TENDOUJI×キュウソネコカミ ヤマサキセイヤ特別対談 オリジナリティを武器に獲得していった自らの居場所

TENDOUJI×キュウソ セイヤ特別対談

 TENDOUJIが5月から開催する対バンツアー『EASY PUNK PARK in West』初日公演(神戸 クラブ月世界)のゲストに、キュウソネコカミを迎える。オールジャンルなバンドとの共演を目指したという今回のツアーは、四星球、Helsinki Lambda Club、Track's、SPARK!!SOUND!!SHOW!!、bacho、初恋 from 突然少年、SHIMA、SIX LOUNGE、DENIMS、ナードマグネット、LOSTAGE、澤部渡(スカート)、imai(group_inou)、Hump Back、KUZIRAらが名を連ねる。今回は、TENDOUJI×キュウソネコカミの初対バンを記念して、TENDOUJIのアサノケンジ(Vo/Gt)とモリタナオヒコ(Vo/Gt)、キュウソネコカミのヤマサキセイヤ(Vo/Gt)による対談を行った。

 海外のオルタナシーンの系譜を受け継ぎ、メロディアスな英詞によるポップパンクを鳴らすTENDOUJIと、パンク/ニューウェイブのエッセンスをロックに落とし込み、歯に衣着せぬ歌詞で2010年代以降のロックシーンの人気者に上り詰めたキュウソネコカミ。表面的なスタンスを見ると、キャリアもジャンルも違う異色の対バンのように感じるかもしれないが、根底にあるルーツミュージックやバンドの美学を探ると、かなり似た者同士であることがわかった。対談の最後には、多様化する音楽シーンで、これからいかに戦っていくのかという話も聞いた。そんな2組の言葉から「居場所とは自分で作るものである」という信念が伝わればと思う。(秦理絵)

「やったことないバンドとチャレンジするツアーにしたかった」(アサノ)

ーーTENDOUJIのツアーで、キュウソネコカミとの対バンが発表されたとき、一瞬「異色かも?」と思ったんですけど、よく考えると「いや、意外と合うのかな?」みたいな、不思議な感想を抱いたんですよ。

アサノケンジ(以下、アサノ):ああ、そうですよね(笑)。バンド自体の世代が違うというか、俺らはバンドを始めたのが遅かったので、これまで一緒にやることもなくて。

ヤマサキセイヤ(以下、ヤマサキ):いつ始めたんですか?

アサノ:2014年だからーー。

モリタナオヒコ(以下、モリタ):俺らが28歳のときだったんですよ。

ーーTENDOUJIは遅咲きのバンドと言われてますからね。

ヤマサキ:あ、そうなんですね。今回ちゃんと喋るのが本当に初めてなんですよ。だから、もうたぶん何度も聞かれてるようなバンド結成のこととか聞いちゃいそうです。28歳で、なぜバンドを始めたのかとか、気になる。前身バンドとかあったんですか?

アサノ:ない(笑)。

ヤマサキ:なくて!? じゃあサラリーマンから一撃みたいな?

モリタ:本当にそうです。

ヤマサキ:えー、すげぇ!

モリタ:サラリーマンのときにキュウソのライブ、めっちゃ観てました。

ーーTENDOUJIがバンドを組んだころ、キュウソはメジャーデビューしてましたからね。

ヤマサキ:そっか。俺、TENDOUJIの後輩だと思ってたんですよ。

モリタ:いやいやいや。俺たちのほうが後輩ですよ。

ヤマサキ:でも年齢は1個上じゃん。

ーーそうやってキャリアと年齢で上下関係が変わるときって、どう接するんですか?

ヤマサキ:まあ、大阪の芸人的には芸歴ですけど、バンド界では時と場合によりますね。

アサノ:マジでそう(笑)。

モリタ:舐めてもらっていいですよ。俺ら、同期は年下が多いので、基本タメ口なんですよ。なので、セイヤくんには敬語でいきたいと思ってますけど。

ヤマサキ:いやいやいや、それは逆に周りに変な目で見られる(笑)。

TENDOUJI - Killing Heads (MV)

ーー(笑)。今回、ほぼほぼ初対面ということで、まずはTENDOUJIが今回のツアーでキュウソを呼びたいと思った理由から教えてください。

モリタ:ずっと一緒にやりたかったんですよ。俺らが(バンドを)始めた当初は、もう声をかけられるわけがないぐらいの感じだったんです。で、今回も「ダメ元で一応聞いてみたら?」みたいな感じで、ケンジからセイヤくんに連絡したら、快諾していただいて。

アサノ:ここ1~2年ぐらい、毎回ツアーをやるたびにキュウソを誘いたいなっていう話は出てたんだけど、「まだちょっと無理じゃない?」となってたよね。今回は神戸のクラブ月世界っていう雰囲気のあるハコでやれるから、派手にいきたいねっていうのもあったんです。

ヤマサキ:TwitterのDMで誘ってもらったんですよ。

モリタ:それってやっぱり珍しい?

