RAISE A SUILENとFear, and Loathing in Las Vegasの邂逅は必然? 『バンドリ!』外アーティストとの化学反応が開く新たな扉
「私はいろんなバンドとツーマンライブとかツアーをしてみたくて。ポピパさん(Poppin’Party)はSILENT SIRENさんとやっているじゃないですか。そのRASバージョンとして、めちゃくちゃロックなバンドとバトルしてみたい」
以上は昨年4月にRAISE A SUILEN(以下、RAS)にインタビューした際、「RASとして今後挑戦してみたいことなど、将来の展望は?」との問いに対する夏芽(Dr./マスキング役)の回答だ(※1)。あれから約10カ月を経て二度にわたる全国ツアーを実現させたRASが、この“将来の展望”を2月7日に実現した。それが同日、Zepp DiverCityにて行われたライブ『RAISE A SUILEN SPECIAL LIVE「Repaint」』だ。
RASにとって2022年最初のライブとなった『RAISE A SUILEN SPECIAL LIVE「Repaint」』は、RASがFear, and Loathing in Las Vegas(以下、ラスベガス)をゲストアクトに迎え熱いステージを繰り広げるというもの。これまで次世代ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』内のバンドと共演する機会や、『山小屋・ばさらかpresents阿蘇ロックフェスティバル2019 in 北九州』や『マグロック2019』『JAPAN JAM 2021』といった野外ロックフェスでJ-ROCK界隈のアーティストたちと肩を並べたが、コンテンツ外のロックバンドをゲストアクトに迎えてライブを行うのはこれが初めてとあって、早くから注目を集めていた。それは、フェスのような場で初めてRASのステージを観たJ-ROCKファンやラウドロックリスナーを惹きつけることに成功したRASが、ラウドシーンの第一線で活躍するラスベガスとの“タイマン”勝負にどのように立ち向かうのか、そしてラスベガスのファンを前にRASとしての個性をどう発揮させるのか、この2点に尽きる。
ライブ当日、トップバッターを務めたのはゲストアクトのラスベガス。この日は彼らにとっても新年一発目のステージ、またRASファンが多数を占める会場でのライブとあって、どのようなステージを展開するのか気になっていた。ところが、メンバーのアグレッシヴなパフォーマンスや繰り出される名曲/人気曲の数々という構成はいつもどおりという印象を受けるもので、ホームだろうがアウェイだろうがやることは変わらない、一切手を抜かずに本気で楽しむといういかにもラスベガスらしいステージそのものだった。MCでもSoがRASファンに向けてRASへのリスペクトを口にし、ともにこの日のステージを最高のものにしようと呼びかけるポジティブさに満ち溢れていた。ライブ百戦錬磨の彼ららしく、約60分で計13曲を連発するエネルギッシュなステージは会場にいるすべての者を笑顔にさせ、早くも完全燃焼させてしまうのではないかと思えるほどのピークを迎えることとなった。
RASもリスペクトするラスベガスの熱演を受け、短いインターバルでステージに姿を現したメンバー5人は、小原莉子(Gt/ロック役)による低音を強調させたヘヴィなギターリフを擁する「SOUL SOLDIER」から自分たちのステージを開始。普段からライブ会場で耳馴染んでいたRASのヘヴィさを伴うバンドアンサンブルも、ラスベガスのステージ後となると若干ソフトに響く。これは筆者にとって少々意外なものだった。もちろん、これは音圧がラスベガスより劣るという意味ではない。夏芽の骨太なドラミングとRaychell(Ba&Vo/レイヤ役)によるファットなベースサウンド、小原の厚みのあるギターサウンドである程度のヘヴィさを保ちつつも、紡木吏佐(DJ/チュチュ役)が繰り出すEDM風エレクトロの要素や、倉知玲鳳(Key./パレオ役)が奏でるしなやかなピアノ&キーボードの音色が女性バンドらしい繊細さや柔らかさを表現することにより、上記のようなソフトさにつながっているのではないかと想像する。このバランス感こそRASならではの個性なのだと、この日のステージで再確認することができたのは、筆者にとっても大きな収穫だった。