『青春有你3』出演の橋本裕太が明かす、活動拠点を中国に置いた背景 グローバル目指す未来のアーティストに伝えたいこと

 ソニー・ミュージックエンタテインメントがこのたび、アジア進出を目標としたグローバルアーティストを発掘する新オーディション『Next Asian Stars Audition』を開催。日本だけでなく、アジア、そして世界へ羽ばたいていく新たな才能との出会いを目指す本オーディションにおいてまさにベンチマーク的な存在となり得るのが、審査員を務めるソニーミュージック所属アーティスト・橋本裕太だろう。

 その甘く魅力的な歌声で“メルティーボイス”の持ち主として人気を博し、2017年のメジャーデビュー以降音楽活動はもちろん、恋愛リアリティ番組『恋愛ドラマな恋がしたい』(ABEMA)の出演でも注目を集めた彼は、2019年中国進出を決意。上海の大学で語学留学を経たのち、昨年は中国のサバイバルオーディション番組『青春有你3』に唯一の日本人として参加、今年1月からは主演ドラマが放送されるなど、中国を拠点とした目ざましい活躍をみせている。

 今回は一時帰国中の橋本に、中国での活動を志したきっかけやその葛藤と魅力、そしてグローバル進出を目指す未来のアーティストへ伝えたい想いについて聞いた。(菅原史稀)【記事最後にプレゼント情報あり】

『青春有你3』出演は自分の存在意義を考え直すきっかけに

――久々に日本へ帰国されたんですよね。

橋本裕太(以下、橋本):そうなんです、だいたい1年半ぶりくらいに日本へ帰ってきました。しばらくは仙台にある実家にいて、久しぶりにホッとひと息つく時間を過ごしました。

――デビューからこれまで、息つく間もないほど様々なことにチャレンジした5年間だったのではないでしょうか。

橋本:そうですね。デビューしてからずっと新しいことをやり続けてきたので、気がついたら5年が経っていたという感覚です。曲をリリースして、演技もやらせてもらって、今ではデビュー当時全く想像していなかった中国で活動しているので......自分でも驚きです。

――そもそものお話ですが、橋本さんが音楽活動を始めたきっかけはどんなことだったのでしょうか。

橋本:もともとギターをやっている叔父の影響で中学生のときに弾き語りを始めて「歌うのって好きだな」と思うようになって。高校の文化祭で初めて人前に出て歌った時に「人に見てもらうのってこんなに楽しいことなんだ」と感じて、そこから一気に本気度が増しました。

――そして人気曲をオルゴール調でカバーした動画を投稿したことで、世間から“メルティーボイスの持ち主”と注目が集まったわけですよね。SNS上の活動はいつから始めましたか?

橋本:仙台にある音楽の専門学校を卒業後に上京したのですが、そのあたりの時期です。上京しても特にデビューが約束されているわけでもなく、ただただ毎日がバイト三昧ななかで「何かやらないと」という想いが強まっていって。そこでオルゴールカバーを始めたんですけど、それを聴いて僕のことを知ってくれた方がいらっしゃったのはとても嬉しかったです。

――その後、恋愛リアリティ番組『恋愛ドラマな恋がしたい』の出演や、1stフルアルバムのリリースそしてツアーの開催と、日本での芸能活動が本格化していった矢先の2019年に中国への移住を決断されて。

橋本:はい。2019年に、中国で活動されている動画クリエイターの山下智博さんから「ふわふわ」という曲の中国語バージョンを歌ってみないかとお声がけしていただいたことがあったんですね。僕にとってはそれが初めて中国語に触れる機会だったのですが、その時に「なんで自分はこの言語の発音がこんなに上手くできないんだろう?」と悔しくなって。そこから色んな人に教わったり練習していくうちに、中国語への興味が大きくなっていきました。

――中国語という言語に対して興味を持ったことに発端があったのですね。

橋本:そうなんです。中国語には“四声”という表現方法があったりして、日本語にはない発音が多いんですよね。だから、こんなに発音がいっぱいある言語をマスターしたら、歌手としての表現の幅がもっと広がるんじゃないかと。

――言語によって異なる発声の特徴は、歌うときにも表れるものなのですか?

橋本:あくまで僕の個人的な印象なんですけど、普段日本語を話す人の発声は上の方で響いているようなイメージに対して、中国語で話す人は下の方で深く響くように歌うことが多いんじゃないかと思います。もしかしたら、習得している言語によって歌うときの発声法が違うのかもしれませんね。

――興味深いですね.。そこから本格的に中国へ移住して語学留学を始められたわけですが、相当な覚悟が要る決断だったのではないでしょうか。

橋本:何か新しいことを始めるのって当然怖いし、不安も大きいですよね。でもそれって、何のあてもなく上京したときや、日本での活動を始めたときと同じことで。そういう怖さや不安を乗り越えたからこそ得られるものが絶対にあるということは、それまでの経験で実感できていたので、中国行きを決めた時もそこを信じました。

――言葉も思うようには通じず、文化も違う環境に身を置いてみて、当時はどんな心境でしたか?

