レミオロメン「3月9日」はいつから“卒業ソング”に? 普遍的な歌詞がもたらす無限の解釈

 〈瞳を閉じれば  あなたが/まぶたのうらに  いることで/どれほど強くなれたでしょう/あなたにとって私も そうでありたい〉というサビの一節を振り返ると、〈あなた〉という普遍的な二人称のワードは、これから人生を共にする“(結婚の)パートナー”とも、卒業後に別々の道を歩む“友人”とも捉えられることに気付く。「3月9日」は、そうした様々な解釈を可能とする奥行きと余白を秘めているからこそ、“結婚ソング”という本来の意味合いを超えて、“卒業ソング”としての文脈も持ち合わせるに至ったのだと思う。

 このように、作り手の本来の意図を超えて、その楽曲が新しい意味合いを持つことはポップミュージックの世界では決して珍しいことではない。ここでは“パートナー”と“友人”という例を挙げたが、さらに言えば聴くリスナーの数だけ、〈あなた〉の捉え方があって然るべきかもしれない。楽曲のメッセージをどう受け取るか、もしくは、楽曲がその人の、その時々の人生にとってどのような意味を持って響くか。そこには無限の解釈があり、それこそがポップミュージックの奥深さではないだろうか。

 「3月9日」は、今やJ-POPのスタンダードナンバーとして、数々のアーティストによってカバーされている。この2022年には、Little Glee Monsterがカバーしたバージョンがリリースされ、大きな話題を呼んだ。こうしたシーンの動きもあって、この曲の存在感は年を重ねるごとに強まっているように思える。藤巻が描いた景色はとても普遍的なものであり、その必然として、「3月9日」はこれからもいくつもの時代を超えて、“新しいはじまりの季節”を彩り続けていくはずだ。

Little Glee Monster『3月9日』

※1:https://simeji.me/simeji-ranking/backnumber/2022_78/

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