AliA、全力の想いが実った異例の「100円ライブ」 6人のアンサンブルで示した“音楽を届ける素晴らしさ”
「100円ライブ」と銘打ったロックバンドのライブに対して、どんな内容を想像するだろうか。たとえば曲数で言うなら、大体5〜6曲くらいで、おそらくステージ演出も最小限に抑えたものになる、というのが妥当な線だと思う。だが、AliAが12月5日にLINE CUBE SHIBUYAで開催した『-Me- release special 100円LIVE』は一般に想像するレベルを遥かに超えたものだった。総勢8名のストリングスチームを迎えた全12曲、約1時間半。途中にアコースティックコーナーを挟み、凝ったスクリーン映像も用意され、もはや通常のチケット代を払うライブと比べても、何も遜色がない公演だった。広いホール空間を最大限に生かし、そこにAliAというバンドが持つダイナミックな世界観を全力で作り上げていた。
2018年にEREN(Gt)を中心に結成したAliAは、ギター、ボーカル、ベースに加えて、キーボードとバイオリニストを擁する男女混成6人組ロックバンドだ。その特性を活かした幅広い楽曲のアプローチは国内だけでなく、海外からの評価も高い。ライブのMCでAYAME(Vo)がバンドのことを、こんなふうに語っていた。「この6人はむちゃくちゃバラバラな性格だけど、それが合わさることで素敵なものになっている」。クラシックからメタル、ハードロック、オルタナティブロックにアニメやゲームミュージック、J-POPまで。それぞれに異なるルーツを持った6人の個性が絡み合うことで生まれるハイブリッドなロックサウンドは、すでに「AliA」というひとつのジャンルを確立している。
そんなAliAは、来年2月に全国5カ所のZeppツアー『AliAliVe 2022 -Me-』を控えている。今回の「100円ライブ」に踏み切ったのは、バンドにとっての大きな挑戦となるZeppツアーに向けて、AliAのライブの楽しさをより多くの人に体感してもらうことが目的だったという。開催前にAYAMEは自身のTwitterで「少しでもライブハウスに行くためのハードルを下げたかった」(※1)と想いを綴っている。AliAは生粋のライブバンドだ。コロナ禍前には、バンド結成からわずか1年で恵比寿リキッドルームでのワンマンライブをソールドアウトさせたほか、世界9カ所を回るツアーも行っている。2020年春以降のパンデミック下では一時ライブ活動が止まる時期もあったが、今年の春には再び全国9カ所のワンマンツアー『AliAliVe2021 -FANFARE-』を開催している(ファイナルの東京・EX THEATER ROPPONGI公演のみ無観客の配信ライブに変更になったが、のちに新宿BLAZEでリベンジ公演を開催)。その根底にあるのは、どんなに音楽を届けるツールが発達しても、生のライブ体験に敵うものはないという確信だろう。異例の「100円ライブ」は、さらにバンドが成長し、次のフェーズに向けて進んでいくための新たな一歩として、とても重要なライブだった。
夜空の下に広がる深い森。まるで絵本の世界に迷いこんだようなアニメーション映像が流れるなか、ライブは総勢8人の弦楽隊による壮大な演奏から始まった。大きな拍手に迎えられてステージに登場したAYAME、EREN、TKT(Key)、RINA(Vn)、SEIYA(Ba)、BOB(Dr)は、あの『ONE PIECE』の名シーンのように力強く拳を突きあげる。1曲目は「100年に一度のこの夜に」。キラキラとしたロックサウンドに乗せて、AYAMEの伸びやかなハイトーンボーカルが〈流れていった星に/願い事をしたんだ〉という歌詞を紡いだ瞬間、スクリーンにスーッと一筋の星が流れた。「今日はAliAの音楽を、6人の音楽を、全力でぶつけていきたいと思います。受け止める準備はできていますか?」というAYAMEの呼びかけに、コロナ禍のルールで声を出すことができない観客は一斉に腕を上げて、「イエス」の意思を示す。ダークファンタジーのような狂騒を描いた「ケセラセラ」ではAYAMEはお立ち台に膝をついて絶唱し、TKTが繰り出すシンセのスパイスが効いた賑やかなポップロック「ユートピア」では会場をタオル回しで一体にした。時折メンバー同士が向き合い、アイコンタクトを重ねながら演奏をする。ステージ上で一人ひとりが見せるパフォーマンスは紛れもなくロックバンド然とした高い熱量を感じるが、同時に、たしかなテクニックに裏打ちされたストイックな演奏と、1曲ごとに毛色を変える計算し尽くされたAliAの世界観には“音楽集団”と呼びたくなるような緻密さもある。
「(AliAのライブに)今日初めて来た人?」というSEIYAの問いかけに、客席の半分以上の手が挙がった。それだけでこの日のライブは成功したと言ってもいい。「これは狙い通りだな」(SEIYA)、「そうだね」(EREN)と満足そうに顔を見合わせる。ここでドラムのBOBもステージの前方に歩み出て半円形の布陣でアコースティックコーナーへ。バンド結成初期、まだお客さんが1〜2人だったときの光景を「一生を忘れない」と振り返り、「出会ったばかりの6人でやっていけるかなと思って作った曲」と紹介した「SLIDE SUNSET」では、BOBが刻むカホンのリズムやRINAのバイオリンが紡ぐ繊細なメロディラインで、会場を優しく揺らした。再びバンド編成に戻り、「少しでもあなたが勇気を出せたなら」とAYAMEが願いを込めるように歌い出したのは、ドラマチックなバラードナンバー「翼が生えたなら」。ミラーボールが放つ美しい光が会場を包み込むなか、その切実なボーカルが未来への一歩を踏み出せない弱気な心にそっと寄り添っていた。