RADWIMPSが歌う“巡り会うことの奇跡” 映画『余命10年』と地続きの物語を描いた主題歌「うるうびと」MVから紐解く
もともと和人というキャラクターは、藤井監督が映画のために一部の設定を変更したキャラクター。そこには、監督自身も反映されているという。その和人という青年が感じているもの、考えているもの、目には見えない心に抱えているものを、野田は「うるうびと」として歌う。この曲は撮影が始まる前、衣裳合わせの段階で、ある程度は形になっていたというのだから、やはり野田の脚本を読み解く力、キャラクターの心情を理解する力は半端ではない。彼のその力は一体どこから来るのか知りたくなり、RADWIMPSのMVを遡ってみた。公式チャンネルには、なんと194のビデオがアップされており、そのうち61がMVだ(3月中旬現在)。どれも超短編映画のような、2時間の映画をぎゅっと濃密にしたかのようなストーリーがある。もちろんMVの作家やディレクターが関わっているだろうが、RADWIMPSが映像を通して長年積み重ねてきたその歴史が、『余命10年』という映画音楽に繋がり、主題歌を含む30曲にたどり着いた。その繋がりも道のりも一つの物語に見えてくる。
最後に、この主題歌のタイトルについても考えてみたい。野田は、いつもタイトルは最後につけることが多いそうで、今回もそうだったと聞いている。「うるう」とは、4年に一度訪れる閏年を指す。地球が太陽を一周するには、正確には365.2422日かかり、その差を調整するために、4年に一度、2月29日がやって来る。野田はその一日を特別な一日、稀有な一日と捉え、和人にとっての茉莉の存在が、特別で稀有な存在であると繫げた。「一つの人生で、たった一人に巡り合える奇跡なのだということをタイトルでも言いたかった」と語っている(※2)。
〈「あなたは私がこの世界に 生きた意味でした」〉
「うるうびと」を締めくくるこの歌詞には、和人が生きる日々のなかで、彼が茉莉と過ごした時間を思い出すことで、茉莉も一緒にこの世界に生き続けていることを伝えているのではないか。と同時に、別れの先にあるものーー哀しさだけではない温かいものがあると思わせてくれるような、生きていく強さも感じる。自分にとっての生きる意味や強さを受け取れる歌と巡り逢えたことに感謝したい。
※1、2:https://wwws.warnerbros.co.jp/yomei10-movie/interview.html
■作品概要
RADWIMPS『余命10年 ~Original Soundtrack~』
配信中:ダウンロードはこちら
CD発売中 ¥3,300(税込)
<収録曲>
1. Opening of [余命10年]
2. 茉莉の現実
3. 7年後の五輪
4. タイムカプセル
5. 最初のバイバイ
6. 挫折
7. 戸惑い
8. 病室での吐露
9. 小さなはじまり
10. 時が止まって見えた
11. 重なる四季
12. 罪なき声
13. スカイツリーと私
14. 心の悲鳴
15. 茉莉の嘘
16. 二人の叫び
17. 和人の告白
18. 重ねる時間、残り時間
19. 大丈夫、じゃない
20. ゲレンデ
21. 重ねる二人
22. 行き止まり
23. キッチンの涙
24. お姉ちゃんがお姉ちゃんでいてくれて
25. 消せない、消えない
26. 茉莉の夢
27. 涙袋
28. 届いた声
29. 君が止まって見えた
30. うるうびと
■映画概要
『余命10年』
出演:小松菜奈、坂口健太郎
山田裕貴、奈緒、井口理 / 黒木華
田中哲司、原日出子、リリー・フランキー / 松重豊
原作:小坂流加「余命10年」(文芸社文庫NEO刊)
監督:藤井道人
脚本:岡田惠和 渡邉真子
音楽・主題歌:RADWIMPS「うるうびと」(Muzinto Records / EMI)
【映画公式サイト】yomei10-movie.jp
【映画公式ツイッター/インスタグラム/TikTok】 @yomei10movie #余命10年
【配給】ワーナー・ブラザース映画
【コピーライト】©2022映画「余命10年」製作委員会
【原作書影】文芸社文庫NEO刊