ヤマサキ:そうね。最近は事務所に連絡が来て、そこから降りてくるブッキングが多いので。先にDMが来るっていう嬉しいやつでしたね。

アサノ:いつものツアーではわりと顔見知りのバンドを呼んでたんですけど、今回はやったことないバンドとチャレンジしたかったんです。だから、事務所を通すと気持ちが伝わりづらいかなと思って、そういう感じでオファーしました。

アサノケンジ

ーーセイヤさんはTENDOUJIのことはどんなふうに見てたんですか?

ヤマサキ:曲とかは聴いてました。また勢いのあるバンドが出てきたなって。フジロック(『FUJI ROCK FESTIVAL』)のライブ配信で観て、「うわ、楽しそうにライブをやるバンドだな」と思ってましたね。

アサノ:ラジオで新譜が出るたびに流してくれてたんですよ。

ヤマサキ:シンプルに音楽性が好みなんです。英詞が多いし、リフ系もあれば、ゆったり聴ける曲もあったりして。見た目もパンキッシュというか、派手だし、曲もかっこええし、人もよさそうだから、いつか仲良くなりたいなと思ってました。

ーーいまフジロックの話が出ましたけど、TENDOUJIは2018年に『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』に出演したり、Teenage Fanclubが来日したときのサポートを務めたり、初期から洋楽寄りの注目のされ方をしてましたよね。

ヤマサキ:『SXSW』出てるんですか?

モリタ:うん。キュウソも出る予定でしたよね(※2020年に出演予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により中止)。俺、めっちゃいいなと思ってたんですよ。

ヤマサキ:あれってやっぱり過酷なツアーなんですか?

アサノ:いや、全然。超楽しいよ(笑)。『SXSW』はテキサスの1カ所でやる街のサーキットイベントみたいな感じで、俺らはそれだけの出演だったんですよ。『Japan Nite US tour』(日本のバンドが多数出演する『SXSW』内のツアー)は、全米8都市くらい回るから、それは相当つらそうだったかな。

ヤマサキ:俺らはそっちも出ようとしてたんですけどね。

TENDOUJI - COCO (MV)

ーー残念でしたよね。TENDOUJIは組んだときから海外を視野に入れて活動したいっていうモチベーションだったんですか?

モリタ:理想はありましたよ、世界中どこでもライブできるようにって。でも、最初は何も考えてなかったです。どこでやりたいとかもなかったし。フェスだったら、フジロックに出られたらいいかなぐらいだったから、なりゆきのところも多いんです。海外はすごく刺激があるので、ずっと行き続けたいなと思ってます。今は難しいですけど。

ーーそれってセイヤさんから見てどうなんですか? キュウソって、どちらかと言うと、純邦ロックみたいなバンドとして認識されているじゃないですか。

ヤマサキセイヤ

ヤマサキ:羨ましいですよ。俺らも、実は海外のバンドを聴いて曲を作ってたので。

モリタ:絶対そうですよね。それは思ってました。

ヤマサキ:めちゃくちゃArctic Monkeysが好きで、The Strokesも大好きなんですけど、俺らがやってもいかんせんオシャレにならない。そのニュアンスが隠れてはいるんですけど、2~3歩進まないと、リスナーは俺らの洋楽テイストに気づいてくれないんです。歌詞とかパフォーマンスばっかり目立つように、自分でしてしまったので。TENDOUJIみたいにストレートに洋楽の現場でも戦えそうな音楽って、今でも憧れはありますね。

アサノ:ああ、嬉しい。

ヤマサキ:だから新譜が出るたびに自分のラジオとかで(TENDOUJIを)かけて、「俺はこっちが好きなんだぜ」っていうのを出してる。ファンに向けて「TENDOUJIみたいなのを聴け!」「俺がやりたかったのはこれだぞ」みたいな(笑)。

一同:あはははは!

ーー伝え方が遠回りだなあ(笑)。

アサノ:でも、俺らは俺らでライブをしたときに、キュウソの「ライブ楽しい!」みたいなパフォーマンスをバチッとやれるところに憧れがありますからね。

モリタ:最初、キュウソのライブ動画を観たとき、びっくりしましたもん。(発泡スチロールで作った)筋斗雲に乗っていて(笑)、本当にイカれた人たちなんだろうなって。衝撃でした。俺、結構昔の動画も観ていて、新宿MARZの映像が(YouTubeに)残ってるんですよ。

ヤマサキ:ああ、友達が撮ったやつだ。

モリタ:そのとき、まだ東京にそんなに来てない時期だったと思うんですけど。

ヤマサキ:年に1~2回かな、2011年ぐらい。

モリタ:俺、セイヤくんのMCでDQN(どきゅん)を知りましたから。「DQN怖い」ってMCで言ってて。

ヤマサキ:ヤンキーのことですね(笑)。

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