櫻坂46、渡邉理佐卒業コンサートはグループのターニングポイントに ライブの“見せ方”から感じた変化

 渡邉理佐が誰もが認める「謙虚、優しさ、絆」の人だったことは、間違いない事実だ。そして、その事実を櫻坂46卒業に向けた数々の活動や、5月21、22日に国立代々木競技場第一体育館で開催された自身の卒業コンサートを通じて再認識できたことは、多くのファンにとって、そして櫻坂46のメンバーにとっても非常に大きな収穫だったことだろう。

 今回の卒業コンサートは、櫻坂46という活動2年目のグループにとって大きなターニングポイントになるような内容だった。それは、前身の欅坂46時代から約7年にわたりグループの“顔”として活躍してきた渡邉の卒業という意味も含むが、何よりもライブの見せ方としていくつか変化を感じさせるトピックが用意されていたからだ。

 まず、欅坂46時代から現在に至るまで、このグループが卒業を軸にしたライブを行ったのは初めてという事実。これまでは欅坂46時代に長濱ねるが卒業する際に開催したイベント『ありがとうをめいっぱい伝える日』(2019年7月30日)があった程度で、それも純粋なライブとは異なる内容だった。昨年12月9、10日に日本武道館で行われた『櫻坂46 1st YEAR ANNIVERSARY LIVE』では、10日公演のアンコールで1期生の守屋茜、渡辺梨加の卒業セレモニーが行われたが、これもデビュー1周年記念ライブの中の1ブロックというイメージで、ライブ全体が卒業モードで制作されたものではない(※1)。特に、欅坂46時代から現在に至るまで一貫して、非常にコンセプチュアルなライブを展開してきた彼女たちの場合、仮に卒業ライブを開くとしてどんな内容になるのか、開催決定当初は正直まったく想像がつかないところもあった。

 そんな中、5月17日刊行の『櫻坂46 渡邉理佐 卒業メモリアルブック』に関連したインタビューで、渡邉は卒業コンサートに対して自ら意見を出していることを明かし、キャプテンの菅井友香も自身の連載『櫻坂46 菅井友香 いつも凛々しく力強く』にて「『こんなことをやってみたい』と、理佐とも一緒に話して計画していることもあるので、ワクワクもしています」と発言(※2)。冠番組『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京)の5月16日放送回「渡邉理佐 卒業お祝いロケ!前半」では、欅坂46「二人セゾン」のMV撮影地を1期生とともに訪れている。こうしたヒントのピースが集まることで、きっと多くのBuddies(=櫻坂46ファン)は「欅坂46の楽曲も披露されるのでは?」と期待に胸膨らませていたのではないだろうか。

 以上のように筆者が気になった「櫻坂46としての“卒業ライブ”の見せ方」と「欅坂46時代の楽曲披露」の2点を踏まえつつ、本稿では22日公演を軸に、今回のライブで櫻坂46が見せた新たな側面について感想を述べたい。

 まず、コンセプチュアルな構成・演出に関しては、今回の『渡邉理佐 卒業コンサート』でも見事に踏襲されていた。彼女の卒業を大きなテーマに、曲間の演出含め非常に感傷的でエモーショナルに満ちたものを用意。オープニングの「Overture」では2015年から今日に至るまでの渡邉の軌跡を振り返る映像が用意され、大音量での「Overture」に続く水滴が川へと成長していく演出で示す静と動のコントラストも非常に見事なものだった。そこから「無言の宇宙」でライブが始まるという流れも素晴らしく、とてもドラマチックさに満ちたものだった。

 思えば、欅坂46時代から今日まで、彼女たちのライブは強さや激しさ、衝動性を重視した楽曲から始まることが多かった。渡邉のセンター曲からスタートすることを重視した演出とはいえ、こうしたゆったりとしたテンポの楽曲で、たおやかなパフォーマンスからライブをスタートさせることは、ある種の挑戦とも受け取れる。と同時に、こうした楽曲からライブを開始できるのも、現在の櫻坂46というグループだからこそ。このオープニングはグループにとって新たな武器にもなり得るのではないだろうか。

 また、ライブ全体を通して重厚さやアグレッシブさを全面に打ち出した楽曲は、22日において「Nobody's fault」と「流れ弾」程度にとどまっていたことも印象的だ。21日公演では「流れ弾」の代わりに「BAN」を披露したが、ライブの起爆剤にふさわしいシングル表題曲や、昨年の全国ツアーでオープニングを飾った「Dead end」をすべて組み込むのではなく、ライブのテーマに沿って必要なだけ採用するこの2日間のセットリストは、シングルを4枚発表して持ち曲が増えた現在だからできること。特に今回は櫻坂46“以外”の楽曲も多数含まれていたこともあり、渡邉のカラーに合わせた多様性の強いセットリストを表現できたのではないだろうか。

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