キタニタツヤ、楽曲提供やコラボで存在感を増し続ける才能 『ゴシップ』主題歌で歌う、現代の孤独や心を通わす大切さ

 シンガーソングライター、作曲家、ベーシスト。いくつもの顔を持ち、あらゆる音楽シーンで縦横無尽に活動するアーティスト、キタニタツヤ。ヨルシカのサポートメンバーや、まふまふ、Adoの楽曲への演奏参加、私立恵比寿中学やジャニーズWESTなどへの楽曲提供を行うとともに、ソロアーティストとしては数々のアーティストとコラボし、TVアニメ主題歌をはじめタイアップ曲を立て続けにリリースするなど、破竹の勢いでメジャーシーンへの進出を遂げてきている。キタニタツヤの名前を認識していなかったとしても、知らず知らずのうちにキタニの音楽に触れていたという人もいるのではないだろうか。今、着実に存在感を増しているキタニタツヤのこれまでについて紐解いてみたい。

 2014年、こんにちは谷田さん名義でボカロPとして楽曲投稿を開始したキタニ。「芥の部屋は錆色に沈む」が10万回再生を突破した際に公開したセルフカバーが好評となり、自身でも歌うようになると(※1)、そこからボーカリストとしての素質も開花させていくことになる。そして2018年、「悪魔の踊り方」を発表。不気味で中毒性のあるメロディ、視聴者に問いかけるようなメッセージ性の高いリリックと、それを歌いこなすエッジの効いたボーカル力の高さ、歴代内閣総理大臣などの画像をコラージュした印象的なMVも含めて話題となった。

芥の部屋は錆色に沈む/キタニタツヤ
悪魔の踊り方 / キタニタツヤ - Devil's Manner / Tatsuya Kitani

 そこからさらに様々なコラボレーションを経て活動の幅を広げていくことになるキタニ。2020年12月から2021年3月にかけて4カ月連続リリースを行った際には、自身のYouTubeチャンネルの配信で視聴者とやりとりしながら制作した「白無垢」、ポルカドットスティングレイのエジマハルシがギターアレンジと演奏で参加した「Cinnamon」、漫画家・カネコアツシの『EVOL(イーヴォー)』とコラボレーションした「逃走劇」、そしてバンド ALIがプロデュース&アレンジを手がけた「Ghost!?」と、怒涛のように展開していった。

 2021年はさらに躍進の年となり、初タイアップとなるTVアニメ『平穏世代の韋駄天達』(フジテレビ系)のオープニングテーマ曲「聖者の行進」を書き下ろし。さらに、漫画『BLEACH』の生誕20周年を記念して開催された原画展『BLEACH EX.』にテーマソング「Rapport」を、展示イメージソングに「タナトフォビア」を提供。「悪魔」「地獄」などのモチーフを用いるダークで物語性の高いキタニの世界観が漫画と抜群の相性を見せ、『BLEACH』ファンからも高い評価を受けることとなった。

聖者の行進 / キタニタツヤ – When The Weak Go Marching In / Tatsuya Kitani
タナトフォビア / キタニタツヤ – Thanatophobia / Tatsuya Kitani

 そんなキタニは2022年、ドラマ『ゴシップ #彼女が知りたい本当の◯◯』(フジテレビ系)で、異例の“W主題歌”を担当。「冷たい渦」を2月10日に、「プラネテス」を2月24日に配信リリースしている。

 ドラマは、ネットニュースサイト「カンフルNEWS」の立て直しを命じられた瀬古凛々子(黒木華)と、彼女を取り巻く編集部員、そしてゴシップに関わる人々を巡る物語。芸能人や、時に一般人のプライベートにまで踏み込んでいくゴシップ記事には批判的な意見も上がりやすい。さらに作中では、顔出ししないネットシンガー、デジタルタトゥー、SNS、YouTuberなど、ネット社会を反映した現代的なモチーフが数多く取り上げられている。情報の扱いがますますセンシティブになった世の中で、カンフルNEWS編集部の面々もまた、自問自答しながらゴシップを追いかけていくこととなる。

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