5年目に突入、歌の表現で見つけた“らしさ”

――石原さんは今年の3月でアーティストデビューから丸4年を迎えました。5年目に突入した今、その時間を振り返るといかがですか?

石原夏織(以下、石原):私は以前、グループで音楽活動をしていたことがあったので、ソロデビューした当初はすべてを1人でこなしていくことの難しさを感じていました。ただ同時に、自分らしい表現をより追求できるようにもなったので、すごく充実した時間を過ごしています。いろいろな試練を頑張って乗り越えてきたことで、自分自身をちゃんと認めてあげられるようになったと思います。1人の人間として、内面が強くなったんじゃないかなと。

――これまでの活動を通して見出した自分らしさとはどんなものだと思います?

石原:私は普段けっこうマイペースなんですけど、ファンの方からは「歌になると一瞬で人が変わるから、そこがいい」と言っていただけるようになって。

――歌っているときと普段の表情にギャップがあるわけですね。

石原:はい。意識的に違いを出しているわけではなく、歌う際には曲に引っ張られて表情が自然に変わるんです。そこをいいと言ってくださる方が増えたことで、そのギャップを自分の個性のひとつにすることができた気がします。ノロノロしゃべる自分も好きになれたというか(笑)。

――では、歌における表現の“らしさ”というと?

石原:歌に関しては、すごくまっすぐだと自分では思っていて。声色によって表現はいろいろ変化するんですけど、例えばダークな曲であっても、どこかしらにまっすぐな純真さみたいなものはにじみ出ていると思うんです。いろいろな曲調に挑戦して、それにマッチした歌声を出せるようなアーティストになりたい気持ちは強いですけど、これまでの経験からすると壮大で神聖な雰囲気のあるバラードが一番、石原夏織らしさを出せるような気がしています。先日のライブ(今年3月開催の『石原夏織 LIVE 2022「Starcast」』)では、ゆったりしたアコースティックスタイルで歌ったことにより、今の自分にはテンポの遅い曲が合うんだなっていう発見がありました。

――活動を重ねる中で得意な曲調がより明確になってきたと。

石原:そうですね。活動を2、3年続けたくらいのタイミングで徐々に見えてきた実感がありました。

――見つけた自分らしさに縛られすぎず、表現の幅を広げていきたい思いも強いわけですね。

石原:そうですね。そのほうが楽しいです。挑戦してみたことで、「あ、意外とこういう曲も合うかも」と思うこともけっこう多いですから。なるべくいろんな楽曲に挑戦して、どんどん寄り添っていきたいです。

――石原さんはダンスが得意なので、アップテンポのダンスナンバーもすごく似合いますが。

石原:今までは自分でもそう思っていたんです。普段聴いている音楽もK-POPのようなダンスナンバーが多いですし、アップテンポな曲ばかり歌っていたから歌い慣れていたところがあったので。でも、ダンサブルな曲を歌う場合は、自分の声を楽器のように扱う感覚だったりするのですが、バラードのような曲の場合は、歌詞に込められたフレーズのニュアンスをくみ取りつつ、感情を声にのせて世界観を描き出していく。それが自分としてはおもしろいし、案外得意だということに気づきました。

――武器になる表現のチャンネルが増えたということなんでしょうね。

石原:はい。そういった武器はこれからも増やしていきたいので、最近は自宅でも幅広くいろんなジャンルの曲を聴くようになりました。

――物語を紡ぐように歌うスタイルは、声優として活動にリンクする部分かもしれないですね。

石原:それは本当にそうだと思います。声優として台本から物語を読み解いていくことを頑張り続けてきた結果、歌詞から情景を感じ取るのが上手くなったところがあるのではと思います。さらに、例えば悲しい曲では、自分の中にあるどんな声色をチョイスしていくかを考えるんですけど、それは声優のお仕事とすごく近い感覚でもあって。声優とアーティスト、それぞれのフィールドで学んだものをフィードバックし合える環境は自分にとってものすごくありがたいことだなと思います。

――今、手に入れたいと思っている歌の表現は何かありますか?

石原:もっともっと声の質感をいろいろ変えられるようになりたいです。そうすればきっと表現の幅がさらに広がるはずだと思うので。あとはフェイクをもっとかっこよくできるようになりたいです。バラードの間奏でいろんなフェイクが織り交ぜられたらいいですよね。たくさんの技術を身につけたら、ゆくゆくはグルーヴ感のあるR&Bに挑戦してみたいです。憧れますね!

