ヒトリエ、ゆーまおの鮮やかなソングライティングから生まれるポップネス バンドの中で急速に存在感を増す理由

 5月25日にリリースされるヒトリエのニューシングル『風、花』(表題曲の先行配信は4月30日にスタートしている)。TVアニメ『ダンス・ダンス・ダンスール』(TBS系)のエンディングテーマとして現在オンエア中のタイアップシングルであり、6月22日にリリースされる現体制2作目となるニューアルバム『PHARMACY』に向けた先行シングルという意味合いも持つ重要な作品だ。表題曲である「風、花」の作曲を手がけているのが、ドラムのゆーまおである。彼は今年1月に配信リリースされた「ステレオジュブナイル」の作曲も担当しており、シングル2作連続で彼の楽曲がリリースされるということになる。これは偶然かもしれないが、ヒトリエというバンドにとってかなり画期的なことだと思うのは筆者だけだろうか。

ゆーまお

 シノダ(Vo/Gt)、イガラシ(Ba)、ゆーまお(Dr)の3人体制でリスタートを切って以来、ヒトリエのソングライティングは一貫してフロントマンであるシノダが中心となって進んできた。昨年のアルバム『REAMP』、そしてその後にリリースされたシングル『3分29秒』も含めて、新体制ヒトリエの楽曲のほぼすべての作曲を担い、歌詞に至ってはすべて彼が書いている。それにはいろいろな理由や経緯があるのだろうし、実際に作曲経験という意味では彼に一日の長があった、というのも大きいのだろう。しかし、「ステレオジュブナイル」、そして今回の「風、花」を聴いて改めて思ったのは、そうした“現ヒトリエ”の在り方はあくまで過渡期的なものであり、おそらくこれから大きく変わっていくのだろうということだ。もうひとりのメンバーであるイガラシももちろんだが、その中でゆーまおというソングライターの存在はどんどん大きなものになっていくに違いない。

 ゆーまおがヒトリエで初めて書いた曲は、『REAMP』発売直前に先行配信され、アルバムのラストトラックとして収録された「YUBIKIRI」である。その「YUBIKIRI」を初めて聴いたときの感触は忘れられない。それ以前にリリースされていたシノダによる新体制初の楽曲「curved edge」とは正反対と言ってもいいポップさと人懐っこさを持った楽曲だったからだ。その印象はアルバムに収まったときにますます強まった。バンドを続けていくことの葛藤や喜びが率直に綴られたアルバムの中にあって、「YUBIKIRI」だけは唯一、リスナーやファンに向けたまっすぐなメッセージとして響いていた。メロディも、歌詞も、明快でストレート。歌詞については、ゆーまおからシノダに対して「なるべく若い子たちにも伝わるような言葉を書いて」(※1)というリクエストがあったらしいが、まさにその通りのものになっている。

ヒトリエ『YUBIKIRI』 / HITORIE - YUBIKIRI

 同様に、今年1月の配信シングル曲「ステレオジュブナイル」もまた、ヒトリエからリスナーへのメッセージソングとして受け取ることができるだろう。実際に〈最終回にしたくない〉〈33回転したいの半永久に〉(言うまでもなく〈33回転〉というのはアナログレコードの1分あたりの回転数だ)という歌詞は、何があろうとバンドを続けていくという意思表示だし、〈こんなん聴いてくれんのお前だけ〉というぶっきらぼうな最後のフレーズは、リスナーに対する信頼と愛情の表明だろう。この言葉は直接的には作詞者兼ボーカリストであるシノダのものだが、なぜこうした言葉が出てきたのかといえば、そこにはゆーまおの書いた楽曲がそもそも持っていたムードも少なからず影響していたのではないかと思う。

ヒトリエ 『ステレオジュブナイル』 / HITORIE - Stereo Juvenile

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