Charaが振り返る、デビュー30周年オーケストラコンサート これまでの軌跡を辿るような公演に
歌い直したり、見直したり、改めて交流したりするのが大切
——3曲目の「花の夢」もデヴィッド・モーションのアレンジでした。
Chara:Chara史上一番聴いている人が多いであろう5thアルバム『Junior Sweet』に入ってるけど、A面が「やさしい気持ち」だとしたら、「花の夢」はB面、裏Charaだね。昔から、よくB面に本人らしい曲が入るっていう話があるけど、すごくCharaらしいアレンジ。今、全然違う曲だけど、ランゲの「花の歌」を思い出した。クラシックピアノをやってたんだけど、すごく好きで、小学生の時によく弾いてたなと思って。元のアレンジも好きだったけど、今回は本当にクラシックのアレンジで聴きたいと思って。そしたら、山下先生から素敵なデモが届いて。一聴して、これは素晴らしい! って。憂いというか、悲しみの度合いがすごくピュアだし、全力で演奏しない強さみたいな、音の地平線が美しくできていて気に入ってるアレンジのひとつです。
——「花の夢」と「しましまのバンビ」はフルートやハープと歌のアンサンブルにぜひ注目してほしいですね。
Chara:そうだね。ハープを結構、前に出したいなと思ってて。「しましまのバンビ」はテイ・トウワさんがサウンドプロデュースしてくれたんだけど、元の曲は2番からソプラノサックスやフルートの音が混じってるサンプリングだったのね。それを東京フィルのみんなで生でやって。2番で盛り上がるところが華やかで可愛くて、ワクワクするポイントだったな。最後、アレンジでブレイクして、〈あたしをみてよ〉ってやりたいんだよねって相談して。そこはやっぱり、マエストロと顔を合わせないといけない。そういうのが楽しかったよね。バンドとやってるのと同じというか。オーケストラではたくさんはないかもしれないけど、できるだけCharaらしいところを2部には特に入れていって、だんだん知らないうちにグルーヴィーな感じが増していくステージになるといいなっていう構成にしたんだよね。
——ー観客としては、すでに1部の2曲目「Break These Chain」からクラップしそうになり、なんとか手を止めて聴いてましたよ。
Chara:本当はきっとクラップしていいんだよね。私、クラシックのコンサートそんなにたくさん行ったことはないけど、なんか緊張しない?
——緊張しました。体も揺らしちゃいけないのかなと思ったりして。
Chara:でも、緊張しにいくんだよね、たぶん。大人になっていくと、滅多に緊張しないでしょ。そういう緊張する場面はとても大事だし、集中して自分の世界に入り込んで、周りに人がいるのがわからなくなってくる感じもいいなって思う。
——1部はだんだん緊張を緩めていくような流れにもなっていました。最後はロマンチックな「月と甘い涙」で、楽器がどんどん増えていって、大団円のように締めくくって。
Chara:最後、すごく良かったと思う。どんどんデカくなっていって、クラシックっぽく終わって。その前の8小節が超かっこよかったね。いつもはバンドに「砂漠を旅しているお姫様がゾウさんに乗って、月夜の夜にお嫁に行くところなのよ」って説明していて。低音がゾウさんの歩みというイメージね。でも、今回は「かぐや姫に大きな円盤が迎えにきてくれた」っていう説明をさせてもらったかも。大きな円盤に乗って、お嫁に行ったんだなって。
——月に帰っていきましたね。2部はオーケストラもよりダイナミックになっていったようでした。
Chara:そうだね。「Junior Sweet」はChara史上一番売れたアルバムのタイトル曲だけど、シングルではないんだよね。でも、ライブで育ってきた曲で、最近のライブでも必ずと言っていいほど入っていて。今回のアレンジはジャズフレーバーがあって、低音の使い方も素敵だったね。遠くにバート・バカラックがいるような雰囲気の素敵なアレンジでした。
——「あたしなんで抱きしめたいんだろう?」ではクラップも沸き起こってました。
Chara:東京公演では説明するの忘れちゃったんだけど、みんなやってくれてたね。最後にピアノと私とコーラスの稲泉りんちゃんの3人で8〜16小節遊んで終わりたいって言って。あそこも良かったですね。
——だんだんCharaさんのいつものライブのような雰囲気になっていって。「Happy Toy」では、観客だけでなく、オケの皆さんもクラップしていました。ステージ上ではどんな感覚だったでしょうか。
Chara:良かったよね。後半は私がやりたい世界がだいぶできてたなって思うかな。
——東京では3度のカーテンコールが起きました。スタンディングオベーションを受けた気持ちを聞かせてください。
Chara:私、最初はわからなくて。舞台監督さんに「Charaさんもう一度」って言われて。こんなに何回もやるの? 面白いなと思いながら(笑)、3回も出ちゃいましたね。
——アンコールで1991年のデビュー曲「Heaven」を歌いました。どんなことを感じながら歌っていましたか。
Chara:デビュー当時は先のことは考えてなかったんですよね。ただワクワクだけがあった。自分の仕事がCharaになったんだっていう。自己満足で、認める人がいない世界から、ファンの人が必要としてくれたり、なにかの役に立つことができる仕事を持つことができた。若かったこともあるけど、当時はもっとレコーディングしたい、もっと経験したい、もっと色々見てみたいっていうことがたくさんあって。今は、自分に必要な曲は何かがわかるし、歳を重ねていっても歌っていく曲が欲しいなって感じてて。誰とセッションしても、いわゆるCharaっぽい、いい感じのものは落とし込めると思うけど、人生を折り返すとみんないい意味で頑固さが出てくるでしょ。それが自分の特性を守ったりすることになると思うんだけど、そういう努力を改めてしよう! って先週思いました(笑)。私は私らしく、自分発信でやっていこうかなとシフトを切り替えてるところですね。
——新曲も聴きたいし、ライブも観たいです。
Chara:レーベルをコロムビアさんに移籍したばかりだから時間の使い方の様子を見ていたんですけど、やっぱり私らしくクリエイティブな現場にしたいなと。新作を秋に出して、来年に久しぶりにオリジナルアルバムを出したいなと思ってますね。あとは、実は弾き語りで、1stアルバム『Sweet』の配信ライブをモバイルファンサイト限定でやったんですよ。30周年だし、「全曲歌っちゃうよ」って宣言してたから、ちょっとずつやろうと思ってて。改めて自分で歌ってみて気づくことも多くて。今回の「片想い」も久しく歌ってなかったのね。この曲は自分で作ったんだけど、難しいんだよね。作曲の時は、「このメロディがいいな」と思って書いてるけど、実際に歌うと自分にはきついピッチだったりして。今回はそういう曲も、企画の中で歌わせてもらって。「片想い」も良かったから、まだまだ自分で見逃している曲があるんじゃないかと思ったんですね。今この機会に確かめないと、もう一生確かめないかもしれないから、そういう意味では、改めて今までに作ってきた曲とか、交友関係も含めて、1回歌い直したり、見直したり、改めて交流したりするのが大切だなと思ってますね。
■番組情報
『billboard classics Chara 30th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2022 - Chara's Time Machine –』
7月30日(土)午後6:00 [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※放送終了後~2週間アーカイブ配信あり
収録日:2022年4月15日
収録場所:東京 Bunkamuraオーチャードホール
※同番組はWOWOWオンデマンドの無料トライアル対象外
■番組サイト
https://www.wowow.co.jp/detail/180442/001