――現状に満足せず、貪欲に新しい可能性を追い求めていくのも石原さんの大きな魅力ですね。

石原:この4年の活動でいろんな体験をさせていただきました。自分では自信のなかったことでも、ファンの方や周囲の人たちからのあたたかい言葉が私に勇気をくれるんです。そういったことの繰り返しで、自分を肯定してあげられるようにもなったんだと思います。どんな挑戦に対しても「なんだかいけそうな気がする!」と思えるようになったのは、自分でも強みだなって思っています。

人は過去の後悔があるからこそ強く前へ進んでいける

――そんな石原さんから2枚のシングルが同時に届けられることになりました。9thシングル『夢想的クロニクル』は白、10thシングル『Abracada-Boo』は黒と、アートワークが対照的になっているのが印象的ですね。

石原:制作の流れ的には、まず10枚目の「Abracada-Boo」から取り掛かったんです。この曲が主題歌になっているTVアニメ『金装のヴェルメイユ』は私も声優としてかかわらせていただいている作品ですし、曲調的にもこれまで自分が歌ってきたかっこいい系の路線で行こうとすぐに決まったんです。当初は2枚のシングルを対比させるつもりもなかったんですけど、その後「夢想的クロニクル」が爽やかな方向の楽曲になることが決まったので、結果的にいい見せ方ができたかなと思っています。

――ではそれぞれ曲のお話を伺いましょう。9thシングルの表題曲「夢想的クロニクル」はTVアニメ『異世界薬局』のオープニングテーマになっていますね。

石原:爽やか路線に進むことはまず決まっていたのですが、作品内で主人公たちが悩みや後悔を抱えている様子も描かれているので、明るさだけでなく、そこに切なさや苦しさを加えていった感じです。自分の曲としてここまでネガティブなワードが入ったものは珍しいんですけど、最終的にはちゃんと前を向いたメッセージになっているので、新しいタイプの、ちょっと人間臭さのある曲になったかなと思っています。

――歌詞で特に響いたラインってありましたか?

石原:サビにある〈あの日の記憶が 刺さってるみたいだ〉という1行がすごく気に入っています。いろんな受け取り方があるとは思うんですけど、私は心の中に残っている過去の後悔を持って今を乗り越えていくというメッセージだと受け取りました。何かしらの壁にぶつかってしまったとき、過去の後悔があるからこそ強く前へ進んでいけるんじゃないかなって。私自身、そうやって活動を続けてきたからこそ、「わかる!」って思いました。今後何かの壁にぶつかる瞬間が来たとしたら、この曲を聴くことでちゃんと前を向けるんじゃないかなと思います。

――ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?

石原:〈見つめている〉〈願っている〉〈泣きたくなる〉〈苦しんでる〉……と韻を踏んでいる歌詞が多いので、歌っているとちょっと混乱してしまうこともありました。それぞれのフレーズに合わせた感情をのせながら、細かく色をつけていくのも難しかったですけど、そこは自分にとっての新鮮な挑戦にもなりました。あとはBメロでグッと落とした表情を、サビで一気に開放していくことにもこだわりました。サビは青空をイメージしながら、伸びやかに楽しく歌うことができたと思います。

――MVでは屋外で美しく舞っている石原さんを見ることができます。屋内のシーンとのコントラストで物語性を感じさせる内容でもありますよね。

石原:はい。外で踊るシーンはとっても気持ちよかったです。撮影の日は雨予報だったんですけど、あのシーンを撮るときは晴れ渡っていて。サビのフレーズにマッチした映像になったと思います。私が小説家を演じている屋内のシーンにもぜひ注目して欲しいですね。監督さんはソロデビューシングルの「Blooming Flower」や、それ以前の活動のときにもお世話になっていた方なんですよ。久しぶりにご一緒したところ、「前よりも動きや表情が自然でいいね」とおっしゃっていただけて。それがすごくうれしかったです。

石原夏織 "夢想的クロニクル" Music Video

――9thシングルのカップリングには「マジックマーチ」という楽しいナンバーも収録されています。

石原:この曲は私のリクエストで渡辺翔さんに作っていただきました。今この瞬間が1番幸せというテーマの元、私がファンのみなさんに思っていることが詰め込まれているので、それがまっすぐ届いてくれたらうれしいです。みなさんにとっての大切な人を想像しながら聴いてもらってもいいかなって思っています。マーチっぽくて、どこかちょっと懐かしいメロディやサウンドがすごく気に入っています。

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