BUMP OF CHICKEN、「クロノスタシス」がロングヒット記録 リスナーを開拓し続ける攻めの姿勢
最初のドラムのキック音が鳴るまでたっぷり30秒以上、ギターやシンセといった上物のサウンドだけで奏でられる「クロノスタシス」の導入部は、音の隙間と耳当たりの柔らかさが好まれる、現代のグローバルなポップミュージックのトレンドに沿ったもの。バンドというフォーマットでここまで振り切るのは、これだけ長いキャリアを持つバンドならばエゴが邪魔しそうなものだが、BUMP OF CHICKENにはそれがない。さらに、最初のコーラスパートに入ってからもバンドのグルーヴは平熱をキープし続け、メロディの起伏よりもテクスチャーの変化を強調しながら、中盤で音数を極端に減らすなどの今風のフックを入れつつ、サウンドのレイヤーが丁寧に重ねられていく。
重要なのは、「クロノスタシス」がこのように音の空間や奥行を重視した、ある意味、エレクトロニックミュージック的と言える楽曲の構造を持ちながらも、そこでBUMP OF CHICKENらしさは何一つ損なわれていないことだ。それは、気がつけば5分40秒という(昨今のポップミュージックの基準からするとかなり長尺の)時間があっという間に通り過ぎていくこと、そして通り過ぎた後に残るのがリリックの研ぎ澄まされた言葉の力であるということも示している。時代を味方につけるというオープンな姿勢と、時代の風化に耐え得る音楽と言葉の普遍性、その二つを現在これだけバランス良く実現しているバンドはなかなかいない。
気がつけば、ヒットチャートで「クロノスタシス」と並んでいる曲のアーティストの多くは、BUMP OF CHICKENのような「90年代デビュー組」どころか「00年代デビュー組」ですらない、2010年代以降にデビューしたアーティストばかりだ。2年以上に及んだコロナ禍の時期を経て、音楽シーンの変化のスピードが加速していることをライブの現場などで日々意識しているのは自分だけではないだろう(もっとも、それまで日本の音楽シーンの変化のスピードが遅すぎたのも事実だが)。そんな状況にあって、2022年のBUMP OF CHICKENが第一線のバンドであり続け、新しい世代のリスナーを獲得し続けている理由が、「クロノスタシス」にはしっかりと刻まれている。