ENVii GABRIELLAが語り尽くす、『Metaphysica』完成までの経緯と深層に込められた思い

ENVii GABRIELLA『Metaphysica』を語り尽くす

終わりがあったから始まりがある

ーーでは最後に「Finally Found You」について聞かせてください。曲調としてはアルバムの最後に入っていそうなイメージだなと思ったのですが、どうしてこの曲が1曲目になったのでしょうか。

Takassy:1曲目にした理由って、考えれば考えるほどなんて言ったらいいか分からなくて。でも漠然と、やっぱりこの曲を1曲目にしたいっていうのが私の中であったんです。

HIDEKiSM:これ言っていいかしら? 今ふと思い出したんですが、Kamusちゃんが以前、当時付き合っていた彼と別れるタイミングがあって。私に相談というかグチを聞いてほしかったのか、電話をくれたことがあったんですよ。その時に、やっぱり終わりって始まりだったりするのかなっていうような話をして。

Kamus:したね。

HIDEKiSM:この「Finally」というのは、「ついに」とか「やっと」っていう意味合いだから、終わりがあったから始まりがあるって考えると、1曲目に持ってきて当然だったのかなという気もしました。

Takassy:あら上手いこと言ったわね。

Kamus:いいこと言うじゃん。

HIDEKiSM:私、今いいこと言ったよね(笑)。やっぱりメジャーの1stミニアルバム、初めてCDという盤になるという意味でも、「ついに」「やっと」みたいなニュアンスが含まれている気はしますよね。

Takassy:これは当時、特定の人に向けて書いた恋愛の曲で、割と個人的な歌詞だったんですよね。それから何年も経って、今回やっと、かっこよく言うとメロディが降りてきたので曲にして聴いてもらったら、私が歌詞を書いた時に意図していたところとは違う解釈がそれぞれにあって。でも、どの楽曲もそうだと思うんです。それが音楽の面白さだったりするので。私も、恋愛の曲として書いたからそういう風に聴いて! とは別に思わないし。

HIDEKiSM

ーーちなみにどういう解釈をされたのでしょう。

HIDEKiSM:友達や家族やファンの皆さんもそうだし、それこそ今の環境を「You」に置き換えるのであれば、やっとこの環境に出会えたっていう風にも取れますよね。

Takassy:セクシャリティというワードもあるから、私たちが同性同士の恋愛で知り合うのがすごく大変でやっと出会えたっていう風に取っていただいても大丈夫なんですが、仮に男女であっても、やっぱり好きになった人が自分と違う性別じゃないと巡り会えないわけですから、そのリスクというのは全人類が同じだけ抱えている。男女でもこの歌詞に当てはまるのなら、私はぜひウェディングソングとしても歌っていただきたいと思っています。HIDEKiSMには、そんな重すぎる結婚式は嫌だって言われましたけど(笑)。

ーーKamusさんの解釈はどうですか?

Kamus:私の解釈は恋愛ではなくて。もともと「あの人と出会ったから自分は今ここにいる」と思ったりするし、元カレとは別れても繋がりがあるタイプだったりするので、そういう関係性や繋がりみたいなことを考えながら「ありがたいな」みたいな感じになることがあるんですよ。で、夜な夜なそんな思いに耽ったりもするんですけど、この曲を聴いた時、久しぶりにその感覚になったというか。「あなた」がいたからここにいる、っていうその「あなた」が、いろんな人に向けての「あなた」だったんです。そういうこともあって、ちょっと友達に電話して昔話をしたりもしました。Takassyは恋愛の曲として書いたかもしれないけど、恋愛だけじゃなく、聴き手によっていろんな捉え方があると思いました。親友や家族、会社の人もそうだよなって。超ハッピーという曲ではないけど、素敵な曲だなって思いながら聴いてもらえたら嬉しいです。

Takassy:あと色味的に、この曲のイメージは白なんですよ。私の中では、真っ白。だから1曲目に持ってくるのが一番しっくりくるというか。よく映画とかで、死んで天国に行くみたいなシーンあるじゃないですか。天使か何かわからないけどカウンターにいて、死んで天国にやって来た人が列を作ってるような。

Kamus:あ、わかるわかる。

Takassy:ちょっとコミカルだったりするんだけど、ドラマの『私はラブ・リーガル』とかもそういう感じじゃん?

