DOBERMAN INFINITY、不屈の精神で届けるオールラウンドな楽曲群 『LOST+FOUND』パッケージ盤の聴きどころを解説

 DOBERMAN INFINITYの最新アルバム『LOST+FOUND』の発売が告知された際、そこに記載された数字に驚かされた。といっても前作『OFF ROAD』から約4年3カ月ぶりのオリジナルアルバムという点は自明であり、感慨こそあれ驚きは少ない。注目すべきはその内容だ。今作は収録曲順と曲数の大きく異なる2種が別々にリリースされるのだが、7月6日発売のパッケージ盤には新曲6曲を含む全12曲、そして7月20日に配信される配信限定完全盤には新曲12曲を含む全24曲が収録されるというのだ。

 また、公式YouTubeでは10曲の新作MVが公開される旨も発表されており、現在進行形で続々と新しい動画がアップされている。

 前作から今までにもコンスタントに新曲が発表されてきた上でこの内容とは、大盤振る舞いと言って過言ではない。ひとまず本稿では後発の配信限定完全盤や、その後のツアーについても想像を膨らませつつ、7月6日に発売されたパッケージ盤について取り上げたい。

 1曲目は「We are the one」から始まる。この曲と10曲目「ずっと」は、収録曲の中では世に出てから最も長い時間が経過しており、それぞれすでにアンセムとして定着している。衒いなくひたむきに綴られる詞と歌声が胸に響くバラードだ。

DOBERMAN INFINITY「We are the one」MV ( AL「LOST+FOUND」収録)

 そこから続く、無骨なキック音が連打される冒頭4小節のインパクトで空気を一変させる2曲目は、新曲「I am Who I am」。ノンストップで展開されるマイクリレーが小気味よく、また終盤のエレクトロニックな展開も新鮮。フラストレーションの塊のような詞が逆説的な痛快さを感じさせる点も面白い。

DOBERMAN INFINITY「I am Who I am」MV (AL「LOST+FOUND」収録)

 その後バラードが2曲続く。新曲「キミワズライ」は艶やかでスパニッシュなギターの音色が印象的なミディアムナンバー。エゴイスティックな心情を繊細なフロウの変化とテンポの高まりで表現しており、葛藤の余韻を残すような締め括り方も心地よい。4曲目は昨年8月のシングル表題曲であったバラード「夏化粧」。円熟味のある歌声と折々で鳴る“時計の針の音”が肝で、過去の幻影を眺めるような寂寥感が演出されている。

DOBERMAN INFINITY「キミワズライ」MV (AL「LOST+FOUND」収録)
DOBERMAN INFINITY「夏化粧」MV (AL「LOST+FOUND」収録)

 さらに空気を変え、ソカビートとエレクトロサウンドが爽やかに調和した新曲「FLAMMABLE」と、アニメ『デュエル・マスターズ キング!』(テレビ東京系)のオープニング曲であったロックチューン「Updating Life」。これらはライブ会場でタオルを回して盛り上がる景色がありありと目に浮かぶ2曲だ。

DOBERMAN INFINITY「Updating Life」Special Lyric Video (AL「LOST+FOUND」収録)

 7曲目は新曲「Backstage Freestyle」。唸るようなベースと歯切れの良い歪みギターがクールなトラックは、2021年にドレイクのアルバムにも参加したジャマイカのプロデューサー J.L.L.との共作。そのギャングスタな意匠に、思わず前身であるDOBERMAN INCを想起してしまうが、P-CHOの〈16でラップ 履歴書にINC/O-Townで揉まれやられ 貯めたマイレージ〉や、「花束とマイク~Contract Killer」を連想させるGSの〈花束にマイクを刺して〉などのリリックからして、彼ら自身も少なからず意識する部分があったようだ。音に浸りつつ、体を揺らすようなライブ体験ができそうな一曲となっている。

DOBERMAN INFINITY「Backstage Freestyle」MV (AL「LOST+FOUND」収録)

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