RIRI×KEIJU×小袋成彬「Summertime」が示す、新たなJ-POPのあり方 3つのポイントから解説
日本のポップミュージックに新しい風が吹いている。新しいスタイルが、今までとは違うルールが、J-POPのあり方をアップデートしようとしている。RIRI、KEIJU、小袋成彬による資生堂「アネッサ」CMソング「Summertime」を聴いて、まず感じたのがそういうことだった。
ポップミュージックが面白いのは、わかりやすく、親しみやすいものだけが、すなわち大衆性とイコールではない、というところ。先鋭的なサウンド、まだ誰も聴いたことのない音楽が、新しい共感の輪を広げていく。その現象が、結果として時代を形作っていく。この曲が、そういう象徴になる予感がした。
では、この曲の何が“新しい”のか。そういう観点からこの曲の魅力をいくつかのポイントにわけて解説していきたい。
まず1つ目は、「トラックメイカー×シンガー×ラッパー」のコラボレーションという制作スタイルと、サウンド自体の革新性だ。プロデュースを手掛けたのは小袋成彬。「アネッサ」CMのクリエイティブディレクターからオファーを受けた彼のアイデアでこのコラボが実現した。
星野源、サカナクション、ぼくのりりっくのぼうよみ、Nulbarichなど、これまで数々のアーティストを起用しヒット曲を生んできた「アネッサ」CMだが、こうした形でスペシャルユニットが結成されるのは初めてのことだ。当初は小袋自身が歌うことを打診されていたが「華がある二人が歌ったほうがより作品が素晴らしいものになる」とRIRIとKEIJUに声をかけ、プロジェクトが進んでいった。
「とにかく、みなさんが聴いたことがないようなものを作りたい、というのが最初の発想の始まりでした」
オフィシャルインタビューで、小袋はこう語っている。
もちろん、コラボやフィーチャリングという方法論自体はJ-POPのシーンにおいても珍しいものではない。ただ、この曲のポイントは「作品ありき」という点にある。RIRIもKEIJUも、関係性ではなく、あくまで曲のイメージのために起用された。
だからこそ、弱冠19歳にしてワールドワイドに支持を広げるRIRIの類まれなる歌唱力、そして今の東京のヒップホップシーンを象徴するクルーであるKANDYTOWNのラッパー・KEIJUの存在感が必要だったのだろう。
ボーカルチョップの手法を取り入れサビの部分で大胆に声をエディットするスタイルもCMソングとしてはかなり挑戦的だが、二人の声が持つポップ性のおかげで、一度聴けばすぐに馴染むものになっている。
「思った以上に上手くハマったなと思いました」と、小袋は語っている。