Mrs. GREEN APPLEはマイナスを肯定する 大森元貴の歌詞にみられる“ポジティブ変換力”とは
先日、映画『聖☆おにいさん THE MOVIE〜ホーリーメンVS悪魔軍団〜』が12月20日に全国公開されることが発表され、主題歌にMrs. GREEN APPLEの新曲「ビターバカンス」が決定した。本曲を主題歌として書き下ろした大森元貴(Vo/Gt)は、「ブッダとイエスの癒され日常から我々も学ぶものがあり、根を詰めがちな人々ですが少しでもホッと、肩の力が抜ける瞬間があるといいのだろうと。そういう1番大切なバカらしさみたいなものを曲にしてみました」「休んじゃえばいい! 現代人頑張りすぎだ!」とコメントを寄せ(※1)、“休みをとること”を肯定している。このように大森は、日常に追われるなかで見落としがちなネガティブな要素や感情を拾い上げ、歌詞に落とし込むのがとても上手い。ネガティブな要素に対する言葉選び、その配置の場所にも才能を感じられるのだ。そして、そんな要素を受け入れ肯定しているのも、大森の歌詞ならではの特徴である。大森の視点には、特有のポジティブ変換方程式のようなものがあるのではなかろうか。今回、Mrs. GREEN APPLEの歌詞にフォーカスし、そのポジティブ変換力について考えてみたい。
まずは「ビターバカンス」について。辛いことばかりではないということを「わかってる わかってる わかってる」と繰り返す歌詞が印象的だ。その後、息が詰まるような日々が続いたら「ちょっぴり休めばいい 休めばいい」、そして「休んじゃえばいい」と締めている。「わかってる」と「休めばいい」を連続して呼応させる手法で、肯定の言葉である「わかってる」を印象付け、「休んじゃえばいい」という提案を聴き手の現実に落とし込む。「休みをとる」ということに対する少し後ろめたい気持ちを「休んでいいんだ」というポジティブな感情に変換していると言えるだろう。
自問自答の吐露のような歌詞の描写から始まる「ナハトムジーク」は、自分と対峙することがいかに孤独で、痛みを伴い、そして大切であるかを教えてくれる1曲だ。大森にとっては、音楽と向き合うことが自分と対峙することなのだろう。だからこそ、ドイツ語で“夜の音楽”という意味を持つ「ナハトムジーク」というタイトルをつけたのだと思う。自問自答の末、弱音までも歌詞にしている本曲では、〈間違いばかりの今日をまず愛そうか〉ときっかけを作り、〈歩くのが疲れたの?/むしろ正常でしょう?/全て無駄に思えても/君は正しいんだよ〉と、相手に寄り添う言葉でその人自身を肯定している。この〈歩くのが疲れたの?/むしろ正常でしょう?〉というフレーズがあるからこそ、その後の肯定が聴く者にリアルに響くのだ。