橋本:ずっとアドレナリンが出ている感じでした。知っている人は誰もいないし、分からないことだらけで、「何とか生き抜かないと」という気持ちで。中国語を習得するために日本語に触れる時間を減らした方がいいと聞いて、なるべく日本の友達に連絡する機会も減らしたりしていました。家族には心配かけないように「元気にやってるよ」と伝えてはいたんですけど。

――苦労されることも多かったのではないでしょうか。

橋本:そうですね。でも不思議と、一度も「帰りたい」と感じたことはなかったんですよ。新しい世界に身を置けることがとにかく嬉しかったので、不安やストレスすらも楽しんでいました。「怖いけど、面白い」みたいな。いま考えると、自分でも不思議に思います(笑)。

――上海の大学ではどんな生活を送っていたのですか?

橋本:僕がいたのは留学生のクラスだったんですけど、現地の友達が絶対に欲しいと思ったので、中国の学生が受けている授業を見に行ったりしていました。中国の方ってとてもフレンドリーで、困っていたらすぐに声をかけてくれるんですよね。印象に残っているのは、あるコンビニの店員さんと毎日「これ温める?」「うん!」というやり取りをしていたら、だんだん仲良くなって連絡先を交換したことですね(笑)。日本ではなかなかない出来事だと思うんですけど、向こうから気にかけてくれて。いまだに彼は「曲、聴いたよ!」とか「お誕生日おめでとう」とか連絡をくれたりしていて、とても良い思い出になっています。

――素敵なお話ですね。そんな留学生活を経て、昨年は中国のサバイバルオーディション番組『青春有你3』に出演されました。中国国内だけでなく全世界的に注目度が高い番組ですし、橋本さんにとって大きな転機になったのではないでしょうか。

橋本:そうなんですけど......中国へ移住した時の「怖いけど、面白い」の精神が通用しない場でもありました(苦笑)。今までに感じたことのない不安を感じたというか。自分の中国語にもそこまで自信はなかったですし、唯一の日本人参加者として頑張りたいというプレッシャーも大きかったんですよね。

――そんな凄まじいプレッシャーのなか、番組初登場で「ラブストーリーは突然に」を日本語歌唱されていたのですね。

橋本裕太 ラブ・ストーリーは突然に | | Youth With You S3 EP03 | 青春有你3 | iQiyi

橋本:はい。日本語歌唱か中国語歌唱かですごく悩んだんですけど、いち日本の歌手として日本の音楽の良さを伝えられたらと思っていましたし、いま自分がここにいる意味というのも考えて、原詩のまま歌うことを選びました。

――他の参加者との交流はいかがでしたか?

橋本:実は番組の撮影が始まるまで1カ月の準備期間が設けられていて、参加者は同じ寮に住んではいるんですけれど、番組側から「お互いがどんな人かは撮影中に知ってほしいから、準備期間はあまり話さないでほしい」と言われていたんです。なので最初は他の人たちがどんな性格かも分からず、とてもギラギラしてるように見えて怖かったです。でも実際に撮影がはじまったら「ラブストーリーは突然に」のパフォーマンス中も立ち上がって盛り上がってくれたり、分からないことがあったら教えてくれて、励ましてくれて。

――中国のサバイバルオーディション番組は、思わず目を引かれるような多彩な魅力を持つ参加者が多いですよね。

橋本:確かに! みんな「自分はコレだ」というそれぞれの強みを必ず持っているんですけど、それが歌やダンスに限られていないように思います。例えば面白いTikTok動画を作れる才能だったり、一言で皆を振り向かせるコメントを発するセンスだったり。なので番組中は、音楽に関わることだけじゃなくより広い意味でのエンターテインメントがあるということを肌で実感できたと思います。そういう経験によって逆に自分の存在意義を考え直すきっかけにもなって、やっぱり一番好きな歌をもっと極めていかなきゃなと改めて感じました。

――他の参加者から受けた刺激が大きかったのですね。そして彼らとの交流は番組終了後も続いていて。

橋本:はい。番組中からお互いに「何か一緒にやれたらいいね」と言い合っていた徐子未とは、昨年末に「Butterfly」のコラボ歌唱が実現できて嬉しかったです。彼とは親友ですし、なんと言っても歌にすごく魅力を感じていたので、一緒にコラボしたことで色々と学びました

――逆に『青春有你3』に参加していた熊猫堂(Produce Pandas)のように、番組終了後に日本での活動を始めるパターンもあり、橋本さんが彼らに日本語の歌唱指導をする動画も公開されたりして。

【熊貓堂ProducePandas】Vlog之橋本裕太来了!|Vlog of Here comes Hashimoto Yuta!

橋本:彼らから「日本語の曲を歌うんだけど、教えてくれない?」と呼ばれて、いざ行ったらもうすでにほぼ完ぺきでした(笑)。でもそうやって、中国のアーティストが日本に興味をもってくれて活動してくれるのって素敵ですよね。そこにほんの少しでも自分が手伝えることがあるなんて、ありがたいですし。オーディション中、彼らの明るさには精神的にとても支えられましたし、色々なアドバイスもしてもらっていたので、今度は僕が恩返しをする番だと思っています。

関連記事