浪漫革命が鳴らす、手を取り合って生きていくロマン “ひとりであること”と対峙して描くエバーグリーンな物語

 浪漫革命というバンドをご存知だろうか。2017年に京都で結成された5人組で、同年には早くも『RISING SUN ROCK FESTIVAL』や『SUMMER SONIC』に出演を果たしている。

 何曲か聴いてみると、そのバリエーション豊かな曲調ゆえに、多様なルーツを持つミュージックラバーたちで構成されたバンドであることがわかるだろう。メンバーたちが影響を受けたと公言するアーティストをざっと挙げてみても、藤澤信次郎(Vo/Gt)は山下達郎やスティーヴィー・ワンダー、大池奏太(Gt/Cho)はくるりやはっぴいえんど、後藤潤一(Gt/Cho)はウルフルズやVulfpeck、藤本卓馬(Ba/Cho)は宇多田ヒカルや荒井由実、TOY(Dr)はCarpentersや銀杏BOYZなど、ロック、ソウル、ファンク、J-POP、シティポップに至るまで多岐にわたり、「これぞバンドを組む醍醐味!」と言えるほど互いの趣味嗜好は異なっている。そんな幅広さと心からの音楽愛を武器にして、彼らは2010年代後半のバンドシーンに颯爽と現れた。

 2019年3月には1stアルバム『NEW ISLAND ROMANCE』をリリース。筆者が浪漫革命を知ったのもこのタイミングだった。ルーツの幅広さがそのままフレーズの多彩さに表出した作品で、グルーヴィなリズム隊の上を、時に季節の憂いを感じさせるように、時にアジアンテイストで異国気分を味わわせるように、時に愉快なパーティ気分を演出するように、様々なメロディが奏でられていく。そんな今作で最も顕著に現れたのは、無邪気さであった。「楽しい夜ふかし」「HEY!×3」「青い春」といった曲が象徴するように、気の置けない仲間たちと楽しい時間を過ごすために音楽を鳴らす。まるで少年心を捨て去れない若者たちが、小学生の頃に作った秘密基地の中でセッションしているような音の距離の近さだ。退屈な大人の時間に抗うようにして、過ぎ去りかけている愛おしい今この瞬間を、目いっぱい響かせたアルバムに仕上がっている。

浪漫革命『KYOTO』Official MV
浪漫革命『楽しい夜ふかし』Official MV

 翌2020年7月には、2ndアルバム『ROMANTIC LOVE』をリリース。今作での進化は素晴らしかった。〈僕は愛を歌う〉(「ラブソング」)というストレートな歌詞の通り、“君と僕”との愛をテーマにした楽曲が並び、全編通してメロウでエバーグリーンな印象が強まった。しかし、必ずしも順調な愛、現在進行形の恋愛に限らず、別れてしまった2人や、遠く離れてしまう2人の関係性についても歌っており、そうした描写がアルバムに深みを与えている。例えば〈別れても君を好きと/今頃になって気づくよ〉(「ふれたくて」)、〈夜は君と/過ごした日々思い出し/大きなあくびをしている/君はいないのです〉(「あんなつぁ」)など、昨日まで少年だった彼らはグッと大人になって葛藤も経験し、胸に響くストーリーを描けるバンドへと一気に成長した。

浪漫革命『ふれたくて』Official MV

 なぜ、彼らは過去の〈君〉との関係性について歌うのか。ひとえに“忘れない”ためだ。たとえ別れてしまっても、互いに思い合っていた時間があったことは紛れもない事実であり、今も人生の大切な糧になっているはず。そうした経験一つひとつを忘れないために、歌としてライフストーリーに刻みつけることで、真の意味で誰かと大切な時間を過ごすことができ、今を精いっぱい生きることができる。〈とても大事なことさ/今君と息をしたこと〉を経ての〈素敵な日々に愛しい人に/歌う/歌う/歌え〉(「ラブストーリー」)は、なぜ浪漫革命が歌うのかを端的に叫んだ一節でもあるだろう。そうしたパーソナルなストーリーを普遍的に響かせるため、エバーグリーンなメロディ展開が効いてくる。「深夜バス」が、一時のくるりを彷彿とさせるヘヴィなギター音で構成されているのも納得だ。聴き終わった後に残るドッシリとしたインパクト、「あんなつぁ」のバイラルヒットも含め、『ROMANTIC LOVE』は浪漫革命が一介のインディーズバンドに止まらない存在であることを強く知らしめたアルバムである。

浪漫革命『あんなつぁ』Official MV

関連記事