HIDEKiSM:うん、うん。

Takassy:この曲はそういう真っ白い部屋の、運命の相手をあてがわれる列に並んでる人がいて、この主人公は前に進んでいるはずなのに何故かずっと最後尾にいるという。それでやっと自分の番になった時に、運命の相手が目の前に座っててくれたっていうイメージなんです。だから、真っ白。これはあくまでも私のイメージですけどね。そこからの、真っ赤な「CABARET」がガッと来るみたいなコントラスト。そういう曲順も面白いかなって思ったんです。

Kamus

ーー私は3人が出会った瞬間、つまりENVii GABRIELLAのエピソードゼロみたいな解釈をしたので、アルバムのラストという印象を持ったのかもしれないです。

HIDEKiSM:あぁ、なるほど。

Takassy:昨年リリースした『ENGABEST』の本編最後が「Follow Me Home」なんですね。だから『ENGABEST』からの流れでこのアルバムに入ってくると、エンガブの流れがずっと繋がっているっていう感じにもなっています。

ーー「Follow Me Home」とこの「Finally Found You」だけは、歌詞の中で〈君〉という表現が使われているところにもTakassyさんの想いが込められているように感じました。

Takassy:「君」って素朴な感じがするじゃないですか。男性も女性も、どちらも使えるし。「あなた」になるとニュアンスが女性っぽくなったり、ちょっと格式が高くなっちゃう気がするんですが、「君」と書くことによって、目線が聴いている人と同じような感じになる印象があるんですよね。だからこういう「歌詞を聴いてください!」って声を大にして言う曲は、「君」にした方が皆さんも感情移入しやすいかなっていう意図はあります。

ーー相手を表す言葉ひとつで、曲のイメージまで変わってくるんですね。

Takassy:私たちは逆も難しくて、「私」って書くのも何か違うし、「僕」って書くのも違うし、みたいな感じなので、エンガブの曲の9割は一人称が出てこないんですよ。だから、歌詞を書くのが超大変なんです。「私は」って歌えないので、それをどうやって歌詞で表現していくかが毎回のテーマ。今後は「私」っていう曲も出てくるとは思うんですが、「僕」は出てこないかな(笑)。私たちの場合は一人称を決めてかかっちゃうとなんだか違和感が出てくるので、どういうところで、どう一人称を使い分けるかは今後の課題ではありますよね。

ーーでも一人称がないからこそ、イメージの幅が広がるっていう利点もありますしね。

Takassy:そうですね。よく言ってますが、カラオケで男の人も女の人も自由に「エンガブの曲が好きだ!」って言って歌ってほしいからというのもあります。

ーーいろんな解釈ができて、いろんな角度からENVii GABRIELLAの魅力に迫ることができるこのミニアルバム。タイトルの『Metaphysica』も素敵な意味と響きを持ったワードですね。

Takassy:それこそ候補には「Finally」とかもあったんですよ。安室(奈美恵)ちゃんが最後に出したアルバムのタイトルを私たちが初めに持って来たら超ウケるよね、なんて冗談ですけど(笑)。

HIDEKiSM:おそれ多過ぎるわ(笑)。

Takassy:そしたらHIDEKiSMがふと、何か意味のわかんない語感のやつがいいんじゃない、造語みたいなやつとかどう? って。メジャー1枚目だから「ENVii GABRIELLA」とか「ENGAB」でも良かったんですが、そういうのはフルアルバムの時に使いたいよねってことで、いろいろワードを探してここに行き着きました。

