小袋成彬、優しく洗練されたサウンドが響いた極上のライブ空間 約3年半ぶりのジャパンツアー、初日レポート

小袋成彬『Melodies Japan Tour』初日レポ

 小袋成彬のジャパンツアー『Nariaki Obukuro with Melodies International Japan Tour』が6月29日、KT Zepp Yokohama公演にてスタートした。今回の“来日”ツアーは自身最大規模。横浜を皮切りに今後、大阪、岡山、愛知、東京、福岡で公演を行っていく。

 開場とともにフロアに足を運ぶと、本人によるDJで観客を迎えるという嬉しいサプライズ。2018年に1stアルバム『分離派の夏』でデビューし、その後2019年に拠点をロンドンに移した小袋の海外仕込みの鋭いセンスが会場に響き渡った。環境を変えたことで、彼の音楽性にも変化が訪れている。同年に発表した2ndアルバム『Piercing』では、音そのものへの強い意識が感じ取れた。それは今回のDJでの選曲にも滲み出ていたように感じる。

 1970年代から活動していたイギリスのファンクバンド Cymandeから、ジャズ奏者のユセフ・ラティーフや、電子音楽黎明期の女性作家 ローリー・シュピーゲルといった個性的な音楽家の作品で繋げていく。徐々にディープかつ強靭なハウスミュージックへと遷移していくのだが、音粒や質感には統一感があり、音像へのこだわりを感じ取れた。時代や国境、ジャンルにとらわれない縦横無尽な選曲の中にも、小袋の感性が光っている。会場からは時おり歓声が上がり、期待感が着々と増していく。

 約1時間DJを続けたところでステージにメンバーが登場。間を空けずに1曲目「Night Out」が始まった。本人の顔もおぼろげに見える程度のかすかな照明とともに、静かな空間の中で小袋とコーラス3人による複層的な歌声のアンサンブルが轟く。

 間髪を入れずに「Rally」へ突入。前半のDJタイムで温まった会場の予熱が、この曲のハウスビートによって再燃。オーディエンスは終始身体を揺らしている。

 続いて披露したのは「New kids」と「Route」。ラップシーン(のそのアティチュードやプロダクト)への強い意識が生んだと思われるこの2つの楽曲では、小袋のなめらか、かつパンチの効いたライミングを堪能できた。バックDJはAru-2、唯一生演奏のベースがトラックの世界観と橋渡しするようにグルーヴを紡いでいく。変則的ながらも、このコンビネーションは抜群だ。

 歌い終えると「みなさん調子どうですか」と一言。そして「(自分に)こんなにファンがいたんですね」と照れ臭そうにコメントすると、観客も大きな拍手で応えていた。

 次に歌ったのは「Strides」。昨年発表した同名のアルバムからの一曲だ。そこから「Formula」「Parallax」と立て続けに歌唱。緻密な音の配置と繊細なタッチで紡がれるリズムとメロディの芸術とでもいうべきか、ソフィスティケイトされたサウンドプロダクションに思わず舌を巻く。これこそロンドンに住んでいる彼だからこそ鳴らせる音だろう。そして、コロナ禍に大量の音楽を摂取してたどり着いたものがこの音空間であるということも非常に興味深い。官能的で色気のある彼の歌声も印象深い。ソフトなピアノの音色や、電子音の波に非常にマッチするのだ。

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