ハラミちゃん、かてぃん……アイドル並みの人気を誇るピアニストが続々 昨今のムーブメントを追う

 ここ数年、日本でのピアニスト人気が未だかつてなく沸騰している。その背景にあるものは、ピアニストの在り方の多様化であり、アイドル的な人気を博しているピアニストが続出していることも、この”熱”の原動力になっていると思う。

かてぃんこと角野隼斗は『紅白』『オールナイトニッポン』にも登場

 顕著な例として、YouTubeで注目されたピアニストのメディア進出が凄まじい勢いで進み、音楽番組でハラミちゃんや角野隼斗(かてぃん)がポップシンガーと共演するといったことも珍しくなくなった。年末の『NHK紅白歌合戦』では角野隼斗が上白石萌音とコラボレーションし、「夜明けをくちずさめたら」を弾いた。ちなみに角野は、1月4日に放送された『オールナイトニッポン 0(ZERO)』(ニッポン放送)にも初登場した。

 また、ハラミちゃんがMCを務めたNHK-FM『Radio YouTuber』(12月31日放送)では、Animenz、菊池亮太、みやけんらYouTubeで人気のピアニスト3名がゲスト出演し、「残酷な天使のテーゼ」など人気曲や、初めて聴く曲をその場で耳コピした即興演奏や連弾などを披露。自由な表現が楽しく新鮮でもあり、心をワクワクときめかせてくれた。

武道館ライブ翌日に駅のストリートピアノに出かけてみた

 そんな彼らの特徴のひとつは、楽譜に縛られていないことだろう。さらにJ-POPなど耳馴染みのある曲を自在にアレンジし、テクニックを駆使しながら快活に弾きまくる。その様子は観る人にわかりやすく、ストレートに実力や魅力が伝わると同時に、その類稀なる才能に、どこか憧れを抱くのではないだろうか。

 ピアノは、日本で人気の高い習い事のひとつだ。しかし、ピアノ教室に通うなかで、楽譜に則した基礎練習の地味さから、長く続けることができず辞めてしまう人も多い。そういった人が彼らの演奏を観ると、当時のことを懐かしく思い出すかもしれない。角野が童謡をレベル0から7まで難易度を発展させていく「きらきら星変奏曲」は、驚くことに動画再生回数が720万回を超えているが、この、指が鍵盤の上で踊っているような映像を子供の頃に観ていたら辞めなかったかも、と思う人が少なからずいるだろう。

7 levels of “Twinkle Twinkle Little Star”(きらきら星変奏曲)

 そしてもうひとつ話題性として付け加えると、角野は音楽大学出身ではなく、東京大学大学院修了という学歴の持ち主。母親がピアノの先生という家庭環境はあれど、彼の活躍は、音大進学を選択しなくてもピアニストとして成功できるかもしれないという、次世代にとっての希望にもなっていると思う。

ピアノ系YouTuberのさまざまな「原点」

 さて、ハラミちゃんをはじめ、彼らのYouTuberとしての原点はストリートピアノにもある。駅や空港、都庁などに置かれており、誰でも自由に演奏できるピアノ。イングランド発祥のストリートピアノは、2011年以降日本全国でも見られるようになり、その演奏風景が動画投稿されることで、演奏者自身が話題になることはもちろんのこと、ヴァネッサ・カールトンの「A Thousand Miles」のようにリバイバルヒットする曲まで生まれている。

Vanessa Carlton – A Thousand Miles (Official Music Video)

 これらは、SNSなど発信の手段が増えたことで起こっている現象だが、彼らのようなYouTuberの出現前からピアノをもっとポピュラーな存在にしたいと、バラエティ番組を含むTV番組に積極的に出演し、奮闘していた先駆者がいる。ピアノ界の貴公子と呼ばれた清塚信也だ。クラシックサイドから見ると、実力も実績もあるのになぜバラエティに? ホールではなく、なぜライブハウスでトーク満載のコンサートを? などと、疑問に思われるような、これまでのピアニストのスタイルにはまらない活動をすることで、自身の知名度とともに、クラシックピアノをポップスファンにも広げて発信してきた。

 そのなかで、公言していた単独での武道館コンサートを、日本人男性のクラシックピアニストとして2019年に初めて成功させている。地道な努力の末に辿り着いた武道館だったわけだが、今年1月4日、その舞台に異例のスピードでハラミちゃんが立った。新旧対照的な2人に映るが、清塚は後輩ピアニストとの交流も多く、ハラミちゃんのコンサートにも足を運んでいる。

 クラシックファンを大切にしつつ、それだけでなく、もっと幅広くポップスファンにも聴いてもらいたいと行動しているピアニストは海外にもいる。たとえば、ラン・ランは、2020年にレディー・ガガがキュレートしたオンラインのチャリティコンサート『One World: Together At Home』にクラシックのアーティストとして唯一参加。妻ジーナ・アリスとショパンを連弾し、さらにセリーヌ・ディオンらが歌う「The Prayer」で伴奏も務めた。

Celine Dion, Andrea Bocelli, Lady Gaga, Lang Lang, John Legend perform “The Prayer” | OW:TAH



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