TWO-MIX、fripSide、GRANRODEO、Sir Vanity……声優が属する音楽ユニットの歴史を辿る

 新世代としては、DUAL ALTER WORLDや群咲も、声優の強みを活かしつつアーティストとしての表現を突き詰めている。

 『のんのんびより』(テレビ東京ほか)の宮内れんげ役、『アイドルマスター ミリオンライブ!』では天空橋朋花役などを担当する小岩井ことり擁するヘヴィメタルバンド・DUAL ALTER WORLD。作詞・作曲家としての活動もしており、DTMにも造形が深く、さらにはメタル好きという小岩井がBLOOD STAIN CHILDのギタリスト・RYUとともに結成したバンドだ。デスボイスを披露するなどメタルバンドのボーカリストとして本領を発揮する一方で、1曲の中で声色を大きく変える歌い方は声優だからこそできる表現である。声優としての強みと彼女自身の趣味が強烈に結びついたユニットだ。

DUAL ALTER WORLD「DISTONATION」[LIVE ver.]

 2020年にデビューした、木村千咲と作曲家のラムシーニによるユニット・群咲は1stミニアルバム『明日こそ』を今年1月にリリース。群咲として歌う曲について「完全に木村千咲の自己表現」と語る木村(※1)。「第一印証」では、一度録り終わったにもかかわらず再録を求められたことに対する怒りが込められているそうで、木村の飾らない感情や言葉が乗っている楽曲でもある。『明日こそ』はギターロックやリズミックな鍵盤などラムシーニの幅広いサウンドメイクに、曲によって異なる木村のボーカルが乗るバラエティ豊かな作品となっている。

群咲「第一印証」Official Music Video

 林勇(“勇-YOU-”名義)がボーカル、音楽プロデューサーの太田雅友(“雅友”名義)がギターを担当するSCREEN modeは、お互いがアーティスト活動やボーカリストへの思いがあったことで結成されたグループだ。爽やかさと力強さを併せ持ったサウンドで、アニメ主題歌のほか音楽番組のテーマソングを手がけるなど幅広く活躍。昨年リリースの3rdアルバム『With You』は、GRANRODEOのKISHOWとのコラボ曲「ALIVE」や、雅友がこれまで作曲した楽曲のセルフカバーなど、各々の活動を集結させた内容が話題となった。

ALIVE / SCREEN mode feat. KISHOW (GRANRODEO) (from M-ON! SPECIAL 「SCREEN mode」 ~With You~)

 さらにもう1組、2020年にデビューしたSir Vanityは、梅原裕一郎、中島ヨシキ率いるバンド。2021年には舞台『東京リベンジャーズ』の主題歌を担当したことで話題を呼んだ。梅原とともにギターボーカルを担う中島は、「恥をかける大人になりたい」と初心者ながらギターに挑戦しており、ベースの桑原聖は作曲家、音楽プロデューサーとしての活動を主としている人物、さらに演出家の渡辺大聖が属するなど、自由で挑戦心に溢れたバンドである。そんな彼らが奏でる楽曲は、艶っぽい魅力溢れるボーカルの「紫陽花」や疾走感のある梅原と中島の歌声が混じり合う「HERO」など、ボーカルの2人の存在感ある声色が印象深い。同時に、楽曲によってアプローチを変える楽器隊がときに切なく、そして力強く曲の世界を映し出している。これからどのような成長を見せていくのか注目したい。

SirVanity - 'HERO' MV]

 声優の音楽活動のジャンルや内容は、活動の数だけ多様である。声優とクリエイター、ミュージシャンとのマッチングによって自由に展開する活動は、他の声優のみならず、音楽シーンにも影響を与え続けるだろう。各ユニットがどのように道を切り開き歩んでいくのか、楽しみにしたい。

※1:https://natalie.mu/music/pp/murasaki

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