ーー初の東名阪ツアー『ENVii GABRIELLA TOUR2022〜THE CABARET〜』も楽しみです。

Kamus:『Metaphysica』を引っ提げてのライブになるので、新曲はもちろん楽しみにしていただきたいですね。あと、我々が今までやって来たライブのひとつが『THE CABARET』なので、それをタイトルに持って来たことにも意味があります。あの『THE CABARET』の世界観をどこまで出せるのか、『Metaphysica』というものを『THE CABARET』の中でどう表現するのかもぜひ楽しみにしていてください。

ーー3月で結成5周年を迎えるわけですから、その思いも込めてというところですよね。

HIDEKiSM:……え、本当だ。

Kamus:あ、そうだ!

Takassy:七五三やん(笑)。

HIDEKiSM:袴着なきゃね。

Kamus:千歳飴。

ーーGAViiの皆さんは、お祝いの気持ちも込めてライブに駆けつけると思います。

Takassy:それを言いながらチケット売ればいいわよ。「5周年だよ、あんたたち!」って(笑)。

Kamus:そうしましょ(笑)。

HIDEKiSM:いいこと聞いた。めでたいわ(笑)。今年は『Metaphysica』の発売と初の東名阪ツアーも加わって、特別なものが詰め込まれた3月になりそうね。

Takassy:エンガブ的な暦で言うと3月が年始みたいな感じのイメージがあるのでね。それこそ結成して、『ENGABEST』を出してとか年々3月にやることが大きくなっていっているので、この調子で数年後の3月にはすんごく大きなことができるといいですね。

Kamus:何がしたいですか?

Takassy:私はやっぱり大きいところでライブがやりたいですね。例えば武道館ですとか。でも個人的にやりたいのは国際フォーラムですね。あまり大きすぎると後ろの方の人にまで伝わらないけど、あそこだと盛り上がれるじゃないですか。

HIDEKiSM:確かに!

Takassy:横浜アリーナも、でっかいのに一番後ろでも音が綺麗に聴こえるから好きなんですよね。“3月”に横浜アリーナとかだったら超嬉しくない(笑)?

HIDEKiSM:素敵ー!

Takassy:そこまでに、どんどん積み重ねていきたいなって思いますね。曲って消耗品なので、例えばシングルで出しても、アルバムに入らなかったらリリースしただけで終わっちゃうとか、忘れ去られていくことだってあるかもしれない。ただ私はやっぱり去年出した3曲はすごく気に入っているし、良いものができた自負があるので、できる限りいろんな人に聴いてもらいたいというのがあるんです。今回アルバムに収録されることで、改めてあの3曲にも注目してもらえると思うし、例えば「CABARET」とか、マニアックに刺さる人がたぶんまだいっぱいいると思うんですよ。でも、如何せん私たちの知名度がまだまだなので、曲が埋もれていっちゃうのが作家として悲しくて。そういうのがなくなるくらい知名度を上げていって、1曲1曲に報えるようになりたいなって思っています。

■リリース情報

『Metaphysica』
発売:2022年3月9日(水)
価格:¥4,400(税込)

[CD 収録内容]
1.Finally Found You
2.Cabaret
3.Ride/Reboot
4.Sorry Not Sorry
5.Dystopia
6.女優(仮)
7.Moratorium
8.ハッピーハッピーウェイウェイドンチー
<DVD 収録内容>
「Moratorium」Official Music Video (Full Version)
「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」Official Music Video (Full Version)
Making of the MV「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」

■ツアー情報
『ENVii GABRIELLA TOUR 2022~THE CABARET~』
3月12日(土)名古屋/名古屋 クラブクアトロ
3月13日(日)大阪/梅田 クラブクアトロ
3月19日(土)東京/LIQUIDROOM
<配信情報>
【生配信】2022年3月19日(土)18:00 START(20:00頃終了予定)
【視聴チケット販売期間】3月11日(金)12:00 ~ 3月26日(土)19:00
【視聴チケット】¥4,000(税込)
詳細は以下、オフィシャルサイトにて

オフィシャルサイト
https://engab.jp/

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