AK-69、前代未聞の鈴鹿サーキットライブで示したジャパニーズヒップホップの最高峰 日本武道館公演に繋ぐ圧倒的な熱量

 『THE RACE in SUZUKA CIRCUIT』の最初のピークを生み出したのは、「I'm the shit feat. ¥ellow Bucks」。リスナーを挑発しまくるリリックをぶつけ合い、ラッパーとしての矜持と実力をはっきりと見せつけた。

 20代前半にして世界標準のポテンシャルを備えたBleecker Chromeがしなやかなフロウを響かせた「Next to you feat. Bleecker Chrome」の後は、「ヴィクトリー・ラップ、勝った者だけが回れる周回。それは自分に打ち勝った者だけが味わえる。最後行こうぜ」とアルバム『The Race』の最後を飾る「Victory Lap feat. SALU」。〈越えるのは己ただひとり〉〈FamilyとTeam 背負ったゲーム 報われる瞬間は一瞬だけ〉というフレーズを高らかに鳴らし、シャンパンファイトとともに本編は終了した。

 “何回だってやり直せるんだ”という決意を刻んだ「START IT AGAIN」から始まったアンコールでは、AK-69のキャリアを代表する楽曲を惜しげもなく披露。「あの頃に連れていってやるぜ」という言葉からはじまった「Speedin’」、〈掲げろその誰にも負けない心〉とリスナーの鼓舞した「Ding Ding Dong 〜心の鐘〜」、再び¥ellow Bucksをフィーチャーした「Bussin’ feat. ¥ellow Bucks」を続ける。

「この空気、みんなに伝わるかな。本当はみんなもこの場所に来て、このバカげた、この狂った挑戦を感じてほしかったよ。こんなクソな状況、思うところはいろいろあるけど、でもしょうがねえんだよ。政府に思うこともいっぱいあるけど、文句言っても変えられない。変えられる力を俺たちは持つ! エンターテインメントの力をなめるんじゃねえぞ」

 さらに亡き父に向けて「この先、どれだけ走れるかわからない。怖いよ。いつこのエンジンががたついて、クラッシュして、止まってしまうかもしれない。そんな恐怖のなか、今も俺は走ってるよ。俺が思い描いた未来予想図を成し得るまで、俺は止まれんのだが」と語りかけ、「Stronger」へ。父親に対する愛情と尊敬を真っ直ぐに描いたこの曲もまた、AK-69の本質だ。

 「散っていった奴らの分まで、さあ歌え!」と呼びかけた「Divine Wind -KAMIKAZE-」、限界や壁にぶつかりながらも、自分を信じ、貫いてきた半生をリアルに刻んだ「Flying B」によってライブはクライマックスに向かって突き進む。ラストはKalassy Nikoff名義による「Champion」。昨年の大晦日に行われたボクシング世界スーパーフライ級タイトルマッチで、4階級王者・井岡一翔の入場時に披露された新曲を放ち、ライブはエンディングを迎えた。

 2022年4月23日には、自身5度目となる日本武道館公演『START IT AGAIN in BUDOKAN』の開催も決定。前代未聞の鈴鹿サーキットでの配信ライブを成功させたAK-69は、現状に満足することなく、さらなる高みへと昇っていくことになるだろう。

※1 https://realsound.jp/2021/06/post-788